2023夏の読書おすすめ1冊目
楽しい図版を楽しみながら、デザイナーの本質に接する本
著者のブルーノ・ムナーリは、イタリア人のデザイナーです。25年前に亡くなっています。ゲーム専攻の学生はたぶんだれも知らないとは思いますが、大丈夫。じつは私も知ったのは40歳の頃だったんだよね。二十歳そこそこでムナーリさんに出会えるってうらやましいよ!
ムナーリさんは教育者でもありデザインについての著書がたくさんでていて、私は15年くらい前にむさぼるように読みました。すごく魅力的な人ですよ。
この本をすすめるわけ
デザイナーとして人間の視覚にどうやって働きかけるか、テクスチャや色をどうやって選ぶかという基本のお作法から丁寧に解説しています。この本はたくさんある著書の中でも、デザインを志す学生向けに書かれていて、理論だけでなく図版がたくさんあって、見ているだけで楽しい本です。私はムナーリの本の中ではこの本が一番好きなので、この本を学生のみなさんに紹介します。
2部から読むのが無難かも
1部は文字が多いので、先に91ページからの2部を読んだほうが良いかもね。その後で1部を読むと難しい内容が頭に入りやすいよ。それに読みやすさの工夫として、1部はアメリカから祖国への手紙という形式を取っています。外国生活の日常を軽妙な語り口で描かれていて、ムナーリさんの人柄とか伝わってくるから、なれるとおもしろいよ。
ムナーリさんの先進性
ムナーリさんはキネティックアートの展覧会をイタリアで開催するなど、当時の最先端を目指していたアーティストでもあるんだ。キネティックアートっていうのは、機械技術を活用して動いたり光ったりするアートって言えばいいかな。チームラボのご先祖みたいな感じ?
時代的にはこんな感じ。
1963年 初のCGが実現したとも言えるSketchpadが生まれる(アイヴァン・サザランド、西部ユタ大学)
1967年 この本のきっかけとなったハーバード大学(東海岸マサチューセッツ州、カーペンター視覚芸術センター)での講座が開講
1968年 この本の原書がローマで出版(Design e comunicazione visiva. Contributo a una metodologia didattica [Design and Visual Communication. Contributions to a Teaching Method])
1972年 初のアーケードビデオゲーム「PONG」がATARI社より発表
1973年 アメリカ西海岸にあるパルアルト研究所で初のGUIベースの小型コンピュータALTO起動
この本でもコンピュータ・グラフィック(71ページ)という項目もあって、ムナーリさんの先見性がよくわかります。
ちなみに私も昔キネティックアート作品を作ったことがあるんだよ。こちらはムナーリさんでなくて、同じくデザイン教育で有名なモホリ=ナジさんの影響なんだけどね。
新卒のプログラマ2名と倉庫の廃材で作ったんだ。楽しかったよ~