雇用統計をより詳細に見てみる
はじめに
米国の経済指標の中でも、注目度の高い雇用統計。
読者の中にも、その結果をチャートの前で着席して待っている方が多いかと思います。
今回はこの雇用統計をもう少し深く見ていこうと思います。
雇用統計とは
雇用統計とは米国の労働労働市場の状況を示す重要な経済指標の一つです。
この統計は米国労働省の下部機関である労働統計局によって毎月発表されるものです。
それには以下のような内容があります。
・非農業部門雇用者数
・失業率
・平均時給
雇用者数
正式には非農業部門雇用者数と言う名前ですが、
ここを見るのが一般的だと思います。
ここが予想に対してどういう結果が出たのか、
上ぶれたのか下ぶれたのかが注目されます。
問題は、この雇用者数、どこまで信憑性がある指標なのかと言うことです。
確かに 大きく上ぶれたり下ぶれたりすると、その場ではそれに対して金利が反応します。
ただ、中長期で経済の動向を考えていく上で、それをそのまま鵜呑みにして良いかどうかは、少し立ち止まって考える必要があるかもしれません。
どういうことか実際に過去の結果を例に見ていきましょう。
2024年1月5日、
この日の雇用統計は予想170kに対して、結果は216kと上ブレました。
ただ、この結果、後ほど333kと言う数字に置き換えられています。
これは117kほど追加で修正がかかったということを意味しています。
つぎに、2024年2月2日、
この日の雇用統計は、予想が187kに対して結果が353kでした。
予想に対して結果が2倍弱と言う大きく上ブレる結果を見せた雇用統計でした。
しかし、 この雇用統計の結果も、後ほど229kに修正されていました。
約130kもの数値が後で修正されたということになります。
直近の目につくものだけ抜粋してみましたが、他にも過去のものを見てみるとこのような例は結構あるので、気になる方は見てみてください。
この雇用者数、実際のデータが後で大きく改定されるという意味だけでなく、統計の内訳次第では短期でもその結果を鵜呑みにしてはいけないケースがあります。
以下金利との相関性が高いゴールドと金利を使って解説していきます。
雇用者数が効かない例
2024年3月8日発表の雇用統計(2月のデータ)
実例を見てみましょう。
このときの雇用者数は予想198kに対して上回る275kの結果でした。
充分に予想を上回ったというようなデータになります。
この結果から予想できるのは 、10年金利が上昇していき
ゴールドもそれに合わせて下落していく展開です。
それでは、実際のチャートを見てみましょう。
雇用者数が予想を上回ったのに素直に反応して
その場で金利は大きく上昇し、ゴールドもそれに伴い下落しています。
しかしそれも束の間、金利は上昇分を上髭に変え下落、
ゴールドも下落部分を下髭に変えて上昇していきました。
雇用者数が予想を上回ったにもかかわらず
なぜ髭にして戻したのか….
その答えはフルタイムパートタイムでした。
フルタイムパートタイムの重要性
雇用者数の内訳として、フルタイム / パートタイムの増減数というデータがあるのはご存知でしょうか?
経済が堅調で、将来的に継続して雇用する必要があるような状態では
フルタイムの雇用者が増え、
逆に経済が不安定にあり、
その不安定さに応じて柔軟に対応して雇用をしていきたいと企業が考える場合は、パートタイム雇用者が増えます。
またフルタイム減少、パートタイム増加の時は
傾向として失業率が上がり、賃金が下がります。
なので雇用者数が増加しても失業率が高くなり賃金が下がっている場合はネガティブに捉えられることが多いです。
しかしストライキからの出戻りや労働参加率という概念もあり必ずしも賃金や失業率に表れるというわけではありません。
そこで一緒にフルタイムとパートタイムの増減を見ると効果的で労働市場の実態もしっかりとらえられるというわけです。
それでは、実際にフルタイムパートタイムの雇用者数を踏まえた指標結果に対して、チャートはどのように反応しているかを見ていきましょう。
まずは先ほどの3月8日のパートタイムフルタイムを見てみましょう。
この時のパートタイムフルタイムの結果は
パートタイム増減数: +5.1万
フルタイム増減数: -18.7万
というもので。金利の下落要因となるものでした。
それを受けて雇用者数の発表で一旦上昇した金利が、押し戻され下落したものと考えられます。
2024年1月5日発表の雇用統計(202312月のデータ)
他の例として2024年1月5日のケースを見てみましょう。
この時の雇用者数は予想170kに対して216k。
予想以上に雇用者数が増えているという結果になりました。
それを受けて金利は上昇、それに伴いゴールドは下落していきました。
しかしその後反転を見せます。
この時もやはり
パートタイムが増加
フルタイムが減少していました。
例外 :2024年2月2日発表の雇用統計(1月のデータ)
冒頭にも取り上げた
2024年2月2日発表のデータを見てみます。
データの信憑性はさておき。
予想が187kに対して。結果が353kと約2倍近く開いている速報が出たので
その場では10年金利は力強く上昇しました。
これに合わせてゴールドも下落しています。
このときのパートタイムフルタイムのデータを見てみると、
パートタイムが増加して
フルタイムは減少していました。
これを踏まえて金利が反転するかと思われましたが、
雇用者数の増加が予想に対し2倍近く上振れたので
パートタイムフルタイムに対しての反応見られませんでした。
このように雇用者数のインパクトがあまりに強い場合は反応しない可能性があることに留意する必要があります。
番外編 :2023年7月7日発表の雇用統計
この日の雇用統計は、
雇用者数が多少減少していることで、10年金利は低下しましたが、
賃金が強かったため、下髭を作って上昇。
さらにその後
フルタイムが減少、パートタイムが増加していたので
再び金利が低下して、下髭の位置までの下落をみせました。
このように発表されていく順番の通りにチャートが反応していくのも面白いですね。
まとめ
以上のように、雇用者数だけでなく、フルタイムパートタイムや 賃金など、雇用統計の他のデータをうまく活用することで金利やその他のチャートが
どのように動くかを予想する精度が高まります。
ただ、これまではフルタイムパートタイムの速報(流れてくるのが遅い)を見ることが可能な場所はほとんど無く、触れるのに苦労していました。
当会員向け用サーバーでは、データの更新から平均して1分程で通知をしています。(下記画像が見本)
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