僕の中の「世界一周」の立ち位置
「世界一周でも行きますかね……」
月2回受けているコーチングの最中、何気なくこの言葉が僕の口から出た。
突然口から飛び出た言葉に、自分でも少し驚いた。
コーチの賛同もあり、世界一周はもはや決定事項のような感じになった。
個人事業主として開業して3年。
開業した時から、もしくは大学で南米に留学した時から世界一周は、僕の夢だった。
正直、僕には大きな夢や目標がない。
「独立起業してバンバン稼ぐぞ!」「ユニコーン企業を作るんだ!」「結婚して家庭をもつことが幸せだ!」といった、強い意欲を伴うものがない。
もちろん人並みに「やりたい」という気持ちはあるのだが、夢や目標といういうにはあまりに意欲がついてこない。
そんな僕の、唯一と言ってよいかもしれない夢が「世界一周」だった。
この夢だけは、何年経っても色あせない。
海外の文化を学びたい、英語を話せるようになりたい、世界中に友達を作りたい、などそれらの気持ちもなくはない。
だが、なぜ世界一周に行きたいのか、1番の理由は「知らない場所に行って、はじめての経験をしてみたい」から。
大学2年の頃の、ワクワクは今でも忘れない。
南米の細長い国、チリに留学する前に、留学先の大学の資料をもらった。
そこには数枚の、大学や大学近辺の写真があり、その写真を見ると、そこには未知の世界が広がっているように思えた。
日本とは何もかもが違う、また映画やテレビでよく見るアメリカやヨーロッパとも違う。
南米は僕にとって誰も知らない世界だった……。
2015年当時、もうGoogleは立派な検索エンジンで、チリについて調べようと思えば調べられるし、写真も動画もたくさん見ることができたはず。
しかしその頃の僕の情報リテラシーが絶望的に低かったおかげで、チリの事前情報をほとんど入手しないまま、留学に行くことになった。
何も調べなかったことは、今でもよかったと思える。
そこで暮らすこと、買い物、外食、自炊、公共交通機関に乗ること、何もかもが新鮮だった経験は、保守的で変化や冒険を好まない僕にすら、強烈に心躍るものだった。
留学後は一度も海外に行くことがなく、通常通りの保守的な自分に戻っていたが、心のどこかに「知らない場所に行って、はじめての経験をしてみたい」という欲求が溜まっていたのだろう。
そして、今まである意味遠ざけていた夢が、一気に自分に詰め寄ってくることになったのだ。
なぜ遠ざけていたのかは、次に書く。