遊佐未森6thアルバム『momoism』全曲クロスレビュー(各曲レビュー2)+ボーナスレビュー「海」「ピクルス」(終)
1枚のアルバムになぜ3回シリーズになってしまうのか、これはひとえに脱線がひど過ぎるからですw
遊佐未森の6thアルバム『momoism』各曲レビューもついに最終回、最後には『momoism』からではないのですがボーナスとして2曲追加レビューがございます。それでは続きは後半「虫の話」から。お楽しみください。
7.「虫の話」
詞:遊佐未森・外間隆史 曲:外間隆史 編:野見祐二
野見祐二:computer & synthesizer programming
今堀恒雄:acoustic guitar
梅崎俊春:synthesizer programming
遊佐未森:vox・talk
@junnovi:
「外間の間」の2曲目になる「虫の話」。題名からして「土の話」とセット。意図が分かりやすいセット。
でもこの2曲は全然曲のつくりが違うよね。
ただ外間の「息」がかかってるってことと、曲名からしてまとめないと「どこ見てんの?」って誹りを受けそうなくらいだからw、まとめないとね。
まずは曲の全体構成から。って言っても、この曲については。。。
<イントロ>(0:00~0:17)
<詩の朗読1>(0:17~0:56)
A 手をのばしても~(0:56~1:59)
<詩の朗読2>(2:00~END)
こんだけw
この詩が曲者で、私はどうしても馴染めない。つまんないし、何を伝えたいのか分かんない。
これはこれまでの楽曲で散々繰り返されてきた手法だけど、全く興味が持てなくて。
@tpopsreryo:
全体構成の歌部分はAとBがあるやろw
楽曲に関しては外間曲なのでこれまでの典型的な遊佐ワールドだし、こうして朗読が入る部分も正直に言って違和感はそれほどない。
こうした朗読の入れ方でいつも感心するのは、どうやって歌部分の入りやエンディングで締めるまでのタイミングを測っているんだろうということ。
少しでも「夜。」の入り方を間違えば歌い出しがおかしくなるだろうに、朗読のスピードがぴったりハマっているのよね。
詩の内容はともかく、そういうタイムキーパー的な部分に感心させられてしまうのです。
そしてやはりこの楽曲も野見サウンド。
オーケストラのチューニングみたいな音からフワ〜っと入ってくるパッドの空気感が実に素晴らしい。
これだけパッドの音色で聴かせる楽曲も珍しいけど、個人的には生演奏のストリングスよりもこのジワっとくるシンセパッド(ストリングス)の方が断然好みです。
ミディアムテンポの楽曲において、命ともいえるのがこうしたシンセパッドで、この音色の作り方でサウンドメイカーとしてのセンスを量ることができる。
その意味で野見祐二と本田恭之は双璧だと思うね。
逆にそういう音色に配慮しないミディアムバラードは個人的には苦手なのよねw
@junnovi:
てことは歌は
A 手をのばしても〜
B ひとつひとつの瞬間〜
って分けるってことやね?
確かにBからは三拍子のニュアンスが色濃く出て、それまでの即興的な展開(センセの言う、朗読の始まりの「よる。」のタイミングもそうだし、「♪手を伸ばしても〜」の入り方と旋律の自由な感じとか)とは違って拍子を意識したような規則性があるもんね。
曲の始まりからヴェールに包まれたような。そしてそれが幾重にも織り重ねられて音世界が出来上がってて。美しいよね。
しかも湿り気のある豊かに響くギターのがとても包容力のある美しさをたたえてて。
@tpopsreryo:
そう、そのギターもさすがの今堀恒雄といったところで。あの人インプロヴィゼーションの変態ギターばかり弾くだけじゃないんだ・・と当時は思ったものですw
結局演奏の上手いプレイヤーはこうした単純なフレーズ、わかりやすいフレーズにそのセンスが滲み出るものなのよね。
@junnovi:
このあと、外間とはどういう関係になるのか知らないのだけど、もしかしてこの「○の話」の2曲で一区切りになったりしたのかな。
これら2曲の音楽性は、『空耳の丘』や『ハルモニオデオン』とは似ているようで違っているのを感じるんだけど、これも外間が出した答えのひとつなんだろうかと想像するのも楽しいなと思うねん。
@tpopsreryo:
それがね、次のミニアルバム『水色』はNightnoiseとのアイリッシュ色全開作なので例外として、その次の『アルヒハレノヒ』の先行シングル「咲くといいな」「恋かしら」からはしれっと外間がアレンジや作曲で戻ってきてるし、アルバム1曲目の「floria」に至っては外間作詞でしっかり外間ワールドですw
なお、その後のアルバム『アカシア』『roka』としっかり外間が関わるから、EPIC時代の終わりまでバックアップするわけです。まぁ外間で売れる成功体験したわけなのでそう簡単には終わらせないよねw
@junnovi:
ぬぬぅ~w そう来ましたか。
福岡氏との確執を通り越して成功を手にした経緯が自信に繋がってメルヘンなおとぎの国の世界が展開するんですな・・・(遠い目)。
実は私はこの「○の話」セットは好きな部類でして、正直ちょっと戸惑っているところがあるねん。そこで思うのが外間と野見祐二との音楽的な相性なんやけど、実は結構合っているんじゃないかと思うねん。この2曲にとどまらず、アルバムを跨いでもいいから、さらなる展開ができたのではないかと思ったりするねん。
@tpopsreryo:
