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星空観望会で曇ったら(星座神話・夏)

市街地での観望会(移動天文台)を考えると、見える恒星は3等星ぐらいまでかと思います。

8月1日20時ごろの空(Stellariumで表示)

仮に2.5等星まで(大気による減衰あり)として、夏の移動天文台(8月1日20時)を想定すると、視界が開けていれば見えている星は

1等星
 ・アークトゥルス(うしかい座)
 ・スピカ(おとめ座)
 ・ベガ(こと座)
 ・デネブ(はくちょう座)
 ・アルタイル(わし座)
 ・アンタレス(さそり座)

2等星
 ・ドゥベー(おおぐま座)
 ・アリオト(おおぐま座)
 ・ミザール(おおぐま座)
 ・アルカイド(おおぐま座)
 ・ポラリス(こぐま座)
 ・コカブ(こぐま座)
 ・アルフェッカ(かんむり座)
 ・サドル(はくちょう座)
 ・エルタニン(りゅう座)
 ・ラスアルハゲ(へびつかい座)
 ・シャウラ(さそり座)

でしょうか(星図上でどれがどれか分かります?)

このうち、話のメインになりそうなのは
 ・うしかい座
 ・おとめ座
 ・おおぐま座
 ・こぐま座
 ・かんむり座
 ・へびつかい座
 ・こと座
 ・わし座
 ・はくちょう座
 ・さそり座

ほとんど見えていないですが
 ・てんびん座
 ・いて座
 ・ヘルクレス座
 ・いるか座
 ・や座

といったところでしょうか。

※注意※
星座神話については多くの場合、複数のお話が伝わっています。
本の書かれた時期やターゲットとする年齢層などにより、細かい内容やニュアンス、最新の研究結果と異なることが多いため「あくまで一つの紹介例」としてご覧ください。

うしかい座

うしかい座は「正直、正体がわかっていません」
「天を支えるアトラス」や「カリストとゼウスの間に生まれたアルカス」、「ディオニュソス(バッコス)からブドウ酒の製法を教わったイカリオス」などはっきりしません。
なお、星座絵ですと隣のりょうけん座と結び付けられて描かれていますが、ギリシャ神話では全く関係がありません。一等星アークトゥルスが「熊を護る者」というギリシャ語に由来するため、熊を番するために連れた2匹の猟犬として描かれたのかもしれません(りょうけん座が作られたのは17世紀でプトレマイオスはおおぐま座の一部としていました)。

私は(アルカスの話はこぐま座に持っていき)「天を支えるアトラス」の話をよくするので、そちらを紹介しましょう。
アトラスはギリシャの先住神である巨人族の一人でしたが、大神ゼウスらオリンポスの神々が侵入してきたことでこれと争います。長きにわたって争いますが結局は敗れてしまい、アトラスら巨人族は地下に閉じ込められてしまいます。
しかしアトラスはその大きな体とおとなしい性格に目をつけられ、生涯、天を支える役目につかされます。生きながら重い天を支えるアトラスは勇者ペルセウスに頼みメドゥサの首を見せてもらい、石に姿を変えてもらい苦しみから逃れたと伝えられ、その姿が北アフリカにあるアトラス山脈であり、アトラス山脈から見える海がアトランティック・オーシャン(大西洋)とされます。

おとめ座

おとめ座も「正直、正体がわかっていません」
「豊穣の女神デーメーデール」か「正義の女神アストラエアー」、「デーメーテールの娘ペルセポネー」などはっきりしません。

私は一等星スピカとからめた「豊穣の女神デーメーデール」の話をよくするので、そちらを紹介しましょう(星座絵を見ると一等星スピカが輝く位置に何かを持っている様子が描かれています。これは麦の穂でギリシャ語名で穀物の「穂先」を意味します)。
デーメーテールの娘ペルセポネーが友達のニンフ(妖精)たちとシシリア島の草原で花を摘んでいたところ、冥界の王ハーデースに拐われてしまいます。
それを知ったデーメーデールは絶望のあまり嘆き悲しみ閉じこもってしまい姿を表さなくなります。すると春が来ても大地の草花は芽を出さず、草木は枯れてしまいました。
これに困った大神ゼウスはハーデースにペルセポネーを母の元に返すように命じます。しかし冥界で生活の中で冥界のザクロを4つ食べていたペルセポネーは、一年のうち4ヶ月だけ冥界に住むこととなりました。
デーメーデールは娘が冥界にいる4ヶ月間は閉じこもってしまうため、草木が全く育たない冬が来るようになった、というお話です。

おおぐま座・こぐま座

おおぐま座とこぐま座の星座神話は一つの物語で紹介することが多いです。

おおぐまの正体はアルカディア王リュカオンの娘カリストになります。アルテミスの従者として狩りに明け暮れる生活をしていたカリストは、ある日、木陰で休んでいるところを大神ゼウスに気に入られ、やがて男の子アルカスを授かります。
これを妬んだゼウスの妻ヘラ(ヘーラー)はカリストを熊の姿に変え森の中へ追いやってしまいます(処女の誓いを破られたことに怒ったアルテミスが熊に変えたという話もあります)。
それから十数年ののち、カリストは森の中で成長した息子アルカスに出会います。
森の中で熊に出会ったアルカスは驚きますが、母カリストは息子であることに気づきます。会えた嬉しさのあまり抱きしめようと近づきますが、熊が母であることを知らないアルカスは後退りし、槍で突こうとします。
この様子を見ていたゼウスはアルカスに母殺しの大罪を犯させまいと、アルカスも熊に変え天上に上げて、母カリストをおおぐま座に、息子アルカスをこぐま座(うしかい座とした話もあります)にしました。

