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【ICP①】さよならクラウド依存 - ICPが実現する新世代インターネット

ブロックチェーン技術は、暗号通貨やNFTの普及により広く知られるようになりました。しかし、その真の可能性は、単なるデジタル資産の管理を超えて、インターネットそのものを再構築する可能性を秘めています。

Internet Computer Protocol(ICP)は、そんな野心的なビジョンを持つプロジェクトです。従来のブロックチェーンの限界を超え、完全な分散型インターネットの実現を目指しています。

このブログでは、ICPの核となる特徴と、なぜこのプロジェクトが注目を集めているのかを、技術者の視点から解説します。

なぜICPが必要なのか

現代のインターネットは、大手クラウドへの依存度が非常に高くなっています。私たちが日常的に使うWebサービスのほとんどは、AWS、Google Cloud、Azureなどの中央集権的なインフラ上で動いています。

この状況で生じている主な問題は:

  • サービスの可用性がクラウドプロバイダーに依存

  • ユーザーデータの管理と所有権が中央集権化

  • 突然のAPI変更やサービス停止のリスク

実際、2021年12月のAWS障害では、NetflixやDisneyなど多くの大手サービスが同時にダウンする事態が発生しました。

ICPは、このような中央集権化された"Web2.0"の限界を超えるために誕生しました。真の分散型インターネットを実現し、誰もが自由にサービスを展開・維持できる環境を目指しています。

ICPの革新的なアプローチ

1. サブネットアーキテクチャ

ICPの核となる機能が、サブネットと呼ばれる独立したブロックチェーンネットワークです。

サブネットの主な特徴:

  • 独自のコンセンサスメカニズムを持つ

  • 他のサブネットと非同期で通信可能

  • 需要に応じて水平スケーリングが可能

細かい解説についてはまた別記事で紹介しますが、例えば、NFTマーケットプレイスを運営する場合、取引処理用のサブネットとNFTデータ保存用のサブネットを分けることで、システム全体のパフォーマンスを最適化できます。

2. リバースガスモデル

従来のブロックチェーンでは、ユーザーが毎回のトランザクションでガス代を支払う必要がありました。これは新規ユーザーの大きな障壁となっていましたが、ICPではこの問題を巧妙に解決しています。

ICPの解決策:

  • dapps開発者が計算資源となる「cycle」を事前購入

  • エンドユーザーは手数料不要

  • Web2.0のような滑らかなUX実現

この仕組みにより、開発者は計算コストを予測しやすく、ユーザーは仮想通貨の知識がなくてもサービスを利用できます。

3. HTTPアウトコール

ICPの画期的な機能の一つが、スマートコントラクトから直接外部システムと通信できるHTTPアウトコールです。

具体的なメリット:

  • 外部APIと直接連携可能

  • オラクルの必要性を削減

  • リアルタイムデータの取得が容易

これにより、既存のWeb APIとの連携が容易になり、ブロックチェーンの孤立性という大きな課題を解決しています。例えば、天気予報データの取得や株価情報の連携など、外部データを活用した複雑なdappsの開発が可能です。

従来のブロックチェーンとの本質的な違い

1. スマートコントラクトの常時実行性

従来のスマートコントラクトは、トランザクションが発生した時のみ実行される受動的なものでした。一方、ICPのスマートコントラクト(キャニスター)は常にアクティブな状態を維持することができます。

これにより以下のような従来のブロックチェーンでは実現が難しかった機能を実装できます。実質的に、分散化されたバックエンドサーバーとして機能することが可能なのです。

  • 定期的なタスクの自動実行

  • リアルタイムの状態監視

  • Webサーバーとしての機能提供

2. Web標準との互換性

ICPは既存のWebインフラとシームレスに統合できるように設計されています。標準的なHTTPSリクエストに対応しているため、特別なウォレットやブラウザ拡張機能がなくても、通常のWebブラウザから直接アクセスすることができます。
開発者にとってのメリットとしては以下のようなものが上げられるでしょう

  • 既存のWeb開発スキルが活用可能

  • 標準的な開発ツールが使える

  • デプロイが容易

要するに従来のWebアプリケーション開発の知識やツールをそのまま活用でき、Web3.0アプリケーションの開発をより身近なものにしています。


3. 実用的な分散コンピューティング

ICPは完全な分散コンピューティングプラットフォームとして機能します。フロントエンド、バックエンド、データベースすべてを分散環境で運用できるため、従来のような複雑なインフラ管理が不要です。

今後の展望

ICPは、Web3.0時代の新しいインターネットインフラとして期待されています。特に以下の分野での活用が見込まれます:

  • ソーシャルメディアプラットフォーム

  • 分散型ストレージサービス

  • メタバース基盤

  • DeFiアプリケーション

始めるには

ICPの開発を始めるためのステップ:

  1. IC SDKのインストール

  2. Internet Computer Documentationの確認

  3. ICP開発者フォーラムへの参加

ICPは、ブロックチェーン技術の新たな地平を切り開く可能性を秘めています。その革新的な機能により、より自由で分散化されたインターネットの実現に一歩近づいているのです。

次回の記事では開発環境のセットアップなどお役立ち記事も書いていきますので是非見てくださいね!

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