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「犯罪者確定 in エジプトー宗教と詐欺の香りー」アフリカ大陸縦断の旅~エジプト編⑧~

※前回の物語はこちらから!!!!!



 2018年8月16日、午後4時半頃。この日に過ぎ去っていった無数の出来事に、何も整理をつけられないまま、話し合いを終えた私たち。偶然が起こした今に、唯一残された選択肢は従うことのみ。散らかったままの事実から目を逸らし、休憩所に戻りました。そして、そこで目にした新たな人物。ムーディらが取り囲む、その真ん中に座る老人。全身を覆う、黄ばんだ白い服。休憩所に到着後、聞こえてきた謎の呪文と同じ声。強そうな宗教色。


「あの老人は一体、、、。知り合い、、とか?」
疑いの表情を隠しきれず、恐る恐る質問する私たち。


「あぁ、彼は私の師匠のような存在だ。彼とは古くからの付き合いがあってね・・・・・・・・・・」
エジプト訛りの英語で、興奮気味に語り始めたムーディ。


 それは、およそ以下の内容だったと思われます。


 老人とは10年前のイスラム教徒の集まりで出会った。そこで、熱心にイスラム教を信仰するその老人と意気投合したムーディ。以来、親交が深く、Egyption wayを立ち上げたムーディは、老人が所有する小屋を休憩所として借りている。そして、ここで共に祈りを捧げる時もあるのだとか。さらに、その老人はキリスト教のことをあまり良く思っていないようで、彼の前でキリスト教の話をしてはいけない、とのこと。その原因は、エジプトに暮らす、極少数のキリスト教信者との宗教対立。数年前には、人が死ぬような大きな事件も起きたらしい。



「(日本に仏教のイメージがあって良かった。本当に良かった、、、。)」


 しかし、これは束の間の安堵。。


 もし、私たちがイスラム教徒なら。もし、私たちの人種が違えば。


 止まらない想像と襲いかかる恐怖。



「(こんな過激な思想の人たちと、半日も一緒にいたのか。そして、この宗教の番人のような老人。もうここから離れたい、今すぐ逃げたい、、、。あの時に戻れれば、、、。)」


 私たちが進んできた道のり。はるか遠く、ぼんやりと見えるギザのピラミッドには、いつの間にか夕日が差し掛かっていました。


 ガサガサ・・・ガサガサ・・・


 突然、小屋から聞こえてくる物音。

 そして、同時に漂う緊張感。


「(何か起きる、、、。)」


 一気に高まる警戒心。


 すると、ゆっくりと小屋の扉が開き、あの老人が出てきました。両手には、いくつかの薄汚れた派手な絨毯。彼は、おもむろに、それらを砂の上に敷き始めました。畳1畳分ほどの小さな絨毯。敷かれたそれに、次々と座るムーディたち。

 片膝ずつ曲げて、背中を丸め、頭を地面につける彼ら。全員がとある同じ方向、おそらく聖地メッカに向けて、祈りを捧げ始めたのです。


 目の前の光景と、張り詰めた空気に身動きとれず、固まる私たち。


 楽しそうに馬に乗っていた謎の親子。歴史あるピラミッドにヘラヘラと登っていたムーディ。眠たそうな目で私たちの前に座っていた老人。


 一瞬にして変わった彼らの目つき。それを目撃してしまった私たち。

 間違えなくこの出来事が、私たちが無意識に抑えて込んでいた恐怖心を、奥底から引き上げたのでした。


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「そろそろ行こうか。」


 何事もなかったかのように、話しかけてくるムーディ。私たちはただ、首を縦に振ることしかできませんでした。


 そして、出口と言われる方に向かって歩き始めた私たち。あの老人に、私たちが乗ってきた馬を預け、歩いて帰ることに、違和感を抱く余裕などありませんでした。


「ここから出るんだ。」


「・・・どこ???」


 目の前には、私たちの身長を優に超えるコンクリートの壁。

「(まさか、これを登ろうなんて、、、。)」

 冗談だと受け取った私たちは、壁の上を指さし、苦笑いでムーディに目をやりました。

 しかし、彼が指す方向は壁の下。そこには、確かに出口が存在していました。明らかに、人の手で破壊された壁。人1人がやっとくぐり抜けられるほどの穴。その周りに散らばったコンクリートの残骸。



「(絶対違法、犯罪者確定。もう今更何をされても驚かない。)」


 私たちは、腹這いになって、1人ずつコンクリートの壁を通過しました。


 度々感じる恐怖と不安を通り越し、もはや全てを諦めていた私たち。


 そして、ムーディはそんな私たちに追い打ちをかけてきたのです。



「今からピラミッドに登りに行くから、先払いで12万な。」


※続きの物語はこちらから!!!!!



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