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真冬の北海道歩き旅32 【悴んだ手に、温かな毛布を】

前日までのあらすじはこちら↓
網走で数日間滞在し満喫!充実した休息日でしたぁ〜…また行きたいなぁ。

66日目:網走を、発つ

今日は、しばらく滞在した網走を出発する日。早朝から準備をしていると、宿屋「アニマの里」の女将さんが、

「味噌汁、いりますか?」

と声を掛けてくれた。
その具がたくさん詰まった美味しそうなお味噌汁を見た自分たちに、「はい」以外の言葉が見つからなかった。

牧場にいたプー。今日も朝ごはんを食べて、森の中へ消えてゆく。
女将さんから頂いたお味噌汁。野菜がゴロゴロでたくさん入っていて美味しかった。

宿を出発する際、オーナーさんがお見送りしてくれた。なんと優しい方達なんだろうか。彼らの後ろに広がる青い空が、いつもより美しく見えた。

左側、斜面の上で見送るオーナーさん夫婦。ありがとう、またきます!
相方さんがソリ役。今日は珍しく天気がいい、なかなかに暑い。

道中、海岸沿いに小さな飲食店があったので入ってみることに。
その名は「うみのば」。地元酪農の商品や可愛い雑貨が置いてあるお店。それとおしゃれなハンバーガーもあったので頼んでみることに。

海沿いのお店「うみのば」。
めちゃんこに美味いバーガーセット。ハンバーガーもチーズがとろけて美味しいが、フライドポテトも負けじと美味しい。

これがまた、美味しいこと…ハンバーガーも一級品だが、なんといってもこのフライドポテト!ねっちょりもっちり感で、めちゃ甘い。お菓子でも食べているのかと錯覚するほどに甘く美味しかったぁ。

路面の雪が溶けてゆく。ソリは途中から担いだ。

そうしてしばらくは海岸線沿いを歩く。日が照っていて暑い。

小さな無人駅。ドラマにでも出てきそう。、

15キロも歩くと、「涛沸湖」という湖が右側に見えた。これからさらに10キロの直線。何にもない原野のど真ん中をひたすらに、オジロワシに見守られながら黙々と歩く。

涛沸湖とそこから伸びる川。岸辺のお家がなんとも芸術的。これもまた映画に出てきそうな風景。
涛沸湖と海の間を永遠と歩く。
終わりが見えないとはこの事。黙々と歩く。

そうしてようやく到着したのが道の駅はなやか。着いた頃にはもう無人になっていて、隣にはなんと…

道の駅はなやかに到着。長かった…。

そう、mont-bellがある!
ここmont-bell小清水町店は涛沸湖のビジターセンターと併設して出来ており、品揃えもしっかりしていた。
ここで、知床峠越え用のアルファ米やドライフードを買う。これからゴールである千歳までもmont-bellはおろか登山具点はないので、しっかりと補給しなくてはならない。

道の駅に隣接する、道東で唯一のmont-bell!色々と買わせてもった、ありがたい。
こんなものまで。南極に行くことがあれば着るのかもしれない。

久しぶりのmont-bellにやたら興奮。
そんな感じでこの日は終了。なかなかに疲れた…明日は久々の温泉を楽しみに頑張るぞ〜!

67日目:黙々と前へ

この日は生憎の曇り空。朝から少しだけ雪が降っていて、昨晩から風がやや強い状態で続いている。今日は小清水町から斜里町まで行く予定だ。

今日はまたもや曇天。冷たい風が時折左から吹く。

途中、止別(やむべつ)と言う地域がある。ここの駅の中に、小さなラーメン屋さんがあると口コミで聞いたので行ってみることにしたが…

止別駅。この無人駅で休憩させてもらう。

残念ながら、本日はお休みとのこと。仕方がないので、事前に一応買っておいたセコマのパンを駅の中でいただいた。

中にあったラーメン屋さんは休業。残念…

昨日と同じく、黙々と進む。

進む。休む。また進む。
その繰り返し。

まっすぐな道をひたすらに進む。

風は海からひたすらに吹いてくる。そのくせ、気温が高いため雪は湿っていて、コンディションが悪い。
歩いている途中、吹き溜まりが溜まりすぎて道を塞ぐほど巨大化しているのもあった。
これには現地民のドライバーも驚いていて、ソロソロとスピードを緩めて通過していた。

自分の背丈くらいに成長した吹き溜まりは圧巻。

そうして着いたのは、「斜里温泉 湯本館」!
以前北海道に来た時にもお世話になっていて、ここの温泉がまた格別なのだ。
今日はここと併設されているキャンプ場、「クリオネキャンプ場」のレンタルハウスをお借りする。