外間はコンセプトメイカーであるからして、作詞作曲から編曲に至るまで全体を支配して初めて外間ワールドを完成させ聴き手を引き込むことに成功しているわけだけど、それだけに支配欲が強いというか、世界観の圧が強くて、一見さんお断り的な空気を感じてたのね。そこにさらなる異なった質感でファンタジアを表現できる野見祐二のようなアレンジャーに色付けを任せることは効果的なのではないかと思うわけ。
なので、このコンビで新たな遊佐ワールドを提示するのも面白かったと思うけど、この作品のみで楽しめるプレミアム感も大事にしたいところw
@junnovi:
遊佐未森のアルバムの中で異色作、だけど一番の傑作という評価はとても面白いね。外間世界観に共感する向きには首を傾げるような話だけれど、『空耳の丘』など一連の作品にある、独特のツンとした感じがずっと馴染めなかったのだけれど、この2曲についてはそれがなくて安心して聴き込むことができる。最初と終わりにある詩の朗読は正直言ってない方が良いと思うけれど、じゃあこの曲を一切聴かないのかというと、そんなことはなくて、Aの即興的でみずみずしく広がる歌や、Bの三拍子を強調した展開は、やはり魅力的だから、繰り返し聴いてしまう。
@tpopsreryo:
三拍子好きだもんねw
ワタシはアコギの旋律だけでも成立する中で、風通しの良い音色で彩りを加えるシンセサイザーの響きがやっぱり好きだなぁ。何かそればっかり言ってるけどw
@junnovi:
毎回書くクセにここまで分からなかったんだけど、このアルバム、三拍子系の曲がとても多い。「ロンド」「森とさかな」「ハープ」「虫の話」と特に前半に三拍子系の曲が集中している。こんなにニューミュージック系のアルバムで三拍子の曲が出るのは珍しいことで、他に例がないんじゃないかなぁ。これはこのアルバムのひとつの重要な個性じゃないかなと思うねん。
そして三拍子の曲は基本的に高評価になっていることに今さらながら気がついたのでした。
@tpopsreryo:
なるほど!そのあたりもこの作品の高評価に関係しているとなれば、何だかスゴく納得がいきましたw
@junnovi:
エヘヘw
8.「一粒の予感」
詞:工藤順子 曲:遊佐未森 編:野見祐二
野見祐二:computer & synthesizer programming
今堀恒雄:electric guitar
鶴来正基:piano
青山純:brush snare
梅崎俊春:synthesizer programming
遊佐未森:vox・background vocals
@junnovi:
とうとう来たわ「一粒の予感」・・・。
来てもうたな。私にも予感がある。
ごちゃごちゃ言ってないで曲構成をアップしますね。
<イントロ>(0:00~0:17)
A きらめく風に乗って~(0:15~1:10)
B 何処までも~(1:10~1:43)
<間奏>(1:43~1:55)
A 流れる水~(1:55~2:24)
B 何処までも~(2:24~3:09)
ブリッジ 初めて~ (3:09~3:40)
A' 丘の上(3:40~3:55)
B 何処までも~(3:56~4:33)
<アウトロ>(4:33~END)
この曲はね、コメントが難しくて。。。というのも、センセと違って、すっごく苦手で・・・。ということで先にどうぞ。
@tpopsreryo:
シングルカットされているのよね。
本作は完全にコンセプトアルバムだから、わざわざシングルを切らなくても…と思うけど、そのあたりは契約問題もあるだろうから仕方ない。
で、本作はドラムレスがテーマの1つなんだけど、恐らく流石にシングルでドラムレスは…という話になったんだろうね。
そこで一応ドラムじゃないよね?ということで加わったパートがbrush snare。
ブラシで叩くアレなんだけど、これを青山純が叩いている。
なお、当然本作で彼が登場するのは本作のみです。
で、こうして物理的にリズムが加わった曲なんだけど、曲を構成するパートや音数に関しては至ってシンプルで、元空耳楽団である鶴来正基のピアノがダダダダと刻むフレーズを基調に、変拍子的なピチカート音色と痩せたチープなシンセパート、そして今堀恒雄のギターが入れ替わり立ち替わり絡み合いながら進行していくスタイル。
恐らくこのダダダダが好き嫌いの分かれる部分かと思うけど、このシンプルさがこの楽曲の魅力。
好みとしては、サビに向かって駆け上がりタイミングが合わさる部分に気持ちよさを感じるのがまず1つ。
青山のbrush snareに合わせるかのようなピチカートのアクセントがさらに複雑なリズムを作り出しているのが1つ。
シンセ音色の儚いというか頼りないというか触れば崩れてしまうようなスカスカの軽い音色が実に野見祐二らしいというのが1つ。
そして最後の1つはこの楽曲の最大のポイントである今堀恒雄のギターワークの素晴らしさで、特にアウトロのギターソロはフレージングが絶品。
恐らくこれまで聴いてきた曲でギターソロコンピレーションを作るならこの曲も選ぶというくらい、このギターソロは気に入っています。
派手なことはやっていないんだけど、弾くフレーズと音色の選択、表現力に優れているんだよね。
@junnovi:
この曲は、というより、このアルバムは、スピーカーで聴くのとヘッドフォンで聴くのとでは感触が大きく異なるのを今回センセとクロスレビューするにあたって聴き直した時に気がついたんだけれど、この音響機器との相性って大切やんね。とても生楽器に寄せているけれど実は電子音を多用しているから、どういう音響機器でも同じような音になるんじゃないかと思いがちだけど、そうはならないなと。
