YouTubeコンテンツIDの仕組み ~音楽のアセット~
株式会社TRACKSのクリエイターサポート部門です。
今回は、コンテンツIDの中で権利を管理する情報の入れ物である「アセット」と、その使われ方について詳しく解説します。特に音楽の権利がYouTube上ではどのように管理されているかについて解説していきます。
1. YouTubeでの音楽のアセット
アセット
アセットとは、権利者が楽曲などの情報をコンテンツIDに登録すると生成されるもので、以下の情報などが含まれています。
音源データ
楽曲名やアーティスト名などの情報
地域ごとの著作権者の情報
アセットの種類には映像や映画などいろいろありますが、今回は音楽に関係するアセットを紹介します。音楽のアセットはいくつかに種類が分かれていて、それぞれが関連しあっています。具体的には以下のようなものがあります。
サウンドレコーディング
楽曲の音声データとその情報です。CD音源などをそのまま利用した動画に対する、音声の一致による申し立てに使われます。ミュージックビデオ
音楽コンテンツの動画データとその情報です。音声と映像の一致による申し立てに使われます。アートトラック
YouTube Musicのためのアセットで、申し立てには使われません。ジャケット画像、音声データ、楽曲情報で構成されています。楽曲権利保有率
楽曲の著作権者の情報です。楽曲の旋律をもとに、演奏の動画などに対する、メロディの一致による申し立てに使われます。
これらは誰でも登録できるというわけではなく、サウンドレコーディング、ミュージックビデオ、アートトラックを登録するための契約(音楽パートナー契約)、楽曲権利保有率を登録するための契約(YouTubeにおける著作権管理の契約)が必要になります。
アセットに関するYouTubeヘルプ
2. 音楽パートナーとアセット
音楽パートナーとは
上記のアセットを登録できるようにするため、レコードレーベルやディストリビューターなどの、原盤を管理する人たちとGoogleが契約します。Googleと契約し、上記の音楽管理のアセットを作れるようになった人たちのことを「音楽パートナー」と呼びます。音楽パートナーは、サウンドレコーディング、ミュージックビデオ、アートトラックといったアセットを登録することができます。
レコードレーベルの例)
日本:Avex Inc.、Universal Music LLC など
海外:Universal Records、Warner Records Label など
ディストリビューターの例)
日本:TuneCore Japan など
海外:FUGA、Believe Music など
サウンドレコーディングアセットとは
YouTube上でのサウンドレコーディングとは通称原盤と呼ばれるもので、レコードレーベルが制作したマスターに関する権利を指します。音楽パートナーがマスターの音源ファイルと関連情報をコンテンツIDに登録することで、サウンドレコーディングが作成されます。ここで登録された音楽が含まれた動画をアップロードすると、音声一致による音声の申し立てが起きます。
ミュージックビデオアセットとは
YouTubeにおけるミュージックビデオとは、原盤と映像がセットになったものを指します。音楽パートナーはYouTube上に公開している公式動画に音楽の情報を加えてミュージックビデオを作成することができ、その動画が音楽であり、どんな曲なのかをYouTubeに認識させることができます。またYouTubeに無断転載された動画に対し、このミュージックビデオで音声と映像の申し立てを起こすこともできます。
アートトラックとは
アートトラックとは、YouTube Musicで視聴できる音楽のことです。これはYouTubeからも視聴が可能で、ジャケ写と音楽だけの動画となっています。このアートトラックは申し立てには使われません。またサウンドレコーディングとアートトラックで同一曲が登録されていると、YouTubeショートで音楽を選択して使えるようになります。
3. 音楽出版社や著作権管理団体とアセット
YouTubeにおける音楽出版社と著作権管理団体
著作権料を適切に分配できるようにするため、音楽出版社や著作権管理団体がGoogleとYouTubeにおける著作権管理の契約をします。この契約をした団体は、音楽パートナーが登録しているサウンドレコーディングに対し、楽曲権利保有率を登録することができます。
著作権管理団体の例)
日本:JASRAC、NexTone
海外:MUST_CS、PEDL など
楽曲権利保有率アセットとは
通称出版権と呼ばれるもので、原盤とは全く異なる権利です。出版権は楽曲を制作した人が持つ権利であり、具体的には、歌詞や曲などに関する権利のことを指します。著作権管理団体は、YouTube上に登録されているサウンドレコーディングに対し、権利主張をする地域と楽曲の情報を登録し、権利保有率アセットを作成します。こうすることで、そのサウンドレコーディングと同じメロディを使っている動画を検知することができるようになるため、音源そのままではなく歌ってみたや演奏動画に対しても申し立てをすることができるようになります。
楽曲権利保有率の登録に関するトラブルについて
ここで、楽曲権利保有率の登録について、最近よく発生しているトラブルについてご紹介します。YouTube上でサウンドレコーディングに楽曲権利保有率を登録して良いのは、特定地域でその楽曲の著作権を管理している組織、団体です。日本ではJASRACさんやNexToneさん、フリーBGMであれば弊社TRACKSがその組織にあたります。ただ海外の著作権管理組織は日本とは法律・運用が異なる部分があり、全ての楽曲にその地域での楽曲権利保有率を登録し、申し立てをするような組織があります。そのため、フリーBGMを利用した動画に対して海外著作権団体から申し立てが起きることがあり、度々問題になっています。
4. アセットの関係
音楽コンテンツには上記で説明したように色々な種類のアセットがあり、管理者も異なります。ここで、それぞれのアセットの関係と役割について説明していきます。
左側が一般の動画、右側が音楽動画です。赤い点線から上側、緑色の□はYouTube上でユーザーに見えるコンテンツを表しています。またその下の白い□はアセットを表しています。
まず緑の□、YouTubeの利用者に見えている情報としては、
動画
ショート
ショート用オーディオライブラリ(ショートで楽曲を選ぶ一覧)
アートトラック
の4点です。
白の□は音楽アセットになります。アートトラックが緑と白のグラデーションになっているのは、YouTube利用者からも見える上、アセットとしても認識されているからです。アセットは図のように紐づいていて、ミュージックビデオ、YouTube Musicのアートトラック、ショートで使われる曲が同じ音楽であることがYouTube上で認識されるようになっています。また、サウンドレコーディングには楽曲権利保有率が埋め込まれていて、その曲の著作権情報が管理されています。
まとめ
今回はYouTube上の音楽管理について、関係図などを用いて解説しました。少し難しい内容となっていますが、権利者が複数いる音楽がどのようにYouTube上で管理されているか、またもし自分の動画が申し立てを受けた場合に、それが誰からの申し立てであるかを理解する要素になっていれば幸いです。
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