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#12 BRTによる代替可能性

鉄道閑散線区の代替交通の選択肢として、BRT(バス高速輸送システム)が挙げられるようになりました。東日本大震災の被災区間復旧で、JR東日本が気仙沼線と大船渡線の一部に導入して実効性が認められ、注目を集めました。線路敷に専用道を整備して定時性・高速性を確保。高校や病院、役所を経由した柔軟なルート設定で、運行頻度も従来比1.5-3倍に向上しました。ICカード乗車や運行情報表示も備えるほか、運行管理は鉄道システムの考え方を踏襲して「鉄道ライクな」(JR東日本幹部)乗り物となっています。持続可能な交通とするため、自動運転の導入にも取り組んでおり、ローカル線の未来を切り開く技術実証の現場でもあります。

何度か現地を訪れましたが、復興の進ちょくにつれて進化を続けていますし、専用道の〝投資〟も終わる気配がありません。2021年3月、震災10年でBRT沿線自治体の首長に話を聞く機会がありました。ある首長は「通学の利便性が高まった」と評価する一方、ある首長からは「今後の観光を考えると鉄道がない町は厳しい」といった不安の声も。本音を吐露してくれた首長も「形はどうあれ、地域の足を確保してくれた」と感謝を口にました。全国の自治体から視察も多く受け入れていましたが、BRT転換を実現する地域はなかなか現れません。2023年夏に、2017年の九州北部豪雨で被災したJR九州・日田彦山線の一部区間がBRTで復旧します。

東北2線で導入したBRTは、どれぐらいの輸送需要に対応できるか。東北の復興を担当していたJR東の幹部に聞くと「輸送密度2000ー4000人」とのことでした。一定の時間帯に需要が集中する場合は別ですが、運転手確保の問題はさておき、いわゆる〝ルーラル(田舎の)〟BRTには、それぐらいの実力があります。一方、専用道で連節バスや隊列走行を活用すれば、さらに中量輸送も可能です。千葉・幕張新都心で1時間当たり最大3000人の輸送需要に連節バスを多頻度運行している例があります。自動運転技術やPTPS(公共車両優先システム)などを活用したART(次世代交通システム)化は、輸送モードとしてのバスの価値を高めます。

JR西日本がソフトバンクなどと滋賀・野洲で実証中のBRTは、最高時速60km、最大4台の連節バスを含む車両をCACC(協調型車間距離制御装置)で隊列走行させようとしています。数百人の輸送力と連結・解結による編制の柔軟さ、幹線・枝線の運行を目指す、新たな交通システムです。開発発表前の2019年秋、JR西の首脳に2025年大阪・関西万博の輸送をどうするか尋ねると「桜島駅から自動運転のバスで運ぶ」と答えがありました。列車相当の輸送力が必要ですが、開発中のBRTならば納得。会場までのシャトル輸送でアピールし、会期終了後は、車両をどこか地方線で実運用する。そんなシナリオを描いているかも知れませんね。


(検証)震災復旧で生まれたBRT

2019年から毎年3月、被災地復旧の現状をリポートしました。19年は旧山田線を移管した三陸鉄道の開通、20年は常磐線の全通がトピックス。21年は地域公共交通の未来をBRT2線から学ぼうと、テーマを設定しました(残念ながら、記事のネット転載が見つからなかったので19年の記事をリンク)。2線のBRTは地域交通として適切ですが、鉄道ネットワークとの連携という点では難点があるようです。

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