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オフシーズンの到来


オフシーズンの到来

年内の国内トラックイベントが一段落して本格的なオフシーズンに突入しました。
この季節になると自転車競技は一旦トラックを離れてシクロクロスなど他の種目にチャレンジする人もいれば、来シーズンに向けたトレーニングを開始する人もいるかと思います。Trainer's Houseでは日頃の啓発が功を奏したのか、今年はオフトレ合宿の指導依頼が例年以上に届いています。ありがとうございます。

そんな中良く聞かれるのが「オフはどんな練習をすれば良いのか?」という質問です。高校生や大学生を日頃指導されている指導者の方々に特に良くこの質問を聞かれます。一般的に基礎体力を上げるトレーニングが必要と言うことは認識されているようですが、具体的に何をすれば良いかという事になると"これ"と言い切れないことが多い様です。

基礎体力と一言で言っても内容的には多種多様で、ロードの乗り込みもあれば自転車に乗らずにランニングやサッカーや水泳などの他競技でも良いと思います。
また身体全身の筋力アップを図るトレーニングもこの時期だからこそ追い込みきれるタイミングだと思います。

オフシーズンにするべき事

これをもう少し専門家らしくお話しすると、まず前提として「どんなトレーニングをすれば良いのか」を考えるとき(トレーニングプログラムを作成するとき)は、常にその対象となっている選手の育成年代(年齢・競技歴)と、将来的な目標を勘案した年間(シーズン)スケジュールを作成して、今何をすべきかを考えます。

高校生を対象としたシーズンスケジュールプラン

このスケジュールプランはサンプルなので何処かのチームの為に作成した物では無いのですが、日本の高体連所属選手の年間スケジュールに合わせて作成しているので多くの高校生には当てはまるスケジュールかと思います。

このスケジュールを見て貰うとイメージつきやすいかと思うのですが、フィジカル(筋力・持久力)の強化、スキル(戦術・技術)の強化のバランスが月ごとに変わっていく所を見て貰うと、ターゲットとしているイベントに向け強化のスケジュールが組まれていることが分かると思います。つまりシーズンに入ると大会に向けて競技力を上げる事を最大の目標にしたトレーニングプログラムを作成することになります。それに対してオフシーズンはフィジカル強化の欄に基礎体力強化、競技スキルの欄にストレングス強化期間という別の項目が記載されたりしていてこれだけを見ても意味が分からないですね。

分かりやすいように今Trainer's Houseで取り組んでいる事例を紹介すると、オフシーズンの指導の現場で行う目的は大きく分けて2つになります。
1つはポジションの構築、そしてもう1つはエンデュランス能力の向上です。


ポジションの構築

ここでいうポジション構築とは、自転車のセッティングだけでは無く自転車に対して力を伝える為にどういう身体の使い方をすれば良いのかを理解し、その形(ポジション)を作るためのトレーニング、あるいはそのために必要な補助トレーニングを行うことを指しています。

ポジションを作っていく上でベースとなる考え方のことをバイオメカニクスと呼んでいるのですが、より大きな力を発揮する、あるいは効率的に身体を使う形を模索して行くとき、動作させるる筋肉(筋力)や関節をより詳細に把握しその強化ポイントを抽出して行きます。

いつものことですがわかりずらくてスミマセン。

簡単に言うと、選手が必要とする競技力を発揮するために最善なポジションを考え、その形に近づけるようにトレーニングを行うと言うことです。
こういった取り組みは気がついたときに行えば良いと思われるかもしれませんが、このトレーニングを行う事は一時的に"今のベストなポジション"や"筋肉のバランス"を崩してしまうため、シーズン中には取り組みずらいと言う理由があります。
そのため目標とするイベントから最も遠いこのタイミングで、今後目指している競技力の為に最適なポジションを作るトレーニングを行います。

実際にポジション構築を行う場合まず現状を把握しなくてはならないので、最初に行うのが"動作解析プログラム"です。これについては過去に詳しく説明しているので興味のある方はそちらをご覧ください。

動作解析プログラムを行う事で現状の把握を行ったら、次に以下の手順でポジションを構築して行きます。

① 必要な筋力が備わっているが適正なポジションが作れていない場合
 修正点を確認し修正プログラム(ポジション構築を意識したトレーニング)を実施
② 適性なポジションを構築する為の筋力が不足している場合
 必要な補強運動プログラムを実施するなどして筋バランスを改善その後①に進む
③ ①の場合、若しくは②を経て①に至っても適正なポジションを取れない場合
 適性ポジションを構築する為にハンドル・サドルの位置を見直し
 必要があればリセッティングを施す

この動作解析プログラムを実施する為には専門的な知識が必要となりますので、身近なトレーナーあるいはフィッターにご相談いただくか、"自分で理解して取り組みたい!!"と思われた指導者の方は、是非一度当サイトが運営しているオンラインセミナーにご参加下さい。(宣伝(^^;ゞ)


エンデュランス能力の向上

エンデュランス能力を高める為には酸素の供給量を増やしエネルギーの代謝力を高める必要があります。その方法として良く取り上げられるのが ①LSD等の長時間の乗り込みで毛細血管の増加を促す方法と、②高強度のインターバルトレーニングを行うことで赤血球/ヘモグロビンの増加を促す方法です。

シーズンオフのこの時期には、余り高強度のトレーニングを行うのでは無く基礎体力のベースを作る事も合わせて①長時間の乗り込みを行う事が中心になると思います。先日このことに関する質問に答えていますので、興味のある方は以前のOnepoint Lessonをご覧ください。

この長時間乗り込むトレーニングは各選手個人でも、チームでも行える方法なので、Trainer's Houseがオフトレ合宿としてわざわざ行うのは憚れます。
(そんなところに割く予算は無い/某チーム関係者談)
そこで実際にはどんなことをしているかと言うと、ポジション構築を主目的としながら、軽めのギアレシオを使ったインターバル系のトレーニングになります。
高強度のインターバルトレーニングはこの時期にあまり意味が無いとも考えられるのですが、シーズン中に比べ運動量が著しく下がる時期でもあるため代謝力の低下が否めず長時間の乗り込みを行う上で一定以上の運動強度を担保することが難しくなるため定期的に一定以上の強度のトレーニング(心肺に負荷をかける)を実施しています。もちろん主目的は適性ポジションの構築と謳って選手の熱い視線(疑いの視線)をかわしているのは言うまでもありません。

以上がTrainer's Houseが行うオフトレーニング指導の概要になります。
この機会に皆さんも是非"今何を行うべきか"を考え、それぞれに必要なオフトレに取り組んでみてください!

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