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たなか ひろき
2020年5月2日 23:39
初めに宅間さんが立ち止まったのは、改札を抜け、階段を下りてすぐだった。 目を細め、なにかを確認するように、雲の切れ間に覗く太陽を見上げていた。 私の方はというと、太陽を見上げる宅間さんを見上げていた。「行こうか」とふいに宅間さんが言って、私は「はい」とうなずいた。 歩きだしてからも、私には紡ぐべき言葉がなかった。というか、言葉を探す努力をしていなかった。私たちの周りにあるのは、平