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渡蘭した理由 - 30代で留学、移住をした訳-



遅すぎる決断

「遅い!私、5年前に海外の大学院行ったら?って提案したじゃん。」

大学卒業から5年後、28歳の時に留学したいと彼女に告げて返ってきた答えだ。確かに私は日本の美大を卒業する際、彼女の提案を少しも聞き入れなかった。当時は就職して独立した一人前の大人になることが最優先だったし、アーティストになるなんて考えは1ミリもなかった。ましてや、生物学的女性である自分は、男性として、1人の人として生活できるようになるということ以外考えられなかった。正社員として会社に勤めながら、自分のキャリアや将来の生き方を想像したときに、自分が本当に目指したいことや、彼女と生きるのにベストな環境を考えて出した答えが、留学・海外移住だったのだ。
大学卒業当初は、留学費用などの経済的な問題以外に、"普通"であれば考えなくてもいい性別のことに対処しなくてはならない状況だった。そして、それらと折り合いをつけた今だから自分が本当に必要としていることがわかった。いつも他人より時間がかかってしまうことの悔しさと申し訳なさをつらつら彼女に訴えた。
「あなたは人より時間がかかってもいい。大丈夫。行ったほうがいいに決まってるよ留学。」
結局、彼女は一番の応援者として理解してくれた。彼女は誰かにとって最良の選択を提案する事ができる天才だ。とうの昔に、私が本来向かうべき方角がわかっていたのかもしれない。


なぜオランダ?

  1. ガラスを扱う事ができる環境
    元々私はガラスを使った作品を作っていたため、ガラスの制作ができる環境は必須。アーティストとして、セオリー(哲学、思考)を強化したかったので、ガラスの工房がある学校を探した。

  2. 英語で学べる学校
    英語ならまだ頑張れそう。ドイツの大学ではドイツ語ができれば、留学生でも学費が無料という大きなメリットがあるけれど、第3言語での学習は私にはハードルが高すぎる。

  3. 学費がそこまで高くない
    奨学金や助成金をもらえるほどの経歴は無い(と思っていた)ので、貯蓄でやりくりできるのが絶対条件。

  4. 卒業後のビザが取りやすい、滞在しやすい
    日本人であれば比較的簡単にビザが取りやすい国として有名。

  5. ジェンダーに関して寛容である
    同性婚を世界で初めて認めた国。きっとトランスジェンダーに対しても寛容だろうという予想。

以上の5つが、オランダを選んだ主な条件だ。卒業後すぐには日本には帰るつもりはないということや、トランスジェンダーの自分とシスジェンダー女性の彼女が生活するのに、現在の日本よりもオランダの方が偏見など無く住みやすいのではと考えたのも一つの理由だった。

移住してみて

結果から言うと、私はオランダという国に移住して本当に良かった。
もちろん、10代~20代前半のうちに留学することで得られる成長や影響は、30代で得られるそれよりも吸収力やスピード面において格段に差があるだろう。けれど、私はある程度社会の仕組みというものを知った3o代で留学したおかげで、思い切り自分の学びたいことに没頭することができ、それをサポートしてくれる環境を選ぶことができたと思う。そして、自分の意思でオランダに来た移民=マイノリティになったことが私にとって大きな心の安定につながっている。日本にいるときは、自身の意思とは関係なくトランスジェンダー=マイノリティとして生活するストレスは、想像以上に負荷が掛かっていたのだった。
そして、日本での仕事を辞め、私と生活するために移住を決意してくれた彼女は、日本で正社員として生活していたときよりも収入面では不安定だが、生活に対する価値観や大切にしたいことが変わった。とても満足していると言っている、今のところ。

もちろん、家族や日本の友人がいる母国に住むことの安心感はないし、医療面や住宅不足などのストレスなどもある。だからと言って、これらの不安要素が日本に行けばなくなるわけではない。またそれとは別の不安や悩みは尽きない事を考えると、もう少しオランダという地で頑張ってみたい。

留学や移住において質問や相談等ありましたら、お気軽にコメントやいいねを頂けますと幸いです!答えられる質問はお答えしていこうと思います。


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