Ⅰ 背景/経緯
<はじめに>
暗号資産を始めとするWeb3.0の領域においては、変化が非常に速く、新サービスの発生から衰退までは数か月というケースも珍しくありません。
暗号資産に携わる方々にとっては、出ては消えるサービスのキャッチアップに加えて、会計基準等の整備が追い付いていない状況もあり、日々頭を悩ませていることでしょう。
本稿では、上場企業の経理の方々向けに、暗号資産に関する有価証券報告書上の取扱いについて、会計方針の変更や遡及適用の観点から考察しています。
<通常:〇⇒〇(マルからマル)>
「会計方針の変更」は、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針への変更であり、「〇⇒〇(マルからマル)への変更」と表現されます。
<Web3.0の場合:未公表⇒〇>
しかし、Web3.0においては、経済的実体と合致する会計基準等が未整備なケースも多いため、事後的に会計基準等が公表された場合には「未公表⇒〇(マル)」となります。
この点、「会計方針の変更」に該当するか否か、過年度の遡及適用の要否と併せて問い合わせが多い点です。
Ⅱ 論点①:「会計方針の変更」に該当するか
事後的な会計基準等の公表および適用に伴い、従来の会計処理に変更が生じた場合、「会計方針の変更」に該当するか否かを検討します。
前提①
前提1:会計基準等が適用される以前においては、明確な会計基準等が存在しない。
前提2:会計基準等の適用に伴い採用する会計処理を変更する。
前提3:会計基準等が適用される以前における会計処理は適切であり「誤謬」は存在しない。
検討①
新たな会計基準等の設定については、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱うことが定められています。
結論①
したがって、事後的な会計基準等の公表および適用に伴い、従来の会計処理に変更が生じた場合「会計方針の変更」に該当します。
Ⅲ 論点➁:遡及適用の要否
前提➁
前提①と同じ
検討➁
新たな会計基準等の設定については、根拠条文第6項により遡及適用することとなります。ただし、経過的措置等が定められることもあるため、実務的には経過措置を採用することも十分想定されます。
結論➁
したがって、事後的な会計基準等の公表および適用に伴い、従来の会計処理に変更が生じた場合、「遡及適用」が必要になる可能性があります。
Ⅳ その他:定義等
関連する会計基準等を以下に集約しています。
「重要な会計方針の変更」
「会計方針の変更」に該当する場合には、財務諸表全体に対する重要性に応じて注記の要否を検討します。
2.「未適用の会計基準等」
新たな会計基準等が公表された場合には、未適用であっても注記の要否を検討します。
3.「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」
会計基準等が存在しない場合や、新たなサービスが生じた場合には、採用した会計処理について注記する可能性があります。ただし、筆者の知る限りWeb3.0関連で当注記を行っている事例は見たことがありません。
4.「追加情報」
会計処理の変更の影響が大きく、財務諸表全体として言及する箇所が存在しない場合には、追加情報としての記載の要否を検討する可能性があります。
Ⅴ まとめ
<変化する検討事項、変化する重要性>
上述のように、ひとえに会計方針に関する注記といっても、会計基準等の開発状況に応じて検討事項が変わります。
また、市場環境や企業の状況によっても、会計方針の変更によるインパクトが変わるため、注記の要否や開示情報における取り扱いも調整が必要になります。
<全体感を持った検討>
特に、有価証券報告書等の開示情報においては、比較年度を開示することもあり、時系列での整理や他の注記事項を含めた全体感を持った検討が必要になります。
<サポートしています>
社内外での合意形成や、全体感を持った検討など、お困りの方がいましたら、私どもでサポートいたします。
Web3.0に詳しく経験豊富な公認会計士がサポートしますので、お気軽にお問い合わせください。
以上