特にこの「一粒の予感」は、イントロと、歌が始まるところと、パタッと感じが変わらない?弦楽器の弦をはじくような音で構成された部分が歌が始まった途端、余韻も何もなく急に空間の端に引っ込んだ感じになってるねん。
@tpopsreryo:
それは恐らく歌が始まる場面転換で頭にガツンとギターがギャーンと鳴ることでスイッチが入ってると思うのよね。この今堀恒雄のギターは先程も言及したけど、ピアノやピチカートに薄めのシンセが絡むどこか無機質な主要なサウンドにあって、人間が立ち向かうって言うのかなぁ…ピアノ、シンセ、ピチカート(アクセントでの緩急のつけ方も奥行きが出て絶妙)が森や自然というならば、ギターは人間であって、それが戯れなのかバトルなんかはわからないけど、自然との共存のような意味合いを持っているのかなと。そういう意味では『momoism』は環境問題に訴えた作品とも言えるかもしれない。
ラストのギターソロなんて左右にパンするアンドロイドコーラスの幻想的な処理も相まって、やはり本作のクライマックスのような印象を受けるんだよね。
@junnovi:
センセの言うギターの生っぽさ、良く分かる。ギターフレーズがどれも不規則だし、のびのびと自由だから、生きものの感触を感じる。
それって今堀のギタープレイが意図してそういう演奏をしているのだろうけど、バックの他の楽器がどこかギターと対極をなすために、より一層目立っているのかも。
@tpopsreryo:
まぁ何にせよこの楽曲は最後のギターソロですよ。何度でも繰り返してるけど、決して派手なフレーズやプレイでないのに、何故かグッとくる滲むような質感と細やかな技術が光る表現力。もうあの部分だけ何度も繰り返して聴いているくらいw
逆にあの部分がなかったらそれほどの価値は高まらなかったかもしれない。それほど重要なアウトロだと思う。マジカルな野見アレンジと相性の良い今堀恒雄のギターワークが見せる桃源郷がそこにあるわけです。
@junnovi:
確かにサビの安直に何度も繰り返すフレーズは今も好きにはなれないし、同じくサビの終わりの「♪かなえよう〜」という音形も遊佐未森の声が軽くだけど必ずひっくり返るのが不快でならなかったから、その先のことなんて耳に入って来なかった。
ヘッドフォンで丁寧に聞き直したり、それを踏まえて改めていつもの音響機器で聴き直して、センセの言う意味がようやく分かってきた。そんな感じ。
実際の生楽器のオーケストラと比べたらどこか異質なバランスを感じるんだけど、そこがこの曲のポイントじゃなくて。むしろそのどこか違うバランスのオーケストラに、ピアノはいつになくパワープレイで音階を駆け上がったり、遊佐未森はインテンポで歌ったり、その遊佐未森の歌よりもっと自由に生きもののように動き回る今堀のギターが入ってきて、ちょっとない組み合わせが実現してるのが珍しいよなと。これで完成形やなと。
そんな感じです。
@tpopsreryo:
アンサンブルとしてチャレンジしつつ完成されているというか…等間隔で刻むピアノも緩急自在のピチカートもサビに向けてリズムが整う感じが実にテクノ的なものを感じるのです。この部分も個人的に気に入っていて。ギターとシンセのフレーズが入れ替わり登場してくるんだけど、それらもサビに向かって整っていく。サビ自体はまぁ良いとして、終わりを薄いシンセでまとめ上げていくのも瑞々しさ全開で好印象。そこにきてあのアウトロのギターソロだからね。完成度はすこぶる高いと言わざるを得ない。そして遊佐にはほとんど触れていないw
@junnovi:
通り抜ける煙のようなコーラスが2回ほどw
@tpopsreryo:
そう。主役である遊佐も歌にコーラスに大活躍してるんだけど、それらが埋もれてしまうほどのサウンド面の充実ぶりに、そして他の収録曲にはない躍動感を演出している青山純のbrush snareに注目してほしい。そういう楽曲なんです。
9.「水辺にて」
詞・曲:遊佐未森 編:野見祐二
野見祐二:computer & synthesizer programming
今堀恒雄:acoustic guitar
遊佐未森:vox・background vocals
@junnovi:
<S.E.1> (0:00~0:45)
サブイントロ(0:27~0:45)
A 揺れる木立抜けて (0:45~1:10)
<間奏1> (1:10~1:22)
A 忘れてしまいたい (1:22~1:47)
B 信じてる (1:47~2:14)
<間奏2> (2:14~2:34)
A 澄み渡る夜空に (2:35~3:30)
A' 水の上 (3:30~3:28)
<S.E.2> (3:28~END)
敢えてイントロを前半と後半に分けてみました。
前半はまさにS.E.だけど、後半は別物やと思うんです。
歌が始まると音数の少ないメロディが素晴らしい。
@tpopsreryo:
イントロという名のS.E.の水の音なんだけど、どう聴いても水辺には聴こえないのよ。風呂桶に水を入れているとしか…w
それはさておき、イントロの後半はまたオーケストラのチューニングのような合わせで始まる。そう、後半からはシンセが混ざってくる感じね。
@junnovi:
桶感?w
@tpopsreryo:
歌が始まるとバックはオルガン。
そう、あの1曲目のオルガン…既に異世界から現実に引き戻されかけているのよね。伏線回収的な何かかも。
@junnovi:
あーそのオルガンの仕込みは流石に私も気がついたよ!
