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ブレイキングバッドとメンタル

『ブレイキング・バッド』の魅力と問題点を考察する

『ブレイキング・バッド』は、アメリカのドラマ史上最高傑作と称される作品です。肺癌に侵された化学教師ウォルター・ホワイトが、家族に資産を残すために麻薬王としてのし上がっていく物語です。このドラマは、従来のアメリカドラマの概念を打ち破った斬新なストーリー、緻密な伏線と回収、魅力的なキャラクター、リアルな描写などで高い評価を得ました。しかし、同時に、残念な点や問題点も指摘されています。この記事では、『ブレイキング・バッド』の魅力と問題点を考察してみます。

『ブレイキング・バッド』の魅力

  • 主人公ウォルター・ホワイトの人間像

    • 『ブレイキング・バッド』の最大の魅力は、主人公ウォルター・ホワイトの人間像です。ウォルターは、一見温厚で普通のおじさんですが、実は自己肯定感が低く、コンプレックスの塊です。彼は、大学時代に共同で立ち上げた会社「グレイマター」を辞めた後に大成功した同級生エリオットと恋人グレッチェンを恨んでおり、自分が成功できなかったことが劣等感になっています。彼は、家族に資産を残すためという名目で麻薬ビジネスに手を染めますが、それは実は自分のためであり、家族や仲間を裏切ったり、平気で殺人を犯したりします。彼は、裏社会でのし上がると同時に人間性を失っていきますが、最後にエリオットとグレッチェンを脅して家族に資産を渡すように命令することで、やっと劣等感を克服します。ウォルターは、見ていて胸くそ悪くなるような悪人ですが、同時に彼の苦悩や葛藤も感じられる複雑なキャラクターです。彼はアメリカドラマ史上最悪の主人公とも言えますが、それだけに強烈な印象を残します。

  • ウォルターとジェシーの関係

    • ウォルターとジェシーの関係も『ブレイキング・バッド』の魅力の一つです。ジェシーは元教え子でチンピラの麻薬中毒者ですが、ウォルターと一緒に麻薬製造を始めます。最初は利害関係だけで結ばれた二人ですが、次第に親子や師弟のような絆が芽生えます。しかし、ウォルターはジェシーを利用したり裏切ったりすることも多く、ジェシーはウォルターに対して憎しみや恐怖を抱くようになります。二人の関係は、愛憎入り混じった複雑なものになっていきます。最後には、ウォルターがジェシーを救うことで和解しますが、それでも二人の関係は元に戻ることはありません。ウォルターとジェシーの関係は、ドラマの中で最も感動的で切ないものです。

  • 魅力的な脇役

    • 『ブレイキング・バッド』には、ウォルターとジェシー以外にも魅力的な脇役がたくさん登場します。例えば、ウォルターの義弟でDEA捜査官のハンクです。ハンクは、最初はいかつくてお調子者なキャラですが、トゥコとの銃撃戦がトラウマになるなど繊細な面もあり、勘が鋭くて頭が切れて粘り強いという警察の資質が凝縮されたような人物です。彼は、ウォルターがハイゼンベルクであることに気づき、執念深く追跡しますが、最後はジャックたちに殺されてしまいます。彼の死はドラマの中で最も悲しい場面の一つです。また、ウォルターの仲間であったマイクも魅力的な脇役です。マイクは元警察官でプロの殺し屋ですが、孫娘への愛情や仲間への忠誠心も持っています。彼はウォルターと対立することも多く、最終的にウォルターに殺されてしまいますが、その死に際に「シャットアップして死ね」と言うセリフはカッコよすぎます。他にも、影の麻薬王ガス・フリングやサウル・グッドマン弁護士など、個性的で印象的な脇役が多数登場します。

  • 緻密な伏線と回収

    • 『ブレイキング・バッド』は、緻密な伏線と回収でストーリーを展開していきます。例えば、シーズン2ではピンクのクマのぬいぐるみが何度も登場しますが、これはシーズン2の最終話で起こる飛行機事故を暗示しています。この飛行機事故は、ウォルターがジェインを助けずに死なせたことで引き起こされます。ジェインの父親は航空管制官でしたが、娘の死に心を痛めて仕事中にミスをしてしまいました。このように『ブレイキング・バッド』では、小さな出来事が大きな結果を招くことを見事に描いています。他にも、シーズン4ではウォルターが爆弾を仕掛けたテディベアやリリー・オブ・ザ・バレーなど、伏線と回収が巧みに行われています。

      • リアルな描写

        • 『ブレイキング・バッド』は、麻薬製造や売買、裏社会の暴力などをリアルに描いています。ウォルターが作るメタンフェタミンは、実際に存在する麻薬であり、その製造方法や効果も科学的に正確です。また、ドラマに登場する銃撃戦や爆発などのシーンも、現実に起こりうるものであり、視聴者に衝撃を与えます。さらに、ウォルターの肺癌やジェシーの麻薬中毒などの病状も、医学的に正確に描かれています。『ブレイキング・バッド』は、架空の物語でありながら、現実味のある描写で視聴者を引き込んでいきます。

『ブレイキング・バッド』の問題点

  • ハンクがウォルターの麻薬製造に気づかない

    • 『ブレイキング・バッド』のストーリーで問題点とされるのが、ハンクがウォルターの麻薬製造に気づかないことです。ハンクはDEA捜査官として優秀であり、ウォルターが化学者として優秀だったことも知っています。また、ウォルターが学校の化学機材を盗んだり、チンピラのジェシーと接点があることも知っています。それなのに、ウォルターがハイゼンベルクであることに気づくのはシーズン5までかかります。これは、ハンクの勘が鈍ったり、肉親をかばう気持ちが働いたりしたからだと言えますが、それでも少し違和感が残ります。

  • ウォルターの最後の敵が小物

    • ウォルターはシーズン4で影の麻薬王ガス・フリングを爆殺しましたが、その後に対決する相手はシーズン5から登場した小物たちです。ジャックやリディアは、ウォルターにとって大きな脅威ではありませんでした。最後に対決する相手が長く登場しているハンクやマイクやジェシーだったら、もっとドラマティックになったと思います。ウォルターの最後の敵が小物だったことは、少し残念な点です。

  • 予想通りのウォルターが破滅するラスト

    • 『ブレイキング・バッド』のラストは、ウォルターが破滅して死ぬという予想通りのものでした。これは悪くないラストですが、少し素直すぎる結末だと思います。もっと予想外のラストだったら、視聴者を驚かせることができたと思います。例えば、ウォルターが罪を隠し通して見かけだけのハッピーエンドだったり、ウォルターが性懲りもなくドラッグ製造を続けてのし上がったりしたら、もっとインパクトがあったと思います。

『ブレイキング・バッド』のまとめ

『ブレイキング・バッド』は、アメリカのドラマ史上最高傑作と言われる作品です。主人公ウォルター・ホワイトの人間像、ウォルターとジェシーの関係、魅力的な脇役、緻密な伏線と回収、リアルな描写などで高い評価を得ました。しかし、同時に、ハンクがウォルターの麻薬製造に気づかないことや、ウォルターの最後の敵が小物だったことや、予想通りのウォルターが破滅するラストなどの問題点も指摘されています。この記事では、『ブレイキング・バッド』の魅力と問題点を考察してみました。『ブレイキング・バッド』は、完璧な作品ではありませんが、それでも多くの視聴者を魅了した作品です。このドラマを見ていない人はぜひ見てみてください。

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