斜里町にある名湯、湯本館に到着!
すぐ隣にあるキャンプ場のレンタルハウスを借りる。
手袋に穴が空いてしまったので、縫う羽目に。こんな事ばかりだ。

あまり綺麗じゃないお話だが、お尻に大きなニキビができてしまった。
これがまた痛くて痛くて、座るのにも歩くのにも一苦労。やむを得ず自力で破ってみたが、無限に血が出てきてしまい悪戦苦闘。なんとか止血はできたものの、時間がかかってしまい睡眠時間を割かれたのは少し痛い(お尻はあまり痛くなくなった)。
明日から、いよいよ知床半島に入る。気を引き締めてかかりたい。

68日目:知床の温かいおもてなし

宿とはいいものだ。どれだけ風が吹こうが雪が降ろうがびくともしない。気温が下がってもストーブでなんとかなってしまう。
テントで冬の北海道を過ごしていると、日常から当たり前のように使っているものたちが尊く思えてしょうがない。だからこそ、昨日泊まったこのレンタルハウスから出たくない……けれども、出発。

朝からテントの穴を補修。一昨日によったmont-bellで購入したリペアシートが早速活躍。

今日も今日とても曇り空。もう慣れた。太陽が出ることに期待はしない。
雪は降らずとも、風は強いので場所によっては雪が吹き溜まっている。今日も除雪車の人らも頑張って働いている。

朝から除雪車が雪を掻いている。
まっすぐな道を黙々と進む。

斜里の町から東へまっすぐ続く道道。10分に1台ほど車が通過するこの道を、2時間半ほどかけて歩く。
途中、国道334号線に合流し、そこから知床半島北部の町ウトロへと向かう。

ウトロまで24キロ!
相棒さんが引っ張る。坂が割ときつい。

鬱蒼とした原生林を抜けると、そこは既に知床だった。日の出という地域につくと、そこには某喫茶店があったので、そこの軒下で休もうと近づいた。すると…

「歩いてきたのお?」

と、お店の中から女性の方が声を掛けてきた。ドキッとしながら「はい…」と答えると、

「ここじゃなんだから、中で休んでいきなぁ」


と、中へと通してくれた。
女性の方は、この喫茶店のママさん。話を聞けば、この喫茶店さんはまだお休みの時期だったらしく、翌日から営業を再開する予定で、今日はたまたまその仕込みをしていたという。自分らがお店に入って落ち着くと、タバコに火をつけてプカプカと吸っていた。そう言うところもまた、古き良き純喫茶だ。
お仕事の邪魔をしてしまい申し訳ない気持ちと、この寒い中になかへ入れさせてくれた優しさとで、どうも気持ちが追いついていかない。
すると、「コーヒーかココア、どっちがいい?」と聞かれ、恐る恐るココアと答えたら、生クリームの添えられたあったかいココアをお出ししてくれた。ここにくるまでの間、温かいものはテントの中でしか食していなかったものだから、それだけに嬉しく感じる。
それだけじゃない。お店にある骨董品…それこそ、地域の郷土資料館にでもおいてありそうなくらいの貴重な、大切に置かれている物たちを一つ一つ教えてくれた。それと、ここでは前までたくさんの猫たちを飼っていた事、飛来してきた燕たちの巣を何年も大事に管理してあげていた事を、カン箱の中で大事に保管していた写真を見せてもらいながら教えてくれた。動物たちを大切に思う気持ちが、それだけでとても伝わる。

素敵なバーカウンター。なかなかに年季のある佇まいだが、それがいい……。
足元にあるペダルで空気を送り込み音を出すオルガン。なんと戦前の代物らしく、今でも大事にこうして置かれている。
頂いたココア。生クリームが載っていてほのかに甘い。冷え切った体に、熱が芯まで行き渡るのを感じた。

だがここは北海道知床。まだテントを張る場所は決まっておらず、外は暗くなっていくばかり。風も止まず、ここをそろそろお暇していかねばと思っていたら、なんと特別に倉庫の一角を貸していただく事になった。なんとありがたい事か。

なんとワンチャンも登場!大人しくて偉いねぇ。
オーナーさんご夫婦、本当にお世話になりました。忘れられない思い出がまた一つできた。

申し訳ないと思いつつも、このまま振り切って外へ出ていくとお互い不安が残るだろうと思い、考えた末お邪魔してしまった。
そこは、夏場にくるサーフィンの方達のために設けられた簡易的な宿になっていて、なんと電気が通っていた!とってもありがたい…。

提供してくれたスペース。外は吹雪で荒れている中、ここに泊まらせていただけるのがとても嬉しい。


この旅、いつもいつも誰かの邪魔にならない様に、誰からも心配されないようにと思いながら、気を引き締めて歩いてはいるが、思わぬところでいろんな方達のお世話になってしまっている。
その優しさひとつひとつが、凍てついた大地を歩いている自分たちにとって、悴んだ冷たい手を温い毛布で抱擁するが如く温かく感じていて。
いつか、今まで優しくしてくださった分かそれ以上、誰かに優しくなれたらいいなと思う。

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