モダンデザインを巡る旅も一段落
turn to your own center
年末からモダンデザインを振り返る展覧会を複数巡る機会に恵まれ、色々と観てきた。年末に中之島美術館で始まった「吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」は、オープニングイベントをはしごしていたら本展を見る時間がなくなってしまい、年が明けて先週の土曜に仕事を早上がりして、やっと観に行ってきました。
もともと私はデザイナーとしてブロックマンのファンでした。最近は学生にグリッドシステムの説明をする事も多くあり、彼を重要なデザイナーという説明をしているため、随分タイムリーにブロックマンを取り上げるなぁと思っていました。しかし、実際にはこの展覧会は吉川静子に展示の重心が置かれているものでした。タイトルでなぜ吉川静子が前に来るのかちょっと疑問だったんですよね。もちろん二人の作品は響き合う点が多々あり、あわせて観ることは大変興味深く面白いものでした。
個人的には1970年代後半の半立体作品 color shadow というシリーズが良かったです。フチの輝度の高い色が輝いて見えるところが良かった。これはぜひ実物で感じて欲しいですね。
のです。ただ一番ショッキングだったのがタイトルの写真に使用した作品です。turn to your own center 緊張と均衡の追求の頂点でありこれで作品制作を終えたというようなキャプションを見てはっとしました。
本当に非常に見応えがありました。3/2まで開催しているので、ぜひ観に行って欲しいです。
ブロックマン成分が少ないとお嘆きのあなたに
大阪芸大から貸出した A pillar of 7 parts with golden cut については下記が詳しいです。ブロックマンご夫妻とお付き合いの長い大芸らしいエピソードの多い読み物です。
ヨーゼフ・ミューラー=ブロックマンの造形とデザイン思考 藪 亨
グリッドデザインが、単なる方眼紙に沿って並べるということでなく、歴史的視野に立ち未来に向けた統合を志していたのではという武蔵野美術大学古賀稔章先生の論説です。こちらも読み応えがあります。
ブロックマンの作品では、常にグリッドを超えた躍動が緊密な緊張感の元に感じさせるのこういうところに理由があるのでしょう。精緻な表現にまで抑制されてはいるものの、そこには強い情動がありギリギリのところでバランスを保っている。それは吉川の生涯のテーマでもあったはずです。
あと、グリッドデザインの成立の背景や日本での取り入られ方についてまとめられた文章を紹介します。
───デザインのよみかた 2019年12月10日 デザイン名著をよみとく #1
───デザインのよみかた 2019年12月12日 デザイン名著をよみとく #2
こんだけまとめておけば、学生指導でも役に立つでしょう。仮想の線、グリッドに揃えろ、とそういう雑な指導で済ませるわけにはいかないのです。
翌日は最近休日の日課である10kmランで芦屋浜高層住宅を通りかかり、あらためて身近なモダンデザインの再発見を楽しんだ。「形態は機能に従う」というテーゼ自体は今も有効であろう。では2025年において求められる機能はなにか?ということが今を生きるデザイナーの課題なんだよね。