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基本のトマトソースのレシピ

トマトソースは家庭でもよくつくられていますが『お店の味とちょっと違う......』という方も多いのではないでしょうか。今日はトマトソースの作り方を考察します。

トマトソースの基本となる材料は

ホールトマト 
香味野菜(主に玉ねぎ)
オリーブオイル (+ハーブ)

です。プロとアマチュアではなにが違うか、検討してみます。ホールトマトは市販品ですので、品質は変わりありません。よくある失敗は お店のものと比べて『コクがない』と『油っぽい』といったもの。仮説ですがその原因は『香味野菜の量』と『オリーブオイルの量』にあるのではないでしょうか。

クックパッドなどに掲載されているレシピとプロのレシピを比較すると一般的の方のレシピは香味野菜の量がやはり多めのようです。プロは通常、2.5キロの缶詰でソースを仕込みますが、それにたいして玉ねぎの量はせいぜい1個が一般的です。なかには玉ねぎをいれずに、ニンニクだけのお店もあります。(反対ににんにくなしで玉ねぎだけの お店もあります)その理由はトマトソースには汎用性の高い味が求められるからです。
以前はトマトソースといえば香味野菜をオイルでじっくりと炒めたソフリット(ミートソース参照)をベースとする場合が多かったですが、最近はトマトのすっきりとした味を生かすためにニンニクと唐辛子(それとオリーブオイル)を炒め、そこに裏ごししたホールトマトを加えて軽く煮詰めたソースを常備している店も増えてきたように思います。

もうひとつの違いはオリーブオイルの量でしょう。プロはオリーブオ イルを多めに使い、ソースをつくっていきます。クックパッドなどのレシピをみても 多くの家庭ではオイルの量がやや少ないようです。

とはいえ目的によってトマトソースは使い分けるべきです。トマトソースといっても

ホールトマト+赤唐辛子にんにく
ホールトマト+赤唐辛子にんにく+フレッシュトマト
ホールトマト+赤唐辛子にんにく+ソフリット

など様々。いずれにせよ基本のトマトソースは汎用性を持たせた味を目指すべきです。旨味が欲しければ後からベーコンやアンチョビを足せばいいですし、辛味を足したければ赤唐辛子、あるいは魚介類などと足していけばいいのですから。

それでは材料です。

『基本のトマトソース』
ホールトマト缶 2缶
 玉ねぎ(小さめ) 4分の1(大きめの玉ねぎなら8分の1)
にんにく 1片
オレガノ 小さじ1
オリーブオイル 大さじ6

唐辛子はあとから入れればいいので、今回は入れません。ホールトマトの選択が意外と重要です。年による差もありますが安価な製品はそれなりの、高価な製品は値段なりの香りと味わいがあります。しかし、重要なことは安い、高いではなく、同じ製品を買うことです。最終的に酸味が強ければ砂糖で調整するなどすればいいのですが、毎回使う材料が異なると前回との比較が困難になるからです。

たまねぎとにんにくはみじんぎりにします。技術がなくてタマネギが細かくできない場合は大きいまま投入し、あとでとりだせば大丈夫。

オリーブオイルが結構、はいります。この時のオイルはピュアオリーブオイル、EVオリーブオイルのどちらでも結果にはそれほどの違いは出ません。イタリア人のなかにはトマトソースには精製されたヒマワリ油が一番、というシェフもいるほど。保存を考えると抗酸化力が強いEVオリーブオイルがいいかもしれません。オリーブオイルについては後日、別に解説します。

にんにくのみじんぎり、たまねぎのみじんぎりとオリーブオイルを加え、弱火にかけます。やがて、ぱちぱちと泡立ってきます。

たまねぎがうっすらと色づいてきました。ここで一端、火を止めます。

ホールトマト缶を投入します。皮が残っていればとりのぞいてもいいですが、それは 煮込んだ後がいいでしょう。ホールトマト缶は潰すか、裏ごしてから加えることが一般的ですが、煮えれば柔らかくなるので今、潰す必要はありません。 缶詰を入れたら、中火にかけます。

