DIG 003-新規事業立ち上げの道のり アポロリンク株式会社 渡邊 裕喜さん
■What’s DIG?
働く場を作る時、その企業やサービスが目指す姿、理想のチームや働き方、そして大切にする価値観がしっかりと込められています。
そんな「働く場や働くことを通して見えてくる企業/サービスの価値観、考え方や未来像」までを、インタビューを通して掘り下げてまいります。
インタビューは、TRAIL HEADSの栗井がつとめます。普段はクライアント企業のオフィス作りのデザインディレクション・プロジェクトマネジメントとして携わっています。
これからの働き方を考えたい方、働く場を創ろうと考えている方の参考になればと思っています!
今回はキャンピングカー事業「vantner」をスタートさせたアポロリンク株式会社の渡邊裕喜さんにお話を伺いました。
■新たな事業を立ち上げた背景
栗井)
今回アポロリンク社で新しい事業を立ち上げるにあたって、弊社はブランディングから店舗の内装デザインまで担当させていただきました。改めて「vantner」という事業内容からお話を伺えますでしょうか。
渡邊)
vantner(バントナー)は、厳選したキャンピングカーやアウトドアギアのレンタル、旅のおすすめプラン/宿泊先のご紹介まで、一括で手配できるサービスになります。
栗井)
ありがとうございます。ここまでのサービスローンチまでたくさんの壁を乗り越えてきたかと思います。
まずは新事業を立ち上げることになった背景からお聞かせください。
渡邊)
元々私が携わっていた業務は出光グループのガソリンスタンドで車の買取や新車の販売、リースといった車のサービスを企画推進する業務を担当しておりました。
その中で別の視点からアプローチできないかを考えたことが今回の事業を始めるきっかけでした。
栗井)なるほど。既存の事業をやっていく中で見つけたのですね。今回の事業はキャンピングカーがメインになってますが、それは渡邊さんが元からアウトドアに興味があることも関係しているのでしょうか。
渡邊)
そうですね。元々興味がある分野だったので、新たな視点で新たな事業を立ち上げる際に自身の好きなことが原動力になっているのは間違いないです。
やると決めたらすぐ動けるタイプだったので、上長へ構想を伝えるのにそこまで時間はかかりませんでした。
いきなり販売はハードルが高いと思っていたので、まずはレンタルから始めニーズを収集しながら顧客を作っていく。
モノの提案ということよりも、体験という価値を提案していく。
そうした体験を通して、さらにサービスをアップデートしていく。
そんな流れをサービスにしたいと考えて、今回の事業がスタートしていきました。
栗井)
やると決めてからのパワーがすごいですね。
これだけ規模の大きい会社で事業化まで持っていく経験は中々できないと思っているのですが、何か昔からやってやろうという気持ちを持たれていたのですか?
渡邊)
何か「やってやる」という気持ちは昔から持っていたのかもしれません。
これだけの規模の会社でも、「何か新しいことをしたい」という想いを持っていました。
それが好きなことであれば、苦しいことがあっても気にしないで楽しんでやれる。それほど幸せなことはないという考えでしたね。
栗井)
それがキャンピングカー事業を会社全体で始めていくきっかけになったのですね。
渡邊)
社内でもキャンピングカー事業の話になると次々とアイディアが生まれ、楽しい雰囲気が出ていました。
自分だけではなく、チームのメンバーも一緒に盛り上がれたことはこのPJをやる上でかなり良かったと思います。
自分含めて2,3名で立ち上げて行ったPJでしたが、社内メンバーも徐々に増えていきました。自社だけでカバーできない範囲も見えてきた段階で、貴社にブランディングから店舗デザインをお願いすることになったのが私たちのチームの始まりでしたね。
■サービスの核を決めるために
栗井)
今回ブランディングから店舗のデザインまでを弊社にお任せさせていただきましたが、どのような背景でお声がけいただいたのでしょうか。
渡邊)
まず、私たちが作るサービスと店舗の雰囲気にミスマッチを起こしたくないというのが念頭にありました。
その中で貴社は空間事業のみならず、アウトドアの事業をされており「らしさを引き出す」ということを得意とされていたこともあり、お声がけをさせていただきました。
栗井)
改めて、お声がけいただきありがとうございました。
アポロリンク社の皆さんと一緒にワークショップを開催して、自分たちが大切にしていきたいことを深掘りしていくステップを踏ませていただいた時には、たくさんのアイデアが出ましたよね。
渡邊)
そうですね。実際にキャンピングカーを使ったことがないメンバーがほとんどだったこともあり、みんなの意見を聞くのは新鮮で色々な発見がありました。
何よりチーム全員が同じ方向を向いて、真剣に考えてやれていたからこそ、サービスのネーミング決めや空間に落とし込んだ時のイメージが合致できたのだと思っています。
みんなでアウトドアサウナに入りながら、アイデア出しをしたのも新しい体験でしたね。
サウナに入り、川へ飛び込んで外気を感じながらブレストをする。頭がとてもクリアだったことを覚えています。
栗井)
オンラインやオフィス等で対面で行なうコミュニケーションとはまた違うものがありますよね。
自然の中に身を置くことで、よりフラットな意見が出たり、関係性を作れたりするのでアウトドアワークショップを実施できたことはvantnerチームとしても良いチーム作りのきっかけだったと思っています。
