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小説「対抗運動」第2章5 情報公開

舞ちゃん「おいさん、なんで日本の政府はイラク攻撃に反対せんの? みんなが賛成しとると思うとるんじゃろか・・・」

おいさん「舞ちゃん、小泉総理はこんな風に言うたよ、イラク攻撃に反対する世論が高まってきとるんは知っとるけど、必ずしもその時々の世論に従うんが正しいとは限らんのやと。大勢の人が反対なんは知っとるんよ。ほいでも無視できると考えとるんじゃ。どうしてじゃと思う?」

舞ちゃん「大企業が支えとるから?」

おいさん「経団連の奥田会長は、全面的にバックアップしとるね。経団連の主要な企業は支えとるんじゃね。奥田さんはトヨタの会長もしとるけん、トヨタは特にそうなんじゃろうね。けど、すべての大企業というわけではない。TIJ(日本ツーリズム産業団体連合会)の堤会長は反対しとるね。旅行会社の多くは何とか戦争を避けて欲しんじゃろね。堤会長いうたら、アイスホッケーで有名なコクドの会長じゃ。プロ野球の西部ライオンズのオーナーでもある。プロ野球といえば、読売ジャイアンツの読売新聞は、反対に12日の一面で提言しとったね、アメリカが軍事行動したら支持しよう、と。両方とも、なかなか勇気がある。意見をはっきり表明するいうんは大事なことじゃ。ソニーもヨーロッパで反戦広告を流したみたいじゃよ。プレステのCMじゃそうな。何で日本ではやらんのかいね。」

舞ちゃん「小泉さんは世論の人気で総理大臣になれたのにね。なる前となってからでは全然ちがうんやね。どうも政治の民主主義はおかしいわ。やっぱり買う投票やないとあかんね、ボイコットやね。イラク攻撃に反対しとるみんながこの投票やりだしたら、小泉さんは選挙の時まで困らんけど、支えとる企業はそうはいかん。トヨタや読売新聞は大丈夫なんかいね。旅行会社は応援せんといかんね。ソニーも日本でもそのCM流したらええのに。」

おいさん「舞ちゃん、日本の総理大臣は国会議員の投票で選ばれるじゃろ。国会議員は普通選挙で選ばれる。今、選挙は無記名投票じゃね。秘密投票じゃ。誰が、誰に投票したかわからせん。ほじゃから自由に好きな人の名前を書けるんじゃけど、恐ろしいこともあるんよ。誰に投票したかわからせん、いうんは証拠を消してしまうことじゃ。選ばれた者は誰にえらばれたかわからせんけん、選ばれたらしめたもんじゃ。拘束がのうなってしまう。ほじゃけん、選んだ人たちの言う事を聞かいでも済んでしまうようになるんじゃね。国会議員がそうじゃから、その議員に選ばれた総理大臣には全然国民の拘束がないようなもんじゃ。小泉さんみたいに、本当はそうじゃないのに、まるで皆を代表しとるかのように振舞う事ができだすんじゃね。これは、アメリカの大統領も同じことじゃけどね。おいさんが政治の民主主義をうさんくさい思うんはこういうカラクリがあるからじゃ。普通選挙いうんは、こういうカラクリを隠してしまう。皆一票で平等じゃ、候補者の誰に投票してもええけん自由じゃというけど、投票の時だけじゃからね。普段の力関係や有利、不利の立場がその時だけないことにされてしまう。けど、会社の中で民主主義なんかありゃせんからね。絶対、経営者が社員に選挙で選ばれたりはせん。国の官僚が選挙で選ばれたりすることもない。」

舞ちゃん「買う投票じゃったら企業は無視できんね。戦争を支持する政府をいつまでも支えることは覚悟がいるね。」

おいさん「舞ちゃん、おいさんはこうも思んよ。買う投票が当たり前のことになったら、会社の中でも民主主義にした方が良うなる、と。買う投票は、安全に役立つ物、生活の向上に役立つ物を選ぶよね。情報さえ公開されたら必ずそうなる。また、戦争を支持する企業や環境破壊につながる企業、従業員や取引先を痛めつけるような企業やとわかったら、そこからは買わんようになる。一時はごまかせても、いつまでも隠しておくわけにはいかんやろ。そういう流れに対応するためには、会社でも、官僚でも、民主主義にしたほうがうまいこといくけんね。」

舞ちゃん「なんで?」

おいさん「買う投票に支持されよう思たら秘密主義をやめんとね。情報公開が一番支持される。そこで有能な人を責任あるポストにつけるには、それぞれの現場から経験によって選んでいくより方法がないよ。」

舞ちゃん「・・・・・」

おいさん「会社じゃったらいろんな持ち場にわかれとるね。それぞれの持ち場で代表を選挙で選んだらええんじゃがね。たとえば課長がそうやって選ばれる。そしたら次ぎに部長は課長に選ばれる、と。公務員もそうやって選挙で選ぶんじゃがね。下から、現場から選んでいく。」

舞ちゃん「おいさん、間違うて能力のない人が選ばれたら困らせん?あと、グループつくって自分らの都合のええ人ばっかり選ぶとかせんやろか?」

おいさん「能力のない人選んだら自分らが困るけん、次ぎからは選ばせんよ。あと、ズルせんように、くじ引きもいっしょにするんじゃがね。」

舞ちゃん「くじびき?」

おいさん「舞ちゃん、誰でも理性も持っとるけど、権力欲もあるけんね。自分だけ良かったらええとはっきり言うひとは少ないけんど、みんなも良うなって欲しい、けど人よりも自分の方がもっとええようになりたい、いうんはどうしようもない本能みたいなもんじゃろ。秘密主義になるんはそこからじゃろね。ほやから知恵をつかうんじゃ。選挙の時に、3人ぐらい選ぶんよ。そして、その3人がくじ引きする。たとえば、くじに当たった人が課長で、外れた二人は副課長じゃね。当たった人も強引に自分に都合がええことだけはできんよ。秘密主義もできん。次は外れるかもわからんけんね。外れた人もくじやけん、こだわりなく課長に協力できる。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年3月18日

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