オレガノを小さじ1加えました。加えるドライハーブはバジルでもかまいませんが、 家庭で一つ、ドライハーブを常備するとしたらオレガノがお勧めです。その理由は魚 や肉などなにでもあわせやすく、また乾燥することで香りが出てくるハーブだからで す。バジルはフレッシュのほうが香りがいいので、乾燥品を買うのならフレッシュを 買いましょう。

煮立ってきたら弱火に落として最低15分間煮ます。長時間煮ると酸味が弱くなりま すので、酸っぱいのが苦手な方はもう少し長めに煮てもOKです。

ところで酸っぱいからといって長時間煮込めば酸味はなくなるのでしょうか? トマ トの主な酸味成分はクエン酸。クエン酸は割合熱に強い酸ですので、なくなりませ ん。酸っぱいのが嫌いな方は玉ねぎの量を徐々に増やすか、仕上げに砂糖を小さじ1加えます。

ここで隠し技をひとつ。トマトソースは煮込んでいる間、結構はねて台所を汚します。ふ たをしめれば防げますが、水分がうまく蒸発しません。そこで手ざるのようなものが あれば覆ってしまいましょう。台所が汚れるのを防ぐことができます。ちなみにこの技は揚げ物を作るときにも便利です。

15分、経ちました。30分くらい煮込んだほうがトマトソース単体としての完成度は高くなりますが、あとで魚介や肉を入れて煮込んだりといった応用が利かなくなります。

泡だて器でトマトを潰します。煮えているので、すぐに崩れるはずです。

さて、塩、こしょうで味を整えましょう。安定して味付けするのは計量するのが一番です。今回、できあがったソースの重量は680gでした。その0.8%の重量の塩を加えます。(680÷100)×0.8=5.44ですので、5.4gの塩で味付けをしました。5gでも大丈夫です。ここでの味付けはあとで多少、煮詰まることを考えてやや薄味。また、他の料理に応用できるように、この段階では未完成の味です。

今日はパスタにしてみましょう。

トマトソース 200g
乾燥パスタ 160g
バター 小さじ2
胡椒
バジル

フライパンに分量のソースを温めます。ここで生のトマトを加えると香りが引き立ちます。煮詰まってオイルが表面に浮いてきたら、バターを加えます。バターはこのあと加えるゆで汁と混ざり合い、ソースの乳化を助け、コクも与えてくれます。

1%の塩分濃度のお湯で袋の表示時間とおりに茹でたパスタを加えます。このときソ ースは熱くしておくのがポイントです。熱いパスタに熱いソースを加える事で、パス タの表面にソースが浸透し、はじめて一体化します。パスタが冷めてしまうと、味が内部まで浸透しません。
火を止めて軽く和えます。この時にゆで汁を30ccほど加えましょう。ソースをきちん と沸かしておけば、激しく揺する必要はまったくありません。肝心の油脂分はすぐに乳化してくれます。ここでパルメジャーノチーズを加えても美味です。

バジルを添えてできあがりです。パスタの茹で湯の塩分濃度とソースの塩分で味付けする必要はありません。シンプルなパスタなので、一つ一つの工程をきちんと踏まえるとトマトのすっきりとした酸味が生きた軽やかな味になります。
おすすめはボンゴレロッソですね。オリーブオイルでニンニクと唐辛子を加熱し、そこにあさりと分量のトマトソースを加え蓋をし、あさりの口が開いたらソースの出来上がり。同じように熱いうちにパスタで和えるだけで完成です。パスタはシンプルな方がおいしいと思います。

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お知らせです。このnoteの一部をまとめた本『新しい料理の教科書』がマガジンハウスより1/17日に発売されました。

多くの人に読んでいただきたいですし、noteでも他のSNSでも簡単な感想などをお寄せいただけたらもっとうれしいです。このトマトソースのレシピも掲載しています。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!