これは同じ音色なんやろうか。他の不思議な音が混ざっていて、本当に1曲目の「オルガン」と同じ音なのか、良く分からない。音域は近いんだけど。。。
@tpopsreryo:
バトルの後にたどり着いた水辺…異世界では水辺なんだけど、
パラレルワールド(現実世界)では実は風呂なんかなw
@junnovi:
お風呂に入る前だと、そこは水辺やもんねw
@tpopsreryo:
風呂いっぱいに水ためて…揺れる〜木立抜けて〜♪w
@junnovi:
伸びやかなAメロはまさに湯船で鼻歌交じりに…w
気持ちよさそうやねぇ〜。
Bメロは少しおごそかな感じが加わって。
ドラマチックな音が広がってくるところも中々好きです。
@tpopsreryo:
そう、この楽曲はBメロがポイントで、いわゆる起承転結の転に位置していて、少し翳りを見せながら推移して一気にコーラスの壁で盛り上げる構成は見事。
そしてここでも野見祐二の得意技が炸裂してて、ピチカートの分散和音にクレッシェンド〜デクレッシェンドで緩急をつけるシーケンス。
この繊細さがいかにもマジカルやね。
@junnovi:
ミステリアスな雰囲気もあるよね。
小さくポカッと鳴っているところから、性格の穏やかな上昇する分散和音が不思議さやミステリアスさを加味してる感じ。
あとイントロの後半からAメロが始まっても随所に鳴り続けてる金属的な音がBメロでも穏やかながら鳴っているのも野見祐二の意図が感じられるんやけど、どない思います?
@tpopsreryo:
あのBメロでおや?っと感じさせれば勝負アリなのよね。
あの絶妙なフックが効いて、間奏2のコーラスにカタルシスが生まれるという。
短い曲だけど美味しい要素は詰まってるのよね。
@junnovi:
恐らく本来は馴染まないはずのものが響き合って不思議な広がりを見せるBメロ、そしてそこから更に白く拡散するコーラスが間奏2で昇華する感じが、何とも音楽的に豊かで素晴らしいと思う。
小曲なんだけど決して手を抜いてないの分かる。
@tpopsreryo:
意図はあると思うけど何かと言われると…難しいな。
森の音楽隊的な?ヒューヒュー飛び交う音も聴こえるけど、妖精かな?w
@junnovi:
難しいねw
それよりも、この曲をこの位置に持ってきた意図の方がセンセとしては気になる感じ?
@tpopsreryo:
次の曲がエピローグだからね。
ラストが近づいている中で、あのオルガンの登場に意図は感じるかな…。
@junnovi:
いよいよエピローグ。
それへのプロムナード(散歩、遊歩)みたいな曲。
オルガンはなんとも効果的で、ここまで丁寧にアルバムを通して聴いてきた人に分かる仕掛け。
@tpopsreryo:
このアルバムを1つの物語とするならば、やはりクライマックスは「一粒の予感」だったと思うのね。
シングル曲があの位置にあるのはちゃんと意味があると思う。
で、バトル終了後のアナザーワールドからの別れのシーンが水辺とエピローグに集約されている…という気がするんだよね。
という感じで次いきましょうか。
@junnovi:
あとひとことだけ。
「一粒の予感」の歌やサビの繰り返しとかの好き嫌いはあっても、音楽的な要素の充実度は高いので、「水辺にて」では、そのお片づけに入っている感じがする。(「オルガン」というテーマの“回収”とかは好例やんね)ことからしても、間違いないと思う。
10.「エピローグ」
詞:工藤順子 曲:遊佐未森 編:野見祐二
野見祐二:computer & synthesizer programming
斉藤葉:harp
鶴来正基:piano
柴山洋:oboe d'amore
三谷真紀:oboe d'amore
浦文彦:english horn
遊佐未森:vox・background vocals
@junnovi:
A 笑い合った (0:00~0:27)
B お休みなさい (0:27~0:49)
C いつか穏やかな (0:49~1:10)
B お帰りなさい (1:12~1:32)
C 今もあの夢は (1:32~1:53)
A 土に降りた種の中で (1:53~2:17)
<間奏1>(2:17~2:59)
<間奏2>(2:59~3:19)
C いつかもう一度 (3:19~3:41)
A 白い冬が窓に届く (3:41~4:04)
A すれ違った悲しい日々が (4:04~END)
ようやくここまで来ました。
前奏なしに抑揚のある歌が始まり、それにオーボエなどの合奏が加わり、強い郷愁を覚える。
歌詞の「おかえりなさい」を待つまでもなく、一日の終わりに家までの道を歩きながら歌っている情景が思い浮かぶ。日が傾いて影が長くなり、どこか靄のかかった不思議な浮揚感を含みながら、足取りはゆっくりとして家路を辿る情景。
