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問題2 事情変更の原則

第1 A社の主張について

1A社の主張はB社に対するB社の履行遅滞による債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)だと考えられる。

(1) 民法415条の損害賠償を請求するには、①債務の発生原因、②債務の本旨に従った履行がないこと、③賠償されるべき損害が発生していることが必要である。

(2) 本問においては、B社はA社に当該部品を毎月5000個納品する契約を締結しているのに、2022年4月以降納品を停止している。よって、債務の本旨に従った履行をしていないといえる(①、②充足)。そして、A社としては本来B社から納品される部品で機器を製造することができたはずのところ製造を続けることができなくなったことによる損害が発生している(③充足)。よって、債務不履行に基づく損害賠償請求は認められる。

(1) では、A社が被った損害のうち、どこまでが賠償されるべきであろうか。民法415条2項2号、3号にあたることで債務の履行に変わる損害賠償の請求をすることができるか検討する。

(2) この点につき、本件B社では、コスト上昇したことからA社に納品することを停止していることから納品をすることを拒絶する意思を明確に表示したといえ、B社が4月以降納品をしなくなったことでA社の製造ラインの停止が余儀なくされてしまったことから債務の不履行による契約の解除権が発生していると言える。

(3) よって、債務の履行に変わる損害賠償の請求は認められる。例えば、A社が当該部品による製品を売却することで得られたであろう利益分の請求も認められる。

(1) なお、A、B社間の契約ではB社が商品の納品をした翌月にA社は代金の支払をすることになっていたことから同時履行の抗弁権(民法533条)はB社には存しないと言えるので、A社のB社に対するB社の履行遅滞を理由とする損害賠償請求は妨げられない。

第2 B社の主張について

(1) 以上に対して、B社は部品のコストが6倍にも上昇し通常のコストでの販売は困難であるとして債務の不履行が自らの責めに帰することができない事由(民法415条1項ただし書き)にあたるとして反論することや、事情変更の原則(民法1条2項)が適用されると反論することが考えられる。

(2) これらの点につき、B社はA社に部品を渡すという結果を実現する債務を負う結果債務であるため原則として、約束された結果が実現されていなければ債務者は債務不履行責任を免れないと言える。ただし、債務者が契約において引き受けていない事由による不履行を生じさせたに過ぎないと評価されるならば責任を免れるといえるが、αが希少金属であることやS国からの輸入に依存していることをB社はもとおり認識しているはずである以上、そのような評価はできないと考える。415条1項但し書は適用できない。

(3) 次に、事情変更の原則とは、契約が結ばれた後、社会経済事情に当事者の予想しなかった急激な変動が生じた場合、不利益を受ける一方当事者を保護するため、信義則(1条2項)を根拠に、その者に、契約内容を変更・修正・解約することを認める原則である。事情変更の原則が認められるには、①契約締結後の事情の変更が契約締結時の当事者にとって予見不可能であり、②契約締結後の事情の変更が、当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであることであれば、契約内容の変更・修正・解約をすることが認められる。

本件において②のコストが毎月納付する形での契約であれば、コストが何らかの事情により変動し増えることは十分に考えられることから、予見できたものでないとは言えないため、事情変更の原則は認められない。

第3  以上からすれば、A社の主張は認められる。

以上

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