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最低賃金、人口流出、高卒就職問題について考える(1)

 高卒就職問題研究のtransactorlabです。問題改善のため調査研究と発信を続けております。今回は地域別最低賃金、地方における若者の人口流出問題、そして高卒就職問題についての考えを述べたいと思います。

人口減少率ランキング

 2020年度10月国勢調査結果からこんな表を作ってみました。2015年度調査時からの増減です。このサイトではもっと細かい自治体単位の統計も見ることができますので興味ある方はどうぞ。

減少率 (単位:%)

 全国ほとんどのところは減少しており、増加したのは40位の滋賀県(+0.05%)以下8都県だけです。日本全体の人口の減少具合を示すデータのひとつであります。

 人口の減少は一人当たりの生産および消費の大幅な向上がない限り経済規模の縮小を招きます。人手だけでなく国や自治体の税収が減っていき、社会全体の人の暮らしを支える力が小さくなっていく。つまり国力の低下を意味し、そしてそれは既に始まっています。

 どなたがおっしゃられたのか分からないのですが、「お金とはサービスの価値(質×量)を表す記号である」のだそうです。なんと分かりやすい説明でしょうか。10万円のお金を持っているということは、10万円分のサービスを受ける(買う)権利を持っているということで、逆に10万円の借金があるということは、いつかその分だけ(利子をつけて)サービスを提供しなければならないということ。納得。

 国家のサービス水準維持にかかる経費の不足分は今のところ借金で補っていますが、国と地方の借金の合計は1200兆円を超えています。つまり今の私たちの暮らしは子どもたちに借金を残す形で維持されていると言っても過言ではなく、こんな経営がいつまで続けられるのか、また、続けてよいものか、疑問に思う方は多いことと思います。

 さて、人口減少問題に対して国も地方自治体も様々な対策を計画し、実行してはいます。しかし、なかなか成果が見えない。とくに地方においては若い世代の都会への流出を減らすことが重要な課題になっています。

 人が減るから地域経済がしぼむ。だから地域の景気が上がらない。賃金も上がらない。だから人が出て行く。地域の経済がしぼむから企業誘致も進まない。働き口が少ない。だから人が出て行く。若い人が減る。子どもが生まれない・・・。人口減少率が高いところではどこでも程度の差はあれ、このようなループが続いています。

地域別最低賃金

 次の表は2015年と2020年の地域別最低賃金および増加幅を示しています。2020年の額の低い方から高い方へ、金額が同じ場合は都道府県番号順に並べかえてあります。

 いわずもがなですが、人口減少率が高いところは最低賃金も低く、増加幅も小さい。沖縄県は例外ですね。

最低賃金というワードに対する違和感

 地方の人口減少対策の議論の中で必ずといってよいほど出てくるのが「最低賃金」というワードです。「最低賃金が低いからダメなのだ」とか、「最低賃金を全国一律1000円とか1500円に上げるべきだ」とか、「もう少し上げてほしい」といった文脈でよく使われるのを見かけます。たしかに日本の最低賃金は先進諸国の中でも低く、もっと高くあるべきだと私も思いますが、なんとなく少し短絡的に考えておられる方が多い様な気がして違和感を感じております。

 地域別最低賃金には二つの性質があります。

 一つは、地域経済の観測データを基盤に算出される一種の経済指標のようなものであるということ。よって、大勢の人が「最賃上げろデモ」をやったところで上がる性質のものではないんです。

 もう一つは労働者の生活権を守るための最低ラインとしての役割です。雇用者はその額以下の賃金で働かせてはならないというルール(違反したら罰金!)ですが、そのおかげで日本では「働く=最低限の健康で文化的な生活」が担保されているわけです。現実にどうかはさておき。

 最賃についての不平不満の意見を見ていると、とくに一つ目の「観測データのようなもの」ということへの認識が不足しているのではないか感じることがよくあります。この人は地域経済と自分の行動は関係ないと思っているんじゃないか、という感じ。

最低賃金を上げるには


 最賃額を上げるべきだという点については異論はありません。しかし、みんなで考えなければいけない本当に大事なことは、「どうすれば上がるか」、そして「そのためにあなたは何をするか、しているか」といったところでしょう。で、私が提唱したいのが、「みんなでもう少し地元でお金を使いましょう運動」です。たぶん、デモ行進よりもこっちのほうがよほど効果があると思います。なぜなら最低賃金は地域経済の活況指標みたいなものなのですから。

 ネット通販と地元のお店の値段が1割ぐらいしか違わないのだったら、少し我慢して地元の店で買うようにする。地元では入手できなかったり、値段が倍も違っていたらしょうがないですが、1割とか2割ぐらいだったら、その我慢は回り回って自分に還ってくると考える。
 
 田舎に住んでいて地域経済の持続可能性を求めるのならば、このような発想が必要なのではないでしょうか。要は、いかにして地元で廻るカネの量を増やすか、だと思うのですよ。そういう意味で千葉県木更津市の地域通貨「アクアコイン」はとてもいい取り組みだと思います。

 地元で稼いだ給料、もう少し地元で使うようにしましょう。
 
 すいません。上から目線で。
 こんなことを書いていながら私も先日、父の補聴器の電池をいつも買っている地元のメガネ屋さんからではなく、ネットで買ってしまいました。だって、地元の店だと6個1400円、ネットだと60ヶで2000円なんですもん。
 
 もうちょっと頑張ってくれないかなあ。
 
 そのメガネ屋さんになくなられると困るんだよなあ。

 次回は高卒求人との絡みについて書きます。
 
 ここまでお読みくださり感謝です。


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