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きらきら(エッセイ)

 (2024/10/25)
 
『きらきら』というオノマトペは、我が家では私のせいでネガティブな共通言語となっている。意味合いとしては、体調をこれから崩す予定です、というものになる。
レンズフレアや歯車に似た形状のそれは、偏頭痛の前駆症状としてあらわれる、閃輝暗点というものだ。

 私の場合だと、その閃輝暗点があらわれるよりも先に、視野狭窄に近い現象が起こる。
人の顔が認識しづらい、メガネをしても焦点が合わない。ん?なんだこれ、と思ってしばらくすると、視界の右下にうにょうにょと細長いアメーバみたいなのが見えるようになる。
そしてそこからアメーバが半円状にどんどん大きくなり、視界の半分を覆うようになる。

厄介なのがコレ、目をつぶっても見える。明るいところだと眼球の圧迫感が増し、白とかメイドの高い色が目に入ると同様にキツイ。
その後に、左側の側頭部や眼球、鼻骨や頬骨にかけて圧迫されているような痛みを感じ、二日にかけてしばらく頭が痛む。二日目は体を動かせるが、頭を前側に下げると痛い。

 母に『きらきら』の話をしたのは、随分前のことだ。
コロナ禍に入って四月末からひと月ほど、当時の職場も一時休業を余儀なくされ、まぁお給料のいくらか会社が負担してくれるらしいとの事だったので安心して自堕落に過ごしていた。
その頃、頻繁に偏頭痛に襲われるようになったのだ。
クセになったのか、その後しばらく、ひと月に一回は症状が出るようになり、困った故に説明した……のだと思う。実はあまり覚えていない。
職場復帰してからも、偏頭痛が仕事中に出て早退させてもらうことが何度かあったから。あとは、二次創作で使う情報として偏頭痛の知識があったから。
ネットで検索した閃輝暗点のイメージ画像を用いて説明したのだろう、と推測するが、如何せん頭の痛い時は色んなことに必死で心の余裕もないので思い出せない。

『きらきら』はとても厄介だ。
光をいつも以上に眩しく感じ、眼球に圧迫感を感じる。
視界の半分ほどを覆ってしまうので、人の顔や数字などの視覚情報を奪われてしまう。仕事中なら御会計の時のPOSレジは、眩しいわ数字が見えないわで最悪だ。
しかも酷い時は吐き気を伴う。実際に吐く訳ではなくて、心拍数が上がって空えづきが出る。
座位で、体を丸く折りたたんでしゃがんでいると楽になるので、時たまトイレに逃げ込んだりしていた。

 頭痛よりも、『きらきら』が見える時の何も出来なくなる感覚がしんどい。
なので、今『キラキラ』が出ていますよと母に告げると、ある程度そっとしておいてくれる。
いつの間にか兄にも伝わる共通言語になり、昨日たこ焼きを作ってる最中にそうなった時も、手伝わなくなったことを咎められなかった。

 たまに私がきらきらしてるね、というと体調を崩したのかと心配させてしまうので、正しい意味のオノマトペとして使えなくしてしまい申し訳ない気持ちになる。
そもそもは、光り輝く綺麗なもののことを表す言葉なのに、とても勿体ない。
でも、親兄弟がその時だけは気遣ってくれるのを、こっそり嬉しくも思っている私なのである。

 余談だが、偏頭痛の時はほぼ必ずと言っていいほど腸の調子も崩してしまうので、アレじゃん。上は洪水下は大火事……風呂!みたいな大惨事になります。本当にやめて欲しい。

そろそろちゃんと頭痛外来受診した方がいい?と悩んで数年が経ちます。
ばかやろー。

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