恋愛における学び3
●●が好きだと、普段から声高らかに言うように心掛けている。これが案外いい方向に働くもので、●●分かるよという人に出会えばそれは初対面でも親友になれる気持ちではいる。
その一貫として好きな俳優を普段から口にしていた。ドラマをやれば定期的に話題に出しCMをすれば商品を買って周りにアピールし映画に出ればまたもや話題に出す。
そんなある日、たまたま出会った方がその俳優と友達だよと言われお会い出来るきっかけを下さった。こんな事があるのかと。出会った方に対して、代わりに何を差し出せばいいのかと頭を悩ませていた所、こんな片田舎に住んでるお前に差し出せる物なんか何もねぇよと小馬鹿にされたのかお気遣い頂いたのかよく分からないアンサーを頂いた。
数ヶ月後、私の住んでる場所に遊びに来ていたタイミングでご相伴に預かる事となる。緊張した。とにかく緊張したし全く嗅いだことのない種類の凄くいい香りの香水を付けていた。
どこの店に入ったかは覚えているが何を食べたかは思い出せない。ただその光景だけが今でも目に焼き付いている。
ただ凄く面白いのが彼は既婚者だったと記憶しているが片時も側を離れないフジコちゃんのようなスタイルの若い女性がいらっしゃった。甘い声で彼に囁き楽しそうにケラケラ笑い、どこの誰だと言わんばかりの私のような存在にもお気遣い頂いて。性格まで非常に良さそうな子だった。後から名前を知りそれなりに売れてらっしゃるグラビアの方だと知る。
その方が一瞬、席を外した瞬間に連絡先を聞かれた。私が?この方と?直接連絡を取れるのか?と。ただ既婚者であり若いグラドルを地方に連れて行きそこで知り合ってど素人に連絡先を聞くなどゲスの極みだったが、見た目通りというかイメージ通りで安堵したのを覚えている。私は偶像を大切にする。もしこんなナリして丁寧な方だったらどうしよう、夢が壊れてしまう。ただしっかりゲスであられたので安心した。
半年に1回ペースで連絡が来た。知り合って2年が過ぎようとする頃、撮影でそちらに出向くから会おうと連絡が来た。
信じられない、今度は2人か、何を話せばいいのかわからない。しかし実際に2人でお会いすると一般的な世間話がほとんどでとても楽しい時間が過ごせた。中でも芸能界の裏話(主に下ネタ)がとても面白くて興味深かった。何が事実かはどうでもよくて私が知り得ない話を私に向かって話してくれているという現実が非日常的で凄く嬉しかった。
当然ながら一夜を共にする。そこから定期的に単身でいらっしゃる事もあれば彼女を連れてくる事もあり、お会いするペースも上がっていきと私は沼にハマる。
ある日、その方の奥様が妊娠したとニュースで見た。分かってはいた。しっかり自分と彼の世界には大きな壁があり決して対等ではないという事は分かってはいたが動悸が激しくなる。頭では分かっているが心が追いついていない。心では対等なつもりだった?どう考えても対等ではない。脳と心が人生最大のバトルを繰り広げている。体がバグる。まともに立っていられない。
おめでとうと一言だけ連絡を入れた。すぐさま既読が付きそこからしばらく返事がなかった。
半年ちょっと経った頃、連絡が来た。何事もなかったかのように。いつも通り、来月そっち行くけど会う?と。
見事だなぁ。ここまでクズでゲスなのだからあんな演技が出来るんだなぁ。きっと私のような女が全国各地に約40人くらいいらっしゃるんだろうなぁ。一緒に連れてきてた驚きのスタイルを持つ彼女はその中でも最高峰、ただしそれでも奥様にはなれなかった。すごいなぁどれだけ男を振りかざすつもりなんだろう。
ここまでのクズっぷりを振り切るのなら私もそれなりの対応をしよう。「お前なんかただのクズだ、しかしお前はいい男だ。だからとりあえず抱いとけ。」これが定番の口癖になった。
今でも関わりがあるかと言えばない事もないが、年に数回連絡があったりなかったり。もうしばらくお会いしていない。さすがに彼レベルのお相手には私の術式は通用しないと思い、最初から試していない。ただ彼が今も連絡をくれるのは私が開き直ったが故の厚かましさで、最終的には近所のおせっかいおばちゃんの立ち位置にまで来てしまったからだと思う。
彼は仕事を丁寧にこなし大御所になった。彼に「あんたいつまでそんな事やってんのよ、いい加減にしとき」と言える完全な一般人もなかなかいないと自負している。
「これどう思う?こんな裏話があるんだよ」とリンクが貼られ送られてきては、人の心配する余裕あんの?と返して文字上で遊ぶというやり取りをしている。
私の心の傷が癒えるまで少し時間がかかったけれど(それでもやはり一般的には短いように思う)今でも彼の事は俳優として応援しているしただのファンだ。
最初から体を重ねた事は、距離を近づける為の最短の手段だった。今後、どういう関係になっていくにしても体の関係があった異性との結び付きはしっかり作っている方だと思う。