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平家星と源氏星

オリオン座にある二つの一等星、α星ベテルギウスとβ星リゲル

オリオン座のベテルギウスとリゲル

この2つの星の代表的な和名として「平家星」と「源氏星」と言う呼び名を紹介されることがあると思います。
星座八十八夜 #50 星座界の超有名人「オリオン座」 - アストロアーツ

それぞれの星の色
 ベテルギウス=赤い
 リゲル=青白い
から平家と源氏の旗色
 平家=赤旗
 源氏=白旗
と結びつけて
 ベテルギウス=赤い=平家星
 リゲル=青白い=源氏星
と言う説明になるかと思います

壇ノ浦の戦い(1185年) - Utagawa Sadahide (aka Gountei Sadahide, 五雲亭 貞秀), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

ですがこれ、確かさと言う点で疑問符がつきます

多くの書籍でベテルギウス=平家星、リゲル=源氏星とされているのは、岐阜県の一部(揖斐地方)での証言をもとにしています
この証言も1956年ごろのたった一人の調査報告によるものだそうです

揖斐地方では一般的に知られている源平の旗色が逆に伝えられているそうで、「自分達が平家と知られたくないため、あえて反対に伝承されたかもしれない」と言う可能性があるようです
(実際、トカラ列島などでは平家の落人であることを知られたくないため、源氏に縁のある姓を名乗ったという伝承もある等なので、なきにしもあらずといったところでしょうか)

結果、
 揖斐地方では源平の旗色を逆にして伝承していた(平家=白、源氏=赤)
 →逆にした色でベテルギウスとリゲルに当てはめて
  平家星=白=リゲル、源氏星=赤=ベテルギウスとしていた
 →(源平の旗色を逆にしていたことを知らずに)平家星と源氏星の名前を
  聞き、平家星=赤旗=ベテルギウス、源氏星=白旗=リゲルと広まった
といったところでしょうか

一地方の伝承がこれほどまで広がったのは、渋谷にあった天文博物館五島プラネタリウムで紹介されたことが大きいと言われています。
おそらく「岐阜の方言」であることも併せて紹介されていたと思いますが、いつしかその部分が欠落して和名だけが広がっていったのだろうと思います。

オリオン座のベテルギウス(源氏星)とリゲル(平家星)

どちらにしろ平家星と源氏星の和名は広く日本全体で言われていたものではないようですし、上記のような経緯もあるので紹介する際はこれらの情報も併せて紹介するのがベストと考えます
和名についてはどこで言われたいたかが非常に重要ですので、それはしっかりと確認し紹介するようにお願いいたします

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さんたさん@北の大地の天文指導員
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