2,3等星で星空案内・冬(その4)
普段、私が移動天文台などで観望会をしている場所は市街地の学校のグラウンドや公園の広場、児童会館などの駐車場になります。
そこで見える星はせいぜい3等星ぐらいまででしょうか。
決して星のよく見えるところではありません。
1等星(よりも明るい星)は全部で21個ありますが、2等星だと67、3等星だと190個あるそうです(国立科学博物館-宇宙の質問箱-星座編 より)
私の移動天文台のモットーが「話の幅は広く、そしてちょっと深く、だけどマニアに走らない」なのですが、思えば2,3等星の名前は10も知らないんじゃないかと思います。
今回は少しは「天文指導員らしさ」を出すために1等星以外の「ちょっと暗いけど市街地でも見える星」について星空案内風にまとめていこうとおもいます。
(紹介している星空は1月1日22時、2月1日20時、3月1日18時ごろの北海道札幌市で見えるイメージになります。)
2,3等星で星空案内・冬(その3)はこちら
北の空では天高く輝いていたカシオペヤ座がやや西に傾き、代わりに北東の空で北斗七星が立ち上がってきています。
こぐま座のポラリスやケフェウス座のアルデミランなど、星空案内・秋で紹介した星々は北天を周極しています。
季節や時間を変えて高さや方角の違いを比べてみてはいかがでしょうか。
ドゥーべ、メラク、フェクダ、メグレズ、アリオト、ミザール、アルカイド
春になると北東の空に上がってくる北斗七星
星座ではなくおおぐま座の一部になりますが、北海道では地平線下に沈むことなく一年中見えています。
それでもやはり冬の終わりから春先にかけて北東の空に登ってくると目立つ星並びです。
その北斗七星ですが柄杓の先から末端にかけて7つの星が順にα星、β星、γ星となっていて明るさの順になっていません。
柄杓の先から順にα星ドゥーベ(Dubhe)(1.8等級)、β星メラク(Merak)(2.4等級)、γ星フェクダ(Phecda)(2.4等級)、δ星メグレズ(Megrez)(3.3等級)、ε星アリオト(Alioth)(1.8等級)、ζ星ミザール(Mizar)(2.3等級)、η星アルカイド(Alkaid)(1.9等級)になります。
ドゥーベはアラビア語で「熊」を意味するアル=ダブ(al-dubb)に由来するとされます。
メラクはアラビア語で「大熊の腰」を意味するマラーク=アル=ダッブ・アル=アクバル(marāqq al-dubb al-akbar)に由来するとされます。
フェクダはアラビア語で「大熊の腿」を意味するファヒド=アル=ダッブ・アル=アクバル(fakhidh al-dubb al-akbar)に由来するとされます。
メグレズはアラビア語で「大熊の(尾の)根元」を意味するマグリズ=アル=ダッブ・アル=アクバル(maghriz al-dubb al-akbar)に由来するとされます。
アリオトはアラビア語で「尾」を意味するアル=アユク(al-ayyūq)に由来するとされます。
ミザールはアラビア語で「腰ぬの」を意味するアル=ミザル(al-mīzar)に由来するとされます。元々は「足の付け根」を意味するアル=ミラク(al-mīraq)という言葉がおおぐま座β星に使われていたのですが、中世ルネッサンス期に綴を変えて誤ってζ星に使われたようです。
アルカイドはアラビア語で「先頭」を意味するアル=カーイド(al-qāʾid)に由来するとされます。別名ベネトナシュ(Benetnasch)とも呼ばれますが、AIUによって定められた正式名称はアルカイドになります。
アラビア由来の星の名前ばかりですが、いずれも熊に由来しています。
「アラビアに熊」というとあまり印象がありませんが、古代エジプトの宰相の墓にはシリア人が貢物として連れてきた熊(シリアグマ)の姿が描かれいます。
シリアグマは日本のヒグマよりは小型でヨーロッパヒグマの仲間と考えられているようですが、聖書にも登場しています。
北アフリカのアトラス山脈とギリシャ北部でもヨーロッパヒグマの生息は確認されているので、全く熊の姿を知らなかった、ということはなさそうです。