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「宿にプールがノルマなん?」アフリカ大陸縦断の旅〜ザンビア編⑤〜

 2018年9月14日午前9時頃、ルサカからリビングストンに移動するため、バスターミナルに向かった私たち。物価の上昇に節約心が一層強くなる中、いくつかのバス会社との交渉の末に、1600円のバスチケットを購入。無事にハイクオリティバスに乗車した私たちでしたが、車内は圧倒的なキリスト教一色。ひたすらに続く、牧師による聖書読み上げと乗客の復唱に、私たちは完全に巻き込まれていったのでした。

 その後もひたすら続く大音量と大合掌。終わるまでジッと待つことに耐えられなくなった私は、見よう見まねで彼らの復唱を復唱。

「(もう1時間ぐらいか?誰もサボらへんやん。怖いバスに乗ってもーたわ。)」

 一生懸命に声を出し続けている隣の兄弟から無意識に距離をとっていた私は、窓際に寄りかかって外を見ながら、ただただ無心で口をパクパクしていました。おそらく2時間以上は経った頃、バスが休憩所に停止すると同時に、周囲の声が鳴り止みました。そして、大きな溜息を漏らす私たち。用を足したいという気持ちは全くありませんでしたが、とにかく外の空気を欲していた私たちは、トイレに並ぶキリスト教徒たちの列から逸れ、離れたベンチで深呼吸をしながら、彼らを眺めていました。

 20分ほど経った頃、長めに息を吐き、眉間に皺を寄せながら、再びあの空間に戻った私たち。

 10分、20分、 、 、前に牧師が出てくる気配はなく、聖書を手元に開いている乗客も見当たりません。隣の席の兄弟はすやすやと睡眠を始め、徐々に食事のニオイや楽しげな会話がバスに広がっていきました。

「(やっと終わりか。これ以上続いたら、色々ぶっ壊れるわ。)」

 宗教色が抜けていく車内に比例して、構えていた私たちの力も抜けていき、ようやく乗車当初の快適さを取り戻したバス。ホッとしたところで、20円のパンを一瞬で平らげた私は、待ち焦がれた安眠に突入しました。

 何時間か経った頃、気持ちよく起床。ひとまず、あの大声たちに起こされなかったことに安堵。しばらくすると、バスはまた休憩所に停車しました。今度はトイレに並び用を足し、スッキリしてバスに戻ろうした私は、誰かに呼び止められました。どうやらトイレ駐在員的な人間が使用料を請求しているらしく、他の利用客もちゃんと支払っている様子。値段を聞くと20円とのこと。

「(20円のパン食べて、用を足すのに20円て。アホみたいなことしてるやん。)」

 と思いながら静かなバスに戻りました。そこから寝て起きて食べてを繰り返した午後6時、珍しく時間通りにリビングストンに到着。

「どうします?宿まで行くか、もうウィントフックまでのバス取っちゃいます?たぶん、バス会社この近くなんで。」

「あー確か、オアシスやっけ?16日か20日に出発のバスやんな?」

「そうですね。僕らは自転車旅あるんで、早めの16日の方、取りたいんですけど、Y氏とS氏はどうします?」

「まぁリビングストンは滝みたいだけやし、俺もウィントフックまでは同じ工程でいいかな。」

「俺もそれで大丈夫だよ。2人の見送りもしたいからね。」

 ということでまたしばらくは、4人で行動することが確定。着いてすぐではありましたが、次の目的地、ナミビアはウィントフック行きのバスチケットを取るため、オアシスという会社へ向かいました。

「16日か20日にウィントフックに行きたいんですけど、座席4人分、空いてますか?」

「そうだねー。今のところどっちも空いてるよ。どっちにする?」

「じゃあ16日で4人分、お願いします。」

 さすがの物価の上昇。1人あたり5200円をお支払いして、無事にチケットを4枚入手。

「当日は午前11時頃にここに来てくれればいいよ。」

「分かりました。ちなみに何時間ぐらいかかります?」

「ザンビアの出国、ナミビア入国とか手続き諸々含めて、丸1日かからないぐらいかなぁ。」

 またしても私たちを待ち受ける、長距離過酷バス移動。それまでに回復できることを願いながら、宿に向かって歩きました。日没ギリギリのリビングストン、首都ルサカに比べると田舎に位置付けられてるようで、植物地帯や作業途中の工事現場などが数多く見られました。右側には真っ直ぐに続く、無駄に幅広い車道。左側には飲食店やマンションなど、西洋らしい作りの立派な建物が並び、そのほとんどは見上げる高さ。そんな街並みに挟まれながら、歩道にできた等間隔の木陰の上を歩き続ける私たち。

 20分ほど歩いたところで、お目当ての宿、FAWLTY TOWERSに到着。それはそれは大きて綺麗な施設。門やその奥に見える椅子やテーブル、階段などが高級さを演出していました。しかし、お値段は1泊1人1000円(ドミトリー)とリーズナブル。清潔でふかふかのベッド、Wi-Fiもサクサク、シャワーの温度も完璧。

「いやー、南下するにつれて物価上がってきたから、どうしよかと思ってたけど、旅人に優しい宿って探せばあるもんやな。」

「ザンビア着いてから、キリスト一色の2時間を除けば、ニトリ状態続いてますね。」

「てか、ザンビアの宿は屋外プール設置がノルマ?なかったら、もっと安いだろうけど。」

 なぜか青白くライトアップされた、ギャルのいないナイトプールに足を浸けながら、急に増え出した快適な環境に喜びを感じていました。

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