そのアウトドアワークショップの中で話が出てきた、「キャンピングカーはアウトドア(キャンプ)をするためのものではなく、自由度を高めてくれるもの」という言葉が印象に残ってます。
渡邊)
開かれた場所で話をすると、いい言葉が出てきますよね。
みんなの話の共通点として「自由」「気軽」というキーワードがありました。
その中でみんなそれぞれ自分だけの物語を持っていることがおもしろかったです。そういう話を踏まえて、キャンピングカーはただのアウトドアを楽しむものではないと思いました。
僕たちは、「自由気ままに」「自分(達)だけの時間を」「手軽に気軽にシンプル」に過ごす体験を大切にしようと辿り着きました。
■サービスと店舗の関係性とは
栗井)
今回、店舗のデザインも担当させていただきました。
サービスの核を感じてもらえるような場所にするために、意識してプランニングをさせていただきましたが、渡邊さんとしても今回大事にしたかったポイントはどういうところにあるのでしょうか。
渡邊)
大きくは2点ありました。
・レンタカーショップという見え方を変えること
・気軽に入りやすい雰囲気を作ること
レンタカーショップというと、私もそうですがお客さんの中でも、形式的な雰囲気を感じられるイメージが出来上がっていると思います。
入り口を入ると受付があって、お客さんを待ち構えているような状態ですね。
それはvantnerらしいものではないと考えてました。
より気軽に入れるような雰囲気を作りたい、もっと街とも人とも繋がりやすい場所にしたいという想いがありました。
このように判断軸があるのはワークショップを経たからだと思います。
そういう話の中から、ゲストとスタッフの関係性を曖昧にするカウンターが作られましたよね。
栗井)
そうですね。
・限られた間口スペースの中で、いかにゲストを入りやすくさせるか
・自然とコミュニケーションが生まれるような仕掛け、滞在したくなるよう仕掛け
これらを踏まえて、イメージとしてはApple Storeのようにカウンターを中心に持ってくるプランになりました。
人が入りやすいように、天板の形は丸みを持たせて囲みたくなるようなデザインに。
全体のトーンもこれまでのワークショップやWebページも意識しながら決めていきましたね。
渡邊)
実際に使ってみて思いますが、ゲストと対面ではなく、緩やかに横並びになったり対角線上になったりと動きがあるのでコミュニケーションが取りやすかったです。
あとは、通りを歩いている人たちが「何のお店だろうか」と覗ける/気になるような仕掛けはディスプレイ棚から感じられると思います。
ゲストとのコミュニケーションのきっかけにもなりますし、時期や気分によってディスプレイを気軽に変えられるところも気に入っています。
栗井)
vantnerというサービスが店舗からも感じてもらえるようなデザインに落とし込めてよかったです!
渡邊)
そうですね。
vantnerの体験で大切にしている「自分(達)だけの時間を」という部分で切り取ると、車の返却時にゲストからどんな場所へ行ったのか、どんなことをしてきたのかといった物語を店舗で聞けたらすごく嬉しいですね。
そうやってvantnerを利用してくれるゲストと一緒に店舗もアップデートし続けたいと思っています!
■新規事業を立ち上げる中で大事なこと
栗井)
新規事業の立ち上げをしていく時間はあっという間に感じられたかと思いますが、ここまでやってきた中で、一番大事だと感じたことは何でしょうか。
これから新たに挑戦していく人たちにとって必要なこととは何かを知りたいです。
渡邊)
ここまで実際にやってきて、この2点は大事だと思いました。
・発起人が熱意をもって最後までやり切るということ(自責思考)
・その熱意を周りに伝播させること(フォロワーを作る)
やはり最初に手を挙げた自分自身がプロジェクトの最初から最後までをやり切ることというのは重要だと感じました。
栗井)
発起人が成し遂げたいという強い想いがあれば、最後までやり切ることができるということですね。
渡邊)
そうですね。今回で言うと私がどれだけプロジェクトに想いを込めてやれているかで、周りのサポートも全く違うものだったと思います。
本当に周りのメンバーに助けられてここまで来ることができました。
基盤となる事業がある会社で、新規事業を立ち上げてローンチにいたるまでの道のりには大変なことも数多くありました。
それで下を向いてしまう時も、上を向かせてくれていたのはチームの存在があったからこそです。
栗井)
渡邊さんの情熱は一緒にプロジェクトをやっている中で、すごく伝わってきました。
そして渡邉さんを囲むようにチームメンバーが常にいてくれる雰囲気があったのは、発起人が最後までやり切る/成し遂げるという想いがあったからだと感じています。
渡邊)
メンバーに恵まれたこともあるかもしれませんが、誰かの助けなくして今回のプロジェクトをここまで持ってくることはできなかったと確信しています。
そしてサービスのローンチ/店舗をオープンさせた今もそれは変わりません。
僕たちはようやくスタートラインに立つことができ、これからさらに前へ進んでいく必要があります。
その想いは僕だけではなく、チームのメンバーにもしっかりと浸透しています。
栗井)
発起人としての渡邊さんの想いがチームに伝染しているということですね。
vantenrは本当に強いチームだと感じています!
渡邊)
これからもチームのみんなと、そしてゲストの方も巻き込みながらvantnerを成長させていきたいと思います。
栗井さんもぜひvantnerを利用してくださいね!
栗井)
ぜひ体験させてください!社内のメンバーで遊びに行かせていただきます。
改めて、この度はプロジェクトをご一緒させていただきありがとうございました!