落ち着くところに落ち着く想念を醸成する作詞家の力量に感心するばかりなんだけど、特にこの曲については説明臭くなく、説教臭くなく、描写と叙述で聴者を巻き込んでいて、「ああ、ここまで来たんだな」とか「ここまで聴いてきて良かったなぁ」としんみりと思ってしまう。
以上が言葉とか意味について書きたかったこと。
次に音について書くと、単なるオーボエ合奏だけだとここまで強い郷愁感や浮遊感を感じることは珍しいし、それはBの「おやすみなさい 夏が終わる」から始まるとても丁寧な分散和音とその音色が大きな役割を果たしている感じがしてならない。
分散和音は得意な筈なのにそれを他に譲って、どちらかというと和音に個性を置いたピアノやストリングスとの関係も素晴らしい。
このバランスというか役割分担は、間奏でも前半と後半に分かれる(間奏1と間奏2)ことにも寄与していると思うのだけど、それがまたA&Bとの関係とも呼応しているのが丁寧に聴くと理解できてきて、そこで改めて音楽的な豊かさに感動してしまう素晴らしい曲です。
@tpopsreryo:
長めに解説していただいているので、余り申し上げることはないのですが、歌詞の部分は全面的に任せることにいたしまして、やはり構成とサウンドですよね。
この曲はBパートのフックが素晴らしいと思います。
ここで一旦しんみりさせることで、Cパートの抜けるような転調が生きてくるんですよ。
そしてそれを増幅させるようなコードワークでジワっとくるわけです。
そしてBパートではアレが出てきますよね。
「ハープ」でのあのファンファンがw
これは妖精のお見送りなんでしょうね。ご丁寧にハープも添えられていますし。
とはいえ主役はやはりこの楽曲でしか使われていないオーボエでしょうね。
「ハープ」ではリコーダーが使われていたけど、ここではオーボエというところに主人公の成長が感じられるというか…やはりこの曲は作品の中の配置的に「ハープ」と対になっているような気がするんですよね。
そこに何か意味があるような…わからないけどw
@junnovi:
まぁ!素敵な見解やね。
リコーダからの成長の印としてのオーボエ。なるほど!すばらしい。
それとハープの使い方も、触れてくれてる。
そういった仕組まれたモチーフの数々がとても理知的で計画性の高さを感じるね。
@tpopsreryo:
「ハープ」は異世界の入口だったんだよね。
「ロンド」で異世界へワープ、「森とさかな」は移動手段w
なので出口(エピローグ)で妖精が見送っているんだなと。
11.「月夜の散歩」
詞・曲:遊佐未森 編:野見祐二
野見祐二:computer & synthesizer programming
今堀恒雄:electric guitar
梯郁夫:percussion
梅崎俊春:synthesizer programming
遊佐未森:vox・background vocals・keyboard
@junnovi:
<イントロ1>(0:00~0:15)
<イントロ2>(0:15~0:44)
A ネコザメの赤ちゃんは(0:44~1:42)
<間奏1>(=OP2)(1:42~1:58)
<間奏2>(1:58~2:28)
<間奏1>(=OP2)(2:28~2:40)
A 散歩していると(2:40~3:09)
<間奏2>(3:09~3:40)
<間奏1>(=OP2)(3:40~3:55)
A' ろうそくの光の(3:55~4:22)
<アウトロ>(=イントロ1)(4:22~END)
ロンド形式のような構成。3つほどの音楽的要素を組み合わせてる。
この曲と次の曲とは合わせて何があるという訳ではないけれど、位置づけは一括りになるね。
1曲1曲が絵本1冊のような感じがする。
「はじまり~はじまり~(パチパチ)」と「ハイおしまい」という感じで、小話のエピソードが1曲ごとに展開してる感じ。
@tpopsreryo:
ワタシの解釈としては少し異なっていて、「月夜の散歩」は現実世界に帰ってきた真のエピローグでして、「ロンド」と対を成すもの。
「ブルッキーのひつじ」は本当に単なるボーナストラック。
というように思えるんだよね。
「ロンド」はあなたとわたしの話になっていてまだ現実世界なのね。
歌の終わりで異世界に吸い込まれるわけだけど。
そして「月夜の散歩」で帰ってきて2人で話しながら散歩ですよ。
異世界のことは記憶を失くしてるの。
歌詞でロンドン曇り空ってあるけど、ロンドとロンドンを掛けている…は流石にこじつけですスミマセンw
土の上はだしで…の部分は「土の話」に掛かっていて、記憶は失くしているけど、断片は残っている…ファンタジーなエピローグなんですよ。
サウンド面でもこの曲までは野見プログラミング要素が残っている。
野見カラーは控えめですが、代わりに今堀ギター、特に間奏の単純なソロフレーズの音色は真っ直ぐかつナチュラルで美しいね。
@junnovi:
歌詞が先に頭に入って来るから、ネコザメが出てくる。
羊と魚。アッ!「森とさかな」?
