しろくまドイツ留学記 【13ヶ月目】【ドイツで研究インターン】
こんにちは。ホーエンハイム大学修士2年の加藤です。今年の夏休みはドイツの企業のインターンシップに行ってきました。
日本のインターンは1~数日で無給ですが、ドイツでは1ヶ月程度フルタイムで働きます (勿論お給料は出ます)。さらに、インターン中は社員さんとほとんど同じような仕事に携わりますので、仕事への責任は日本より圧倒的に重いですが、その分学べることは何倍も多いです。
このnoteでは、NiCoTa GmbHでのインターンが決まるまでの経緯から、現地で学んだことについて紹介していこうと思います。
NiCoTaで働くまでの経緯
ドイツでのインターンシップ先の探し方は様々ですが、私の場合授業を担当していたProf. Friedrich Longinに紹介して頂きました。第2セメスターの授業 (Breeding Methodology) で大学の農場を見学することがあり、その際に頼み込んだ形です。
私が育種に興味があること、卒業後JTで働くことを考慮して選んでくださったそうです。なんて優しい先生なんでしょう… (授業はめちゃくちゃ難しかったですが)。紹介された後は担当者のJanとスケジュールを詰めていきました。
NiCoTaの事業とメンバー
NiCoTaは植物のタバコの種苗会社で、ドイツの農家さんが使用するタバコの種を研究/開発/生産しています。元々はBaden-Württemberg州の農業試験場の1部門でしたが、2003年に民営化された背景があります。
経営者であり筆頭研究者のDr. Norbeltによってタバコの天敵であるハマウツボ (Orobanche coerulescens) とBlue Mold (Peronospora hyoscyami) への抵抗性を持った品種の開発に成功しています。さらに、Dr. NorbeltはNiCoTaが設立される前からドイツのタバコ研究を引っ張ってきた存在です。NiCoTaがドイツのタバコ種子のシェアの100%を占めているのも、農家さんからDr. Norbeltへの信頼の高さ故では無いでしょうか。
正社員はDr. Norbeltを含め3人います。
NiCoTaでのお仕事
一般的に科学者の仕事は研究室で行われるイメージがありますが、育種家はほとんど農場にいます。特にタバコは昔ながらの方法で品種改良を行うので、仕事の8割以上を肉体労働が占めます。
私がインターン中に行った主な仕事は次の通りです。
私も大学で畑仕事はよくしていましたが、それを大幅に上回るレベルでハードな仕事ばかりでした。特にタバコの収穫と乾燥の作業がキツかったです。また、タバコは花の数が多いので、人工授粉を1列を終えるだけでも3時間かかりました… 育種家の仕事の大変さを身を持って学びました。
NiCoTaで学んだこと
授業では品種改良を行うための理論を学んでも、実際にどう行われるかは現地に行かなければ身につきません。NiCoTaで育種家の仕事のアウトラインを掴むことで、視野は何倍にも広がりました。
勉強していた当時は授業で学ぶ理論をどう活用すべきかイマイチ理解できていなかったですが、今となっては完全に理解できました。かつて私が澤田酒造で働き始めた時と同じような感覚です。
さらに、修士論文でどのような研究をするべきかも明確になりました。私がホーエンハイム大学への志望動機書に書いた通り、大麦の醸造適性と抵抗性のための品種改良を行っていきたいと思います。
余談
インターン中はカールスルーエ市内のアパートの4階 (日本で言う5階) に住んでいました。エレベーターすらない古い建物だったので毎日大変でした…
フラット内のメンバーは全員カールスルーエでインターンに参加している学生で、ドイツ、フランス、アメリカと国際色豊かでした。
アパートに炊飯器を持っていくことは流石にできなかったので、パン食生活が続きました。ただ、3日目の時点で食パンに完全に飽きてしまい噛むのも嫌なレベルでした。その後は鍋でご飯を炊いてなんとか食いつなぎました。
畑仕事の際にはパートのお母さん達と一緒に働きました。学生のZhaoも参加していて、彼女とはシフトが重なっていたので毎日一緒働きました。彼女は美大出身ですが、植物育種にも凄く興味を持ってくれてとても働きやすかったです。もう彼女に会うことは無いと思いますが、元気でいてくれることを願っています。
パートのSabineさんとは一緒の区画を担当していたのもあって、とてもお世話になりました。最終日にはザッハトルテを買ってきてくださり、皆で舌鼓を打ちました。やっぱりザッハトルテは美味しいですね。
Uni Hohenheimを卒業したら日本に戻ってJTで働きますが、NiCoTaで学んだことはダイレクトに役立っていくと思います。JTはNiCoTaと共同研究することもあるので、もしかしたら私がJTの社員として携わることになるかもしれません。ドイツのTrierにある研究所に配属されることになったら、また皆に会いに行きたいです。
※2021年9月分