閑話

漫画版あしながおじさんの話

「あしながおじさん」ファンなら、とっくにチェック済みですね?

漫画「Daddy Long Legs」です!

単行本1冊まるごとこの話ではなく、ほかの短編と同時収録なので、長さとしては1冊の半分くらい。かなり簡略化されていますが、そのおかげでテンポよく読み切れます。

この漫画の大変に面白いところは、単なるコミカライズではなく「翻案かつコミカライズ」であるという点です。
舞台は大正時代の日本……と思って私はずっと読んでいたのですが、ついさっき「あ、これ昭和か」と気づきました(理由は後述)。昭和に入ったばかりの頃が舞台です。
大筋は原作そのままで、孤児院育ちの主人公(いつき)が「あしながおじさん」の援助で女学校へ進学することになって…という話。

原作は書簡形式をとった小説なので、当然ですが完全に主人公=ジュディの目線からの物語です。
一方、こちらの「Daddy Long Legs」は、あしながおじさん(千博ぼっちゃん)の目線が入るところが興味深いです。自分が後援することになった子が、たまたま姪と同級生になるとわかって、どんな子だろうとわざわざ見に行ってみたり、予定を合わせて出先で遭遇するように仕向けたり。あらあらおじさまったら裏でこんなことしてたのね~ウフフと、原作の舞台裏を覗くような気持ちになります。

演出上、原作にはない場面がいくつかあって、それらが全然雰囲気を壊すようなものでなく、全体の良い雰囲気に大きく寄与していると感じます。
室生犀星の詩が引用されていたり、飛行船のツェッペリン号を眺める場面があったり(これで話が1929年=昭和4年だということがわかります)という演出は、自然に時代の空気を出していてロマンチックです。

最近あまり読み返していなかったのを、翻訳するにあたってまた引っ張り出して読んでいますが、こうしたビジュアルがあるというのはイメージを広げるのにとても良いヒントになりますね。
私が持っているのは初版で、2006年のものでした。買っておいてくれてありがとう、17年前の自分。

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