イヤイヤそれはさすがにw
12.「ブルッキーのひつじ」
詞・曲:遊佐未森 編:野見祐二
加藤高志:violin
大沢浄:violin
佐藤潔:tuba
村田陽一:trombone
十亀正司:clarinet in E♭
鶴来正基:accordion
梯郁夫:percussion
遊佐未森:vox・piano
@junnovi:
<イントロ>(0:00~0:15)
A ブルッキーの(0:15~0:30)
B 大きく深呼吸(0:30~0:49)
C いつでも(0:49~1:06)
<間奏1>(=イントロ)(1:06~1:21)
A ブルッキーの(1:22~1:36)
B グリムにアンデルセン(1:37~1:56)
C 心の窓に(1:56~2:28)
<間奏2>(2:28~2:44)
<間奏3>ランララランランラ~ン(2:44~3:14)
コーダ 巻き毛はくるり(3:14~3:22)
ランララランランラーン(3:22~END)
気楽な気持ちで締めくくる感じ。1冊の絵本の伴奏歌としてぴったりと寄せていってるよね。
メェメェじゃなくて、メッヘメッヘなんよねw
@tpopsreryo:
これはボーナストラックなんですよ、本当の意味で。
本編とは全く関係ないし、演奏にも野見は参加していない完全管弦楽生演奏なので、別物なんです。
こういうのははっきり「ボーナストラック」と明記してほしいのです。
かといって「月夜の散歩」も最後にしては中途半端なので、ハッキリした大団円があったら、もっとこの作品は上のランクに行けたんじゃないか…そんな思いを抱えて30年近く経過してるんですよ。
竜頭蛇尾感がスゴいのです。
もちろんアレンジメントは素晴らしいですよ。
各パートが入れ替わり立ち替わり澱みなく登場してくるし、完成度は高い。
アウトロもバイノーラルレコーディングで右へ左へ脳内を歩き回るし。
でもこれはボートラなので、『momoism』という作品を語る上では無関係であると個人的には解釈しています。
@junnovi:
そのとおりやね。まさにボーナストラックの様相の曲。
この曲を聴くとNHKの「みんなのうた」を連想するわ。あとピアノの指の練習曲。
Cのところのメロディは印象的で鼻歌で歌うことがあるよ。
@tpopsreryo:
そのとおり。「みんなのうた」タイアップみたいな曲。
その表現が一番しっくり来るね。
@junnovi:
最後は意見が一致したねw
ということで、『momoism』のクロスレビューとしては一旦ここで終了なのですが、本作の素晴らしきサウンドプロデューサーである野見祐二は、その後の遊佐未森作品でも何曲かの編曲に参加しています。8thアルバム『アルヒハレノヒ』では「太陽とアイスクリーム」「バスを降りたら」「海」の3曲、9thアルバム『アカシア』で「ピクルス」の1曲。この中から2曲をボーナスレビューとして紹介したいと思います。それではもう少しお付き合い下さい。
ボーナスレビュー①「海」
詞・曲:遊佐未森 編:野見祐二(8thアルバム『アルヒハレノヒ』収録)
野見祐二:computer & synthesizer programming
今堀恒雄:guitars
渡辺等:flat mandline
大石真理恵:marimba
桑野聖ストリングス:strings
遊佐未森:vox・background vocals
@junnovi:
この曲は『momoism』に収録されてないのだけど、私の強い強い希望で今回のクロスレビューに加えてもらった。ありがと。
@tpopsreryo:
これぞまさしくボーナスレビューってとこやね。野見祐二繋がりということでw
@junnovi:
遊佐未森についてはファーストから聴いて来たから他にも大切な曲はある。例えば「僕の森」「野の花」なんて是非ともセンセとクロスレビューをして掘り下げたい楽曲なんだけど、今回はそこをグッと我慢して(何で?)、野見祐二というクリエイターに焦点を当てて遊佐未森の作品を見てみたいというメインテーマがあるから、「海」と「ピクルス」の2曲を加えてもらった。
私はこの曲も「ピクルス」もリアルタイムでは聴いていなくて、『ハルモニオデオン』とか『HOPE』で一区切りして、洋楽とか(と言ってもPeter GabrielとかThe Neville Brothersとか偏りが激しいんだけど)、ワールドミュージックに興味が向いたから知らないのだけど、あとから『momoism』やこういう曲を聴いたらその後も邦楽は楽しくて聴き応えのある展開があったんだなぁと知ったよ。
@tpopsreryo:
『momoism』と「海」収録の『アルヒハレノヒ』の間にアイリッシュ全開の『水色』というミニアルバムがあって、それには全く琴線が触れなかったもんだから、『アルヒハレノヒ』にはある意味野見路線の継続を期待してたんだけど、ハワイアンとか言い出してちょっとなーっと訝しく思ってたのよね。
でもクレジットではまだ何者でもなかった冨田恵一が初参加してて、まさかのTony Mansfieldが参加してるってんで期待度が上がったんだけど…。
アルバム自体は全体的に曲が平凡なのでインパクトが弱くて。
せっかくのトニマンの無駄遣いで。
その中で野見は3曲アレンジしてるんだけど、『momoism』のような繊細な電子音は後退していて構成で勝負みたいになって…で、唯一アレンジとサウンドが瑞々しく融合できていたのが「海」というわけね。
@junnovi:
ありがとセンセ、私はこのアルバムにコメントができないから、欲しいところだった。
というのも、この曲しか聴いてないから!!
