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真冬の北海道歩き旅その20 【宗谷の夜明け】

38日目:過酷極まるイベント、そしてソリ

眠い。眠すぎる。
現在の時刻は朝の4時。昨日はなんだかんだで1時半から寝ていたために、2時間ちょっとしか寝ることができなかった。
何故こんな早くから起きるかというと理由がある。宗谷岬では、毎年元旦の早朝になると限定のキーホルダーを無料で配布するというイベントがあるらしい。これは先着でおよそ1000個出しているもので、年越し宗谷に来る人たちはこれ目当てに集まると言っても過言ではない。そしてそのキーホルダーは、朝早くからすでに長蛇の列ができるという。これは是非ともほしいと思い、興味本位で並んでみる事にした…

が、これがまあ過酷!!

朝5時。風に吹かれながら耐える。

北から吹きつける冷たい風に、常に晒されてしまう。寒い。正気ではいられない。
足の先の感覚がなくなり、体がブルブルと震える…列に並ぶ人たちはまるで集団でかたまり吹雪に耐えるペンギンの様で、みんなも顔がどこか虚だ……なんだこのイベントは…

そうして約1時間半後…急に左手から「ドンッ」と音がする。
花火だ!!

公園から打ち上げられる花火。宗谷に来た人たちを労っているように見えた。

綺麗な花火が、宗谷岬公園から打ち上がる。小さい花火だけど、自分としては4年ぶりの花火なのでとても嬉しく思えた。ここまで待った甲斐があったものだ。
そうして6時半。ようやく列が動き出して無事にキーホルダーをいただいた。巳年なので、可愛い蛇の描かれたキーホルダーだった。
キーホルダーをもらうと、次は初日の出だ。公園まで登り、東側に向かう。途中、除雪されていない車道があったのでそこまで行き、銀マットシートをひいて腰掛けた。
まだまだ暗い。持って来た味噌汁とパンを2人で食べながら、日の出を待つ。

日の出を待つ。雲の隙間から時々光がさす。

残念ながら今年は初日の出が見えなさそうだ。とはいえ、こんなに天気のいい宗谷は10年来ていてもみたことがない、とベテランの年越しライダーが言っていたので、ツイている方なんだと思う。テントに戻るとしよう。

宗谷岬の朝。昨日の朝よりバイクがめちゃ増えていた。赤く染まる西の空が綺麗に見えた。

すると、北の海の奥の方に白い丘が見えた。樺太だ。
昨日までは雪が降っていたので見えなかったが、はっきり見えるとこうも近く感じるものか。その美しく白い島にしばらく見惚れていた。いつかは向こう側にも行ってみたいな…。

樺太!はっきりと見えた。国境の向こうでも新年をこうして祝っているんだろうか。

さて、そしたら用事もないのでテントをたたむ。周りの人たちも続々とテントをたたみ、撤収していった。この人達はまた家に戻り、あたかも普通の人として過ごすのだろう。一方、自分達はまだその先へ行く。少し寂しく感じた。
一旦稚内に戻り装備を整えるので、バスに乗って稚内に向かった。10時間かけて歩いた道を、立ったの1時間で戻ってしまい、現代の文明に感心する。
途中、帰路につくチャリダーを何人か追い抜いていた。自転車もまたやってみたいなあ〜…

頑張って宗谷から稚内に向かうチャリダー。それを横目に追い抜く自分達。

そうしてバスを降りた先は、「ヤムワッカナイ温泉 港のゆ」。そう、今こそこの温泉に入る時!

いって来まーす!

えっひょーい!!!温泉だあ!!!!
この旅にして最高潮に浮かれていた。年末年始で汚れきった身体を、ここで洗い流して癒される。露天風呂は少し熱めだったけど、外を見ると港を見下ろす様にできていた。たまに聴こえる船の汽笛が、港町なんだなあと思わせてくれる。
そうして風呂から上がり温めた身体に、アイスを投入。

アイスバーを2人で乾杯。

美味しい。風呂上がりのアイス、美味しい…。そうして港のゆでゴロゴロすること4時間…予約していたゲストハウスモシリパへとまた向かった。
モシリパは本当に居心地が良くて、最高の場所だった。オーナーたちも話し過ぎもせず、かと言って話さなくもない絶妙な距離感がとっても好きだった。モシリパに帰ると、人力勢の人らも同じく泊まっていた。そうしてまた夜更けまで語りあった…。

人力勢労いの会。みんなで乾杯

これもまた楽しいひとときだった。永遠に続いてほしいが、昨晩があまり寝れなかったので時折睡魔に襲われながらも、晩酌する。自分の持っている升は左にいるHさんからいただいた。

そして、ここで転機が訪れる。
なんと、ソリを引いてやって来たCさんが、ソリを譲りたいというではないか!
自分としても、この北海道徒歩旅の構想でソリを引くことも考えてみたが、どうも行動に移しきれなかった。そして今、そのソリが目の前にある。鳥肌がたった。

「これを引いたらどんな旅になるだろうか」

ソリの大きさや作りを見て検討し、譲渡させていただく事になった。

橇譲渡会の様子。いやあ、嬉しいなあ。


Cさんと共に荒涼とした大地を100キロ近く歩んだこのソリを、自分が引き継ぎ、引き続ける。さあ、どうやってこのソリを有効に運用していこうか。これからの旅路が楽しくなって来たぞ〜〜!!!

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