この時、ゼウスが熊の尻尾を持って天に放り投げたため、おおぐま座とこぐま座の尻尾は長い、という説明がされることもあります。

かんむり座

かんむり座の冠は、王女アリアドネの冠であるとされています。
クレタ島には怪獣ミノタウロスがいて、毎年7人ずつの美しい少年と少女が生贄に捧げられていました。英雄テセウスが生贄に混じって潜入し、怪獣を退治します。この時、クレタ王ミノスの娘アリアドネがテセウスの脱出を手助けし、2人は島を脱出します。
ところがテセウスは立ち寄ったナクソス島にアリアドネを置き去りにしてしまいます。愛するテセウスに置いて行かれたアリアドネを島を支配していた酒神ディオニュソス(バッコス)が妃として迎え、その証として七つの宝石をちりばめた冠を送ります。
のちにアリアドネが亡くなるとディオニュソスはその冠を天に上げ、星座の中に飾ったのがかんむり座の星々なのです。

へびつかい座

へびつかい座は太陽の神アポロンの息子で医者のアスクレピオスの姿とされます。
アポロンは嘘つきカラスの話を信じて妻コロニスを殺してしまいますが、コロニスが身篭っていたアスクレピオスは無事に生まれ、ケンタウロス族の賢者ケイロンに預けます。
ケイロンのもとで医術を学んだアスクレピオスは、蛇が薬草を使って死んだ仲間の蛇を生き返らせるのを見て、死者をも蘇らせる術を知ります。
アスクレピオスの術は冥神ハーデースの怒りを買い、ハーデースに頼まれた大神ゼウスは雷撃を打ってアスクレピオスを家ごと撃ち殺してしまいます。
息子を殺されたアポロンは激怒しますが、ゼウスに頼んで星座にしてもらいます。
へびつかい座が蛇(へび座)と共に描かれているのは、アスクレピオスが蛇から死者を蘇らせる方法を知ったからとも、蛇は脱皮を繰り返すため再生の象徴だからとも言われています。

こと座

こと座の星座神話は、多くのギリシャ神話の中でも人気のあるお話かもしれません。
こと座の「琴」は発明の神ヘルメスが発明し、アポロンが譲り受けて弾いたものになります。アポロンはこの琴を息子のオルペウス(オルフェウス)に譲り、オルペウスは素晴らしいことの名手となります。
やがてオルペウスはエウリュディケと結婚しますが、新婚早々エウリュディケは毒蛇に噛まれて死んでしまいます。
悲しんだオルペウスは冥神ハーデースのところに行き、琴を弾きながら妻を地上に戻してくれるように頼みます。ハーデースはオルペウスの弾く琴の音色が美しいのでこれを許可しますが、地上に戻る途中、決して振り返ってはならないという条件をつけました。
帰る途中、あと少しというところでオルペウスはエウリュディケが後ろをついてきているか不安になり、思わず後ろを振り向いてしまいます。
すると叫び声とともにエウリュディケは冥界に連れ戻されてしまいます。
悲しみにくれたオルペウスは川に身を投げて命を経ってしまいます(酒神ディオニュソス(バッコス)の祭りで泥酔した女たちに殺され、川に投げられたという話もあります)。
オルペウスの琴はそのまま川を流れていたが、大神ゼウスが拾い、その主人の楽才を惜しんで星座としました。

わし座

わし座の星座絵を見ると、少年を連れた鷲の姿で描かれていることがあると思います。
この少年はトロイアの王子ガニュメデスで、とても美しい少年でした。大神ゼウスはその姿を見て、神々の宴で給仕をさせるために化けて天に連れ去ってしまいます。
この時にゼウスが変身した鷲の姿(またはゼウスが使わした鷲)とされます。

またかつてわし座の下にはアンティノウス座という星座がありました。アンティノウスはローマ皇帝ハドリアヌスの愛人として寵愛を受けた男性で若くしてナイル川で溺死しています。
わし座の下に描かれたアンティノウスが、いつしか鷲にさらわれるガニュメデスの姿になった、という研究もあるようです。

はくちょう座

ギリシア神話ではいくつかのお話が伝わっています。
その中でも最も多く話されるのは「大神ゼウスが白鳥に化けた姿」でしょうか。

大神ゼウスはスパルタの王テュンダレオスの妃レダに恋をします。ゼウスは愛の女神アプロディテに助力を求め、自らは白鳥に化け、同じくアプロディテが化けた鷲に追われる形でレダの膝下に逃げ込みます。
白鳥(ゼウス)が去った後、レダは2つの卵を産み落とし、一つからはふたご座の兄弟カストルとポリュデウケスが、もう一つからはヘレネとクリュタイムネストラの姉妹が生まれました。
この時に化けたゼウスの姿がはくちょう座とされます。

