高卒就職 社長、その条件では応募があるかどうか・・・
高卒就職問題研究のtransactorlabです。高卒就職問題解消を目指して調査研究と提言を続けております。高卒求人をハローワークに出す直前の時期になりました。求人条件の検討の最終段階に入っておられる事業者の方も多いと思います。ご参考にしていただければ幸いです。
高卒就職問題にもいろいろあります。早期離職率が高いことが長年の主要なテーマとなっていましたが、著しい少子化のために新たな問題が加わってきております。団塊の世代大量退職、少子化、進学率の向上、この3要素が重なって超売り手市場イコール超採用難の時代となっています。新たな問題というのは、こういう時代になっていますので、応募者を集めるためには求人票の給料その他の労働条件を求ぐっと上げないといけないが、そうすると今いる社員全員の給料を調整しなければならず、なかなかそうもいかない。すると激しい採用競争に勝てず若い人材を確保できない。マンパワーの確保が不可欠な職種ではこのようなジレンマを抱える事業者さんが多いと思われます。
下の資料は18歳人口と大学・短大への進学率の推移を表したものです。
18歳人口は平成4年の約204万人をピークに減少が続き、平成26年には120万人を切りました。このグラフにはありませんが、令和2年(2020年)には114.8万人になっています。折れ線は大学と短大への進学率で、これに専門学校を加えるとだいたい25%前後増えますので、就職率は2割を切るぐらいになります。
平成15年と令和2年の就職数を比較してみます。
18歳人口 就職率概算 就職者数
平成15年 148万人 25% 37万人
令和2年 115万人 20% 23万人
20年足らずに間に3分の2以下になってしまっています。
次の資料は2020年現在の日本の人口ピラミッドです。赤い線が100万人です。
(国立社会保障・人口問題研究所 http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/2020.png)
定年退職数は増加し若年層が減少します。進学/就職の割合が大きく変わらないとしても労働市場における若年人材の獲得競争がどんどん厳しくなることは間違いありません。
若い人を採りたい。待遇条件を上げないと取れない。しかし現存の社員の給料も上げないといけないがその余裕はない・・・どうしたらいいのでしょうか?
終身雇用制・年功序列制からジョブ型雇用への転換だとか、賃金体系を抜本的に見直すとか、専門家筋ではいろいろな意見があるようです。人口減少時代に入って以降、社会全体で様々な改革の必要性が叫ばれていますが、まだまだ昭和平成の時代の価値観に縛られて変化は進んでいないようです。私たち教員の世界も同じです。しかし、そろそろ決断しないといけない時が来ていることを認識すべきだと私は思います。そうしないと組織がもたない。社会ももたない。
私はただの高校教員ですので、あまり突っ込んだ意見は差し控えますが、就職支援の現場の人間として言えるのは、
「相場の平均以下の待遇の求人票が選ばれる可能性はほとんどない」
そして
「若者の価値を正しく認め、それに見合う投資をしない組織に未来はない」
ということです。
現在の高卒就職市場のダメなところは、相場が分かる情報が一般に流れておらず、求人事業者と求職者の双方が正しい価値判断が難しいことです。
これは厚労省の責任です。断言します。
さて、次の図は昨年12月から今年2月にかけて高卒求人WEBサービス上で公開されていた求人票9万件余りの分析結果の一部です。
縦軸は年間休日数(単位:日)、横軸は月給(単位:円)、青い点は一枚の求人票を表しています。休日数、給与ともにばらつきが非常に大きいことが分かると思います。そして、グラフの左下「給料が安く休みも少ない」求人に応募者が出ることはまずないということもお分かりいただけでしょう。
このグラフ資料はもともと生徒の就活支援を目的に作成したものですが、作っているうちに求人事業者にとっても大変有益で、結果的に広く社会全体に貢献できると考え、無償で公開しております。下記サイトで全国調査結果をご覧いただけます。参考にしていただければ幸いです。
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