@tpopsreryo:
結論からすると、この曲だけでいいからw
@junnovi:
そういう点ではセンセって、私なんかよりよほど気長にアーティストに付き合うよね。
それにしてもこの曲はOPから思わず情景が思い浮かべてしまうね。スッと引き込まれる。
クレジットはどうなってるのかな?
@tpopsreryo:
この曲に関しては『momoism』を継承している感じがするね。シンセ周りの音作りとか…クレジットは、ストリングスは桑野聖でギターは当然今堀恒雄です。マンドリンは渡辺等やね。
@junnovi:
ふんふん。ドラムレスであること、そしてオープニングだけでなく、随所に登場するハープ、まさにセンセの言うとおり『momoism』を継承している作品やと思う。
だからこそのレビューやんね。
<イントロ>(0:00~0:10)
A 渚は(0:11~0:55)
<間奏A>(0:55~1:07)
B いつでも(1:07~1:29)
A 海から(1:29~1:52)
<間奏A>(1:52~2:03)
<間奏B>(2:03~2:15)
B いつでも(2:15~2:48)
<アウトロ>(3:10~END)
イントロのストリングスの勢いよくわきあがる夏の雲のよう。
しかもこれ、直ぐに転調してる?
Aメロから存在感の増すカラコロカラコロ。
ワンフレーズあってまた広がりのあるオープニングのストリングス。
豊かさを感じる。
間奏の低めのギターソロ。最初フレットレスベースかと思った。
アコースティックギターのバックもクリアな音色で美しいなぁと。
溶けていくようなポルタメントダウンするストリングスも憎い。
なんしか、ヘブンリーな夢見心地へとすぅーっといざなう仕掛けがあちこちにあるのにとても自然で、わざとらしさのないアレンジ。
@tpopsreryo:
やはりアレ、ギターだよね?^^;
この曲はあの冒頭からのストリングス一発やね。
アレでグッと聴き手を引き込んでいく。
そこからは野見ワールドのエレクトロオーガニックな質感が支配する。
ストリングスは波が打ち寄せるように満ちて引いていく。
雄大な自然を感じるのよね。これぞ野見マジック。
オーケストレーションは独学の野見マジックなんです。
@junnovi:
ストリングスをとても高く評価してるねセンセ。
このオーケストレーションのちょっと他に例のない広がりは、海辺に出る前に茂っている防風林の松林を抜けた時に、視界いっぱいに広がる夏の青空と海を連想させる開放感を想起させてくれて、素晴らしいわ。
あと、これだけ柔らかくて包み込むようなサウンドなのに、もたつかないのが聴いていて心地よいです。
@tpopsreryo:
こちらとしてはオーガニックな、生楽器で成立するようなタイプの楽曲なのに、ほぼプログラミングでサウンドを支配しているという、ほどよい人工感覚が魅力やね。
@junnovi:
メロディーラインの伸びやかさ、それを支えるオーケストレーション。
大きいサンゴやら小さい貝殻やらをカチカチと音を立てて、明るく開かれた海辺の光景を思い浮かべる。
その陽気さが良いなと。
@tpopsreryo:
『momoism』のような御伽噺感がないのは、あのストリングスの包容力のおかげかな。
海洋生物のざわめきのようなサウンドも現実に引き戻してくれる…現実感ないと思われがちだけど、『momoism』の異世界感覚とはリアル度が高い。
@junnovi:
そういう意味では、同じ遊佐未森・野見祐二作品だけど、『momoism』収録曲とはまた趣向が違うということやね。
納得やし良い仕上がりで聴きごたえのある曲で好きです。
ボーナスレビュー②「ピクルス」
詞・曲:遊佐未森 編:野見祐二(9thアルバム『アカシア』収録)
野見祐二:computer & synthesizer programming
吉川忠英:acoustic guitars
高桑英世ホーンズ:woodwinds
桑野聖ストリングス:strings
遊佐未森:vox・background vocals
@junnovi:
これはまた違うアルバムからのチョイス。私はもう全く聴かなくなった頃の作品なんだけど、センセはちゃんとフォローしてたんや。
@tpopsreryo:
この曲が収録している『アカシア』は1996年リリースね。
まだ遊佐を諦めていなかった時期で、外間が戻ってきたんだけどアレンジャーに冨田恵一が加わったのが気になったのよね。
前年のnice musicのラストアルバムで数曲冨田が手掛けた楽曲も良かったので注目してたんです。
で、蓋を開けてみれば地味だけど悪くない。
少し大人になって童話的感覚が抑えられてしっとりしてきたけどそれが良かったのね。
草野マサムネ&David Motionの「野生のチューリップ」みたいな派手なのもあるけど、基本は湿り気があり程よくエレクトロ。
聴いたら気にいるかもしれないよw
@junnovi:
そうなんやw 好きになるかなぁ。
詳しく経緯を書いてくれてありがとう。
私では書けないところだからありがたいです。
そういう背景とか経緯がないと本当はちゃんと分からないしコメントしちゃいけないよなぁと思いつつ、せずにはいられないのです。
@tpopsreryo:
『momoism』→『瞳水晶』→『空耳の丘』→『アカシア』→他
の順かなw
@junnovi:
センセの中での遊佐未森のアルバムのランキングってこと?