他にも「エリダヌス川に落ちた友人を探すキュクノス」や「琴の天才オルペウス(こと座)」などのお話があります。

さそり座

ギリシャ神話では、英雄オリオンをその毒針で刺殺したサソリとなっています。
オリオンは日頃から『この棍棒にかかればどんな獣だって倒すことができる』と豪語していました。この発言に怒った女神ヘラ(ガイアという話もある)はサソリを遣わして毒針で殺させてしまいます。
この功績でサソリは天にあげられ星座となりました。
また、オリオンの方もオリオンに好意を寄せる月の女神アルテミスの願いによって星座となりますが、今でもサソリを恐れ、さそり座が東から上がってくると西の地平線下に隠れてしまいます。

てんびん座

黄道十二星座の中で唯一「道具」の星座です。
隣にあるおとめ座を「正義の女神アストラエアー」としてみた時に、アストラエアーが善悪をはかるために持っている天秤とされます。
ですので、てんびん座そのものについての神話はありません。

いて座

ギリシャ神話では上半身が人、下半身が馬のケンタウロス族が登場します。
このケンタウロス族は南半球で見やすいケンタウルス座になっていますが、そのケンタウロス族の賢者ケイロン(へびつかい座でも登場)がいて座になります。
ケイロンは粗野で乱暴者と言われるケンタウロス族の中で最も賢い人物で、音楽や医術、狩りなどに優れギリシャの若い英雄を次々と教育していました。例えばヘラクレス(ヘルクレス座)とカストル(ふたご座)、トロヤ戦争の英雄アキレウスには武術を、アスクレピオス(へびつかい座)には医術を、アルゴ船の探検で活躍したイアソンの育ての親となった、といった具合です。
ある日、他のケンタウロス族達が教子のヘラクレスと争って逃げてきました。ケイロンの周りに集まっていると、ヘラクレスの放った矢がケイロンに突き刺さってしまいます。
矢には猛毒が塗ってありましたが、不死身のケイロンは死ぬことができません。毒と傷の痛みに苦しむケイロンは、不死の身体をプロメテウスに譲り、やっと死ぬことができました。
大神ゼウスはケイロンの死を惜しみ、天にあげて星座としました。

ヘルクレス座

ヘルクレス座のモデルとなったのは、ギリシア神話の英雄ヘラクレスです。
ヘルクヘラクレスは大神ゼウスが、ペルセウスとアンドロメダの娘アルクメーネとの間にもうけた子ですが、例によってゼウスの妻ヘラ(ヘーラー)に疎まれてしまいます。
勇者でありながら、ヘラの呪いが付きまとい、ある日気が狂うと妻を殺し三人の子を火の中に投げ込んでしまいます。正気に戻ったヘラクレスはその罪を償うためミュケーナイ王エウリュステウスに仕え、12の冒険(苦行)に赴きます。
冒険を成し遂げた後、ヘラクレスは神となり星座の仲間入りをしました。

このとき成し遂げたヘラクレスの12の冒険は以下になります。

  1. ネメアのライオン退治(しし座)

  2. レルネのヒュドラ退治(うみへび座)

  3. ケリュネイアの魔の鹿の捕獲

  4. エリュマントス山のイノシシの捕獲

  5. アウゲイアスの家畜小屋掃除

  6. ステュムパリデス沼地の怪鳥の退治

  7. クレタ島の牡牛の捕獲

  8. ディオメデスの人食い馬の退治

  9. ヒッポリュテの帯の入手

  10. ゲリュオンとの戦い

  11. 黄金のリンゴの入手(りゅう座)

  12. 番犬ケルベロスの捕獲

いるか座

主に2つの神話が伝わっています。
一つは、海神ポセイドンの妻になることを拒んで逃げたアムピトリテを探し出して連れ戻ったイルカであるというお話。
もう一つは、詩人アリオンが音楽会から故郷に帰る際に賞金に目がくらんだ船員がアリオンを殺そうとします。そのとき、アリオンが弾いた琴の音でイルカが集まってきます。アリオンはそのまま海に身を投げますが集まったイルカに助けられ無事に故郷に帰るというお話です。

や座

古来から多くの地域で矢として認識された星座です。そのせいか、伝わっている話も多く、「アポロンがキュクロプス(サイクロプス)」を撃ち殺した矢」、「毎日鷲に肝臓をついばまれているプロメテウスを見たヘラクレスが、鷲を殺した矢」、「ゼウスをガニュメデスに夢中にさせた、愛の神エロスの矢(いわゆるキューピッドの矢)」などです。

最も人気のある話は、やはり「エロスの矢」でしょう。
エロスは軍神アレスと愛の女神アフロディーテの子であるとされ、黄金で出来た矢に射られた者は激しい恋心を抱き、で出来た矢に射られた者はどんな恋もいっぺんにさめてしまうというものでした。
さて、夜空にある矢は、どちらの矢なのでしょうか?

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さんたさん@北の大地の天文指導員
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