高卒就職支援を通して見える「ひとりの人間の労働者としての価値の変化」
しばらくご無沙汰しておりました。高卒就職問題研究のtransactorlabです。
5月も終盤にさしかかりましたが、高卒就職支援の現場では連日の企業からの訪問がひっきりなしにある中、毎週どこかで合同就職説明会や相談会、ハローワークだったり教育委員会だったりが主催する会議への出席など、とても忙しい日々を過ごしております。
ひと月ほど前、昨年の高卒の求人倍率の最終集計値が発表されました。私の住む地域では3.8倍と、史上最高値を記録したとのことでした。
おそらくどこの地域でも同様の状態だったと思います。わずか10年前は1.5倍程度でしたので、ここ5年ほどの求人の増え方には隔世の感があります。それ以前は、景気の好不況の影響により1.5倍から2倍前後を上下していましたが、ここ数年は3倍程度で高止まりしています。そしてこの状態は当分続くと思われます。超売り手市場がずっと続くでしょう。
この現象の一番の要因は少子化です。高校生の数が圧倒的に少ないのです。前にも書きましたが、今の大学生や高校生世代の人数は私たち昭和世代の半分しかいません。今の18歳の人たち一人あたりの価値は、現在50歳ぐらいの私たち世代の2倍になっているのです。そして、今の中学生や小学生の数はもっと減ります。
しかしですね、高卒就職支援の現場にいて強く思うのは、雇おうとする側の人たちがこの現実に対する認識が非常に薄いことです。少々乱暴ですが、「今どき、そんな待遇で人を採れるわけないでしょ」と言いたくなる求人がとても多いのです。結構な有名大企業からの求人もそうだったりすることも少なくありません。
ここで言う待遇とは、給料や休日数(労働日数や時間数)はもちろん、育成体制の充実度、住宅補助や資格取得補助の質なども含めてです。
単純に言って、求人倍率3倍という労働市場では待遇条件が上位33パーセントに入っていないと応募者獲得の見込みが薄いわけです。現在、高校の就職支援の現場では増えすぎた紙の求人票処理に対応するため、デジタルデータベースサービスを導入するところが増えてきています。この進展により給与や休日数などの単純な数字でのフィルタリングが簡単にできるようになります。ということは、ある一定のライン以下の求人票は目にしてもらうことさえなくなるのです。
まもなく高卒求人の受付が始まります。求人を出される事業者の方々にはどうかこの現実をご理解いただきたいと思います。
翻って、やっぱり今の高卒求人情報取り扱いをもっとオープンに、せめて求人事業者には相場情報が流れるようにするべきなのです。今のルールのままでは誰も幸せにならない。そう思うのであります。