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小説「対抗運動」第3章4 風雨をついてのデモ

舞ちゃん「おいさん、きのう、とうとうアメリカ軍はバクダッドに攻め込んだんやね。どんどん戦争は進むね。」

おいさん「デモの時においさんも聞いたよ。・・・雨も風も強かったけど、大勢集まった。ワールド・ピース・ナウは1万8000人と発表しとった。落胆しとった人も多かったね。舞ちゃんが言う通り、どんどん戦争は進むけんね。おいさんは大きなポット背中にしょって行ったよ。寒かったけんね。おにぎりにカンパしてくれた人たちに無農薬番茶飲ませたろ思てね。阿部さんは風邪ひいとったけど、おいしいゆでたまごいっぱい持ってきてくれたよ。」

舞ちゃん「雨の中でも楽隊の人は演奏したん?」

おいさん「宮川さんら、やりよったよ。しかし、ボイコットフラッグは掲げられんかった。もっと有効なことやらなあかんね。しっかりした経済行為やないとあかん。今のままの経済やったら戦争や環境破壊は止まらんのやから、ちょっとずつでも仕組みが変わっていくような取引を考えもってやらんとね。今度のおにぎりのように、ええ物がどんどん流通するようにならんとね。あと、経済のややこしいからくりにやられてしまわんように、市民通貨Cを広めるのにもっと知恵を出さんとね。」

舞ちゃん「おいさんは経済が一番の原因やと思うん?」

おいさん「そうじゃね、国家の問題やナショナリズムの問題があるじゃろけど、すべて経済を通して現れとると思うよ。国家の問題は、軍隊や官僚の強大な力を国民がコントロールできとるんじゃろうか、というんが一番大きいね。危機にあるときは、強大であればあるほど立派な国じゃと錯覚するけんね。税金でまかなわれとるんじゃけんね。国民にとっては必要最小限が一番賢いと思うけど、軍隊や官僚や政治家はそう思わんじゃろうね。いずれにしても、どのくらい費用がかかっとるか、数字で表れるよ。しかしナショナリズムの問題はむつかしいね。いま、アメリカの人は、7割がイラク攻撃を支持しとるね。どこまで攻め込んでも、攻撃の口実やった大量破壊兵器は出てこんし、生物化学兵器が使われとりもせんのやけど、この数字は攻撃前から変わらんのじゃそうな。まったく盲目になってしまうんやね。湯水のようにお金を使うとるけど、全部自分らの税金じゃけんね。いつまでも続くわけがないけど、高くつくね。一方では、戦争後の復興の責任者に兵器産業の社長が任命されるようじゃが、おかしいと思わんのじゃね。攻め込んで分捕った石油設備の保全や管理の入札では、副大統領の関係しとる会社が当然のように我が物顔で振るもうとるしね。」

舞ちゃん「どしてそうなるんやろか?」

おいさん「舞ちゃん、経済いうんは、つきつめたら交換じゃと思うんじゃ。そして、他人同士が何かを交換することには、奇妙な問題があるんじゃ。100円持っとる方が100円のパンを売りたがっとる人より優位になるいうんはその一つじゃが、政府が税金を集めて、予算を組んで使ういうんも、実は交換の一つじゃね。いつまでも税金を取り続けられるようにあんまり無茶な予算の使い方はせんじゃろうけど、使い方を決めるのに国民が主導権を持っているわけではない。ただ受身なだけじゃね。あと、もう一つ交換があるんじゃ。家族の中では、売り買いはせんよね。あと、お金を集めて、誰かが使い道を決めるということもせん。稼げる者が稼いできて、家族が使うとるね。けど、交換は、あるよ。親が言うことを聞け、と言える立場になるし、子供は恩を感じざるをえんしね。しかし、そうは考えずに、家族やないか、一体やないか、仲ようにやろうや、となるね。けど、家族以外の者に対しては白い目を向けるようになる。町内会や村落共同体もそうやね。助け合うとるけど、言うこと聞かなんだら、村八分やね。戦争の時は、ナショナリズムやね。国内には一体感が生まれる。交戦国に対しては猛烈に白い目を向けるようになる。」

舞ちゃん「おいさん、頭がぐるぐるしてくるよ。」

おいさん「おう、ほうか、要はね、交換にともなう危うさを、人を支配するために利用するな、いうことじゃ。結構、むつかしいよ。みな平等がええ言うけんど、自分だけ少しでも有利になろうという誘惑は強いけんね。一にも二にも情報公開が役に立つし大事じゃ。あと、仕組みじゃね。どうやって取引するか、どうやって利益を還元するか、取り分はどのくらいにするか、ものごとの決定はどうするか。知恵がいっぱいいるんじゃ。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年4月8日

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