@tpopsreryo:
そのとおりw
@junnovi:
さすが『momoism』高い。その次が1st、2nd、で『アカシア』なわけね。
聴く価値ありそう。てか「他」ってw
私は『ハルモニオデオン』まではちゃんと聴いたよ。
『HOPE』はつまみ食いになって、それでフェードアウト。
まさかその後にこんな素晴らしい展開が待っていたなんて。
@tpopsreryo:
『ハルモニオデオン』→『HOPE』→『モザイク』と来て完全にマンネリ状態だったのね。
そこに来てあの緑色のジャケと野見祐二全面プロデュース。食いつきましたねw
『アカシア』は単純に曲が良いと思うよ。「野生のチューリップ」以外はw
だから聴けるんだと思う。「風が走る道」「天使のオルゴオル」「夏のてのひら」はQujilaの杉林恭雄作詞だよ。
@junnovi:
野見祐二と遊佐未森の声質と歌唱法は見事にマッチし、音楽的にも相当な仕上がりを見せたってことはもうこれまでのやり取りで確認できたね。
杉林恭雄。そこで来るんや。
この2人、どこで接点があるんだろうとずっとずっと思ってた。
杉林恭雄の詩に触れたというのに、その後の遊佐未森の自作の歌詞のあの説明っぽいくだりは、残念やなぁ…。
@tpopsreryo:
まぁ杉林は福岡智彦が呼んでるからw
瞳水晶の「ステイション」の作曲にQを呼んでるくらいだしね。
Qは(Qujilaの)キオトの別名ね。
@junnovi:
あ!「Q」!
『MIX花カラスneon』w
『MIX花カラスneon』の予約申込者だけに配布された限定の小冊子で、杉林恭雄と楠均と福岡智彦の3人鼎談があって、そこに「Q」が話の中で登場してて。何のことか大体分かるけど。「Q」はキオトのことやんな。
@tpopsreryo:
そんな話あったっけ…探してもないw
@junnovi:
そういえば数年前からパタッとQujilaを聴かなくなった。センセと以前クロスレビューしたあとくらいから。聴き過ぎたのかも。あれで自分の中で満足したのかなぁ。
東京方面ではライブやってるけど、他の所にはほぼ来ないから、そういう点でも聞くきっかけがなくて。尤も、彼らの場合は特段ライブでないといけないことはなく、家で聴く方が私には向いているけど。でも、ホンマに聴かなくなった。
聴く聴かないという点で言えば、この「ピクルス」はこの数年で繰り返し聴いている曲のひとつで、iTunesにあるトップ25を見たら、なんと8位!再生回数105回w!そんなに聴いてたんや!そこまでとは自覚がなかったから自分でも驚いた。もうこれは大好きな部類やんな。
まぁ何しか「ピクルス」は何度聴いても飽きない力を持ってます。聴きすぎると新鮮さが失われ聞き流してしまうけれど、今のところちゃんと聴けてる。
何がそんなに良いのかだけど、前奏からとても良いのです。控え目な音と三拍子。この組み合わせがたまらなく良いのです。どこを取っても三拍子。あ~でも2拍目にアクセントあるから、8分の6拍子かも。まぁなんしか3拍子系。
穏やかな海辺に停泊する船のポポポ、ポポポって鳴る軽やかで陽気なエンジン音みたいな音とか、繊細な音色のアルペジオとか、そして何より豊かな広がりのある呼吸と歌の旋律。全てが三拍子のまとまりの良さを存分に活かしてる。先を急がないところが音楽的姿勢の余裕とか懐の深さを感じてしまうねん。そういったものが自分の中に足りないと感じたり欲しいと思った時に、聴きたくなるねん。
長い間、私の中の遊佐未森は「僕の森」であり、「野の花」であったんだけど、こんな思いもよらない名曲に出会えるなんて。
@tpopsreryo:
この曲は野見アレンジだけど、よりアコースティックで、彼のオーケストレーション技術が詰まった逸品ですね。
鳥の囀りのようなピッコロに代表される木管の使い方が実にオーガニックで、かつ壮大な世界観を構築しています。
個人的にはもう少し繊細な電子音や機械的な部分があった方が好きなんだけど、彼のオーケストレーションは本当に好きなので…独学でここまでできるセンスが羨ましいですね。
@junnovi:
聴くだけで情景が目に浮かぶ。
穏やかな晴天の日に、カモメが飛ぶヨットハーバーの明るい景色を、窓辺に頬杖ついていつまでも眺めてるそんな感じ。あと、メンデルスゾーンの「無言歌集」のようでもあり、ショパンの前奏曲集の1曲のようでもあり、舟歌のようでもあり…。何しか褒め言葉が尽きないわけです。
あと俗っぽさがないのに、よそよそしくないのがいいなぁと思うねん。
@tpopsreryo:
デビューがおしゃれテレビなのでどうしても繊細な打ち込みセンスに目が移っていたのだけど、彼にとっては自身で学んできたオーケストレーションのシミュレーションでしかなくて、それが『momoism』(と『耳をすませば』のサントラ)である種の完成を