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「アーメン中のアーメン」アフリカ大陸縦断の旅〜ザンビア編④〜

 2018年9月13日夜10時過ぎ、小腹が空いた私たちは、「危ないから、絶対にタクシーを使って行け。」というオーナーの助言のもと、近くの露店へと向かうことになりました。到着と同時に見えたのは30名ほどの人だかり、しかもそのほとんどがまだ子供でした。気が付けば、その子供たちに囲まれ、金やモノをせびられる私たち。何とか店主の助けもあり、ハンバーガーとホットドッグを注文した私たちは、逃げるようにその場を後にしました。

 2018年9月14日、朝8時に起床。情報によれば、このルサカから次の目的地であるリビングストンに行くバスは、様々な会社から1日何本も出ており、即日予約でも問題なくチケットが手に入るとのこと。プールサイドでコーヒーを飲み、わずか12時間の滞在で宿をチェックアウトした私たちは、バスターミナルへと向かいました。

 広大な砂の土地に、「どうやって動かすねん!」と思えるほどに所狭しと並んでいるバス。それらの間にできた細い通路には、大きな荷物をぶつけ合いながら移動する人々の姿。また、物売りの現地人たちが動き出しそうなバスの周囲を埋めており、手を伸ばしながら出発前の乗客と窓越しに商談している様子。これら全てを囲うような作りで、様々なバス会社が設置されていました。

「候補ありすぎて困るね。」

「調べた感じ、大体1500円から2000円で移動できるみたいやで。」

 ということで、先日国境で行った交渉と同様にいくつかのバス会社を聞いて回り、1番安かった1600円のバスチケットを購入。30分後にルサカを出発し、トラブルがなければ9時間後には、リビングストンに到着できるとのこと。

「あんなバスじゃなかったらいいですけどねー。」

「あんなんやったら、キャンセルして違うバス探すわ!」

 国境からルサカまで移動した際に乗った、最悪のバスを思い出し、トラウマが蘇ってきそうになった私たちでしたが、心のどこかで大丈夫だろうと思っていました。というのも、日中改めて街並みやすれ違う人々を見れば、これまでとは異なり、荒んだ雰囲気は微塵もなく、どこか金銭的に余裕のある様子(夜は別ですが)。そんな首都ルサカから出発するバスが、あの国境バスを下回るとは思えませんでした。

「物価、上がりましたね。」

「せやなー。これまで以上に節約せな。」

 アフリカ大陸の南下と共に、緩やかに上昇していた物価が、ここに来て一気にUP。バス出発までに食料を調達しようとしていた私たちでしたが、もはやほとんど日本と変わらない価格設定に手が出せませんでした。

「たぶん売り歩いてる人から買った方が安いでこれ。店ではもう安易に買われへん。」

「バス乗ったタイミングで、窓の外から声かけてくる物売りから買うのが1番安いかもね。」

 どうしても必要であった水だけを500ml、約100円で購入し、美味そうな軽食から目を逸らしてバスに向かった私たち。

 禿げおちた箇所のないオレンジ塗装の大型バス。クーラーの効いた涼しい車内。汚い部分を探す方が難しいほどの快適なバス。車内にはすでに、小綺麗な格好の乗客たちが着席していました。中には、マザーテレサのような服装をした修道女がちらほら。荷物を下に置き、真っ白な座席カバーに腰掛けた私たち。

「いやぁー、安心安心。」

「ハイクオリティバスやでこれ。」

「座り心地良すぎ。すぐ寝れそうやわ。」

 そして続々と乗り込んでくる乗客。その誰もがキリスト教徒すぎるというか、教会に行くような修道着。

「(場違い感すごいけど大丈夫かなこれ。いやいやでも、専用のバスなら乗る前に止められてる、というよりチケット買う時に止められてるやんな。)」

 何となく不思議な空気を感じながらも、窓の外に集まってくる物売りたちに声をかけました。やはり彼らの商品価格は店のものより3割以上はお得、スナック菓子と1つ20円の小さなパンをいくつか購入し、他はやかましいので窓をピシャリ。すると、隣の少年から声をかけられました。

「僕らも何か買いたいから、窓を開けてくれない?」

「おぉー、すまんすまん。」

 私の右隣には1つの座席に2人の少年が座っていました。そしてしばらく彼らと話すことになりました。冠婚葬祭どこでも行けますよみたいな服を着ている彼らは17歳と15歳の兄弟。リビングストンからここルサカまで2人で祖父母に会いに来ていたらしく、これからまた実家のリビングストンに帰るとのこと。将来パイロットになるために今勉強しているんだ、とペラペラの英語で私に話してくれました。

「(こんな志高い少年が乗ってるバスがクソな訳ないよな。)」

 その後も話していると、急に前の方からマイクに拾われた大きな美声が聞こえてきました。何事かと思って目を向けると、そこには聖書を手元に開いた完全なる牧師の姿。え?と思い隣の少年に目をやると、静かに!というジェスチャー。

 そこからはもうプチパニック。聖書なのか、お祈りの言葉なのか、拡声器で一層大きくなる牧師の声に続いて、乗客たちもそれ以上の声量で復唱。これがひたすらに繰り返されていきました。完全に取り残され、ただただ困惑するのみ。当然、眠りにつけるはずはなく、牧師だけを見つめる他の乗客たちを見回していました。

「(この状況で飯食われへんなー。それはまぁ良いとしても、これいつまで続くんやろ。寝られへんのキツいな。けど、寝るのが1番失礼か。何とリスペクトのない人間なんだ、って思われたら後々面倒そうや。イヤホンしたいけど、それも無理やなー。こいつはこれを騒音に思っているのか、とか思われて何か巻き込まれたら、それはそれで面倒。もう八方塞がりやん。はぁー。どうしよ。)」

 終わる気配のない大合唱に、私たちは睡眠を諦めたのでした。


 アーメン・・・

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