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「ロックの日」に麗蘭を。恵まれたビルボードライヴ東京の夜。その2
「新曲作ったよ~」
チャボが言えば、皆で拍手。どんな曲か、わくわくして待つ。
ソロの時とはまた違う曲調に、2人でやることに大きな意味があるのだと改めて気づく。
幸運なことに私は麗蘭の初ステージを観ている。91年の秋だったか、日比谷野音で何組かのバンドが出るイベントだった。今で言うフェスのようなものではなくて、もう少しそれぞれの持ち時間が長かったように思うけれど、どういう趣旨だったかは覚えていない。
友達に誘われて4,5人で出かけたのだけれど、その時、2人の名前から一文字ずつ取って「麗蘭」なんて、とてもきれいな字面だな、と思った。今でこそ、ユニットを組んだ時にそれぞれの名前から文字を組み合わせてユニット名をつけるという手法が定着しているけれど、当時はまだあまり見当たらなかった。
名前、というのはとても大切で、偶然にせよ本当に美しい組み合わせ。他の組み合わせ、たとえば「仲土」、「井屋」、さらに「市丸」とかだったら、やっぱりちょっと違う雰囲気になっただろう。
その時からギターを弾くのが好きでしかたがない、というのを全身から発している2人の息はぴったりで、いっぺんで大好きになった。
当時から歌っているナンバーと新曲を織り交ぜ、ライヴは進んでいく。チャボは73歳で、公平さんは63歳。
だから、
「チャボさん」
と呼ぶ公平さん。
チャボは曲が終わる度、ほぼ毎回ちょっと公平さんに近寄って行って、グータッチをする。
公平さんは・・・。
「あ、グータッチね」
という感じで、淡々と拳を突き出す。
決して嫌がっているふうでもないし、いつも真面目にタッチをしているのだけれど、どこかに先輩に対するような態度が見え隠れしていて、そこはかとなくおかしい。
「毎回ですね、先輩。でも先輩の拳だからありがたく受けますよ・・・」
というような感じ。
この曲も大好き。今回は歌わなかったけれど、いつも心の中に流れている。