銀座和光の個展に行って感じたこと
現在銀座和光で銅板画家の入江明日香さんが個展を開催している(3月21日まで開催予定)。HPから引用すると入江さんは「銅版画を媒体とした絵画表現の作品です。日本の手漉き和紙に刷った版画をコラージュし、水彩や墨、箔、胡粉などを使用した独自の技法で制作しています。作品は、人間、動物と植物の「共存」と「風化」をテーマとして展開し、最近作では「時空」を超えて絵を見る人が過去と現在を旅しているような視覚的体験を目指して制作に取り組んでいます。」と紹介されている。
一昨年横浜で行われた個展に行ってからその魅力に惹かれていた私は、開催初日に勇んで銀座へと繰り出した。
銀座和光。その名前を知らない人でもこの時計台ならご存知ではないだろうか(この写真は別の機会に撮ったものだが)。
この時計台の下は百貨店になっている。しかし、この百貨店は他の百貨店とは敷居の高さが段違いである。各フロアの面積が他の百貨店と比較し小さく、またフロアも4階までしかない(+催事用の1フロア)。地下に食料品売り場も存在せず、腕時計を多く取り扱っている(なにせ和光は腕時計のセイコーのグループなのである)。
入り口には受付(?)の人が常に立たれており、買い物を終えて出てくる人はもれなくお金持ちのマダムである。その辺の若造が入れる隙など一切存在しないと言える。そのため、私はこれまで和光に入ることをためらっていたのである。
しかし、今回はこの鉄壁に挑まざるを得ない。私はいつもより綺麗な服のシワを伸ばしつつ勇気を振り絞って入り口をくぐった。目的は6階の催事コーナーである。私は敢えて階段を使った。この百貨店を満喫するためである。どのフロアもゆとりがあり、他のデパートのような慌ただしさは全くない。客数は少ないが、皆圧倒的にお金持ちのオーラを醸している。他の百貨店とは何もかもが異なる。銀座和光を他の百貨店と同じ「百貨店」という括りで纏めるのはナンセンスであると感じた。などと考えていると目的の6階に辿り着いた。
今回のメイン展示は十二支を題材にした作品であり、それらが環状に展示され、その円の中央にも作品が並べられていた。作品はとても美しかった。繊細な線とコラージュに使われる題材、目を引く色使いなど、私の語彙力では表現できないがとにかく良かった。今回は個展ということで販売も行われていた。1作品100万円を超える値段であったが、その価値は間違いなくある。無論今の私にそれを買う資金力は無いが、将来的には購入したい。
他のお客さんは明らかに買う気だった。展示係の店員さんに積極的に質問をし、作品を選んでいる様子だった。ちなみに私にも一度店員さんが声を掛けてくれた。少しは嬉しかったが恐縮してしまった。
今回、私は背伸びの重要性を感じた。これまでは和光が放つ凄みに圧倒されその外観を眺めるに終わっていた。しかし、入ってみるとただの百貨店でしかない(前述のように他の百貨店とは格が違うが)。ここで買い物をする人はどのような人なのか、どのようなものを販売しているのか、どのように振舞っているのか、など実際に背伸びし足を踏み入れることで体感した。ネットに質問を投げるだけでは得られない経験をすることができた。言語化は難しいが、お金持ちは貧乏人とは行動のゆとりが違う。圧倒的なカネが生むゆとりがその身体全体から溢れているようであった。
下を見て自分の精神を安定させることも時には大事だが、上を見て自分を成長させることもまたたいせつである。百貨店はオワコン、無意味などと言って切り捨てるのではなく、実際に行ってみることではじめて見える世界がある。
時には背伸びをして、普段足を向けない高級店に行ってみてはどうだろうか。
それでは、ごきげんよう。