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「ロックの日」に麗蘭を。恵まれたビルボードライヴ東京の夜。その4
それは、公平さんがデビューする前、アルバイトをしていた店にいた時から、ずっと感じていた。あれは80年代になったばかりの頃、まだストリートスライダーズさえ結成されていなかったと思う。
公平さんは、ロック喫茶でアルバイトをしていたのだけれど、私はそのお店に結構行っていた。まだレコードの時代。リクエストをすると、LPの片面全部をかけてくれた。
誰のリクエストも入らない時、公平さんは必ずローリングストーンズの「Sticky Fingers」のA面をターンテーブルに乗せていた。
そんなに足繁く通っていたわけではないけれど、それでも何回もあの有名なアンディ・ウォーホルのジーンズのジャケットを「NOW PLAYING」の所に立てかけていたのを目撃している。もっともそこは、ただの棚でそんなプレートなどはなかったけれど。
だから私も「Brown Sugar」の次は「Sway」で、その次は「Wild Horses」だと順番を覚えてしまった。
「よっぽどストーンズが好きなんだな~」
と思っていたけれど、後から知ったことには、そのアルバムレコーディング時に在籍していたミック・テイラーがことさらに好きだったみたいだ。
だから今でも「Sticky Fingers」を聴くと、公平さんのことを思い出す。
パブロフの犬、みたいに。
ストリートスライダーズ結成直後のライヴは、そのお店の隣の小さなライヴハウスでやったと思うけれど、バンドとしてのオーラがすでに出ていて、そこに立ちあえて良かったな、と思う。でも、その時点では、公平さんのことはあくまでロック喫茶でアルバイトをしているギターが好きな人、として捉えていたので、勝手に憧れていただけ。
そんな公平さんも、今では重鎮。時の流れを感じるけれど、あの頃と全く変わりなくギターを奏でる公平さんは、思いを次々に形にして本当にすごいな、と心から思う。
もう一人アルバイトの女の子がいたのだけれど、彼女はパティ・スミスの「Easter」をものすごい頻度でかけていた。お陰で私はパティ・スミスが大好きになり、やっぱりA面の曲順は今でもはっきりと覚えている。
これは、ちょっと余談。
この曲、長く心をこめたMCの後に奏でられた。