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幼馴染ト病

正源司陽子、僕の従姉妹であり幼馴染の名前だ。

年は僕の方が1つ上で、僕のことをお兄ちゃんと呼び慕ってくれていた。

正源司は身長がそんなに大きくなく、いつもよちよち付いてくる可愛い妹のような感覚だった。

しかし、いつからか可愛い妹という目では見れず、一人の女性として見るようになっていた。

その気持ちに気付いたのはお互いに中学に上がった辺りだ。

陽子は中学生になり、今までの可愛らしさの中にどこか大人の魅力を兼ね備えたような雰囲気を出していた。

そしてそんな陽子がチヤホヤされているのを見て嫉妬をしている自分がいた。

その時に確信した「僕は陽子の事が幼馴染としてだけでなく、1人の異性として好きなのだ」と…

しかし、陽子は誰に対しても分け隔てなく接しており正直誰の事が好きなのか、そもそも彼女の目に僕は映っているのか…そんな事は分からなかったし僕に聞く勇気はなかった。

いや、むしろ聞けなかったという方が正しい。

僕が臆病というのもあるが、聞いてしまったら二人の間に壁が作られてしまい今までのような感じで接することが出来なくなるのでは無いかと思ったからだ。

だから僕は彼女と話す時は今まで通り平然を装うと努力した。

しかし、僕の気持ちに気付いてか気付いてないのか分からないが彼女は僕に今まで通りの感じで接してくれた。

彼女が他の男に振り向いてしまうよりかはまだこの方がマシだ……そう思うことにした。


そして気が付けばお互い高校生になっていた。

高校生になった陽子はより魅力的な女性になっており、より一層綺麗になっていた。

そんなある日、陽子が倒れ病院に運ばれたと連絡が入った。

僕はすぐに病院に向かった。

雨が降しきっていたが、僕は傘もささずただ陽子の元へ行きたいという一心で走った。

病室に着くと陽子は眠っており、その横には陽子の両親がいた。

翌日、主治医から病気の説明がされた。

どうやら肝臓の病気らしく、治すには移植が1番早く確実らしい。

陽子の血液型はB型、一方で彼女の両親の血液型はA型とAB型であり、陽子の体には一般的に不適合と言われている。

しかし、僕の血液型はB型であり従兄弟という事で6親等以内の血族という条件もクリアしている。

その事を主治医と陽子の両親に告げた。

僕は陽子の為になるのであればできるだけ協力したいと申し出て、病院でドナーとして問題ないかの検査を受け、無事に問題ないとの結果が出た。

ただ、陽子には黙っておいて欲しいとお願いした。

僕なんかが名乗り出ていいとは思えないからだ。

数日後、陽子の肝臓移植手術は行われ無事成功した。

陽子が退院する数日前、僕は眠る陽子の手を握りベッドの横に座っていた

すると陽子が目を覚ました

〇〇:陽子、大丈夫か?

陽子:うん、大丈夫。あと、私に肝臓を提供してくれたのってお兄ちゃんでしょ?ありがとう。

〇〇:なんでそれを…

陽子:なんとなくかな?私の周りでB型の人ってお兄ちゃんくらいしか思い浮かばなかったから。

〇〇:それで陽子が元気になるなら俺はなんでもやるよ…

陽子:嬉しかったよ。ありがとう、お兄ちゃん。

〇〇:……今言うことじゃないかもしれないけど、僕は陽子が好きだ。ずっと前から好きだった。陽子が倒れたって聞いた時自分のこと以上に悲しかったし何かしてあげたいと思った。この先も陽子の横で支えてあげたい。だから…

僕が言い終わる前に陽子が遮って話し始めた。

陽子:私もずっと前からお兄ちゃんが好き。私が生まれた時からずっと隣にいてくれて私はお兄ちゃんの支えがないと生きて来れなかった。今後もお兄ちゃんの横に居させてくれる?

〇〇:うん、もちろん。

そして2人で微笑み合い抱き合った。


それから数年後、僕達はお互いに高校を卒業し、僕は大学に進学し陽子は看護の専門学校に入学した。

そして社会人になり僕が25歳で陽子が24歳の誕生日の日にプロボーズをした。

指輪を差し出しプロボーズをした時、陽子は嬉し涙を流していた。

その後二人の子供に恵まれ、幸せに暮らしてます。


生体肝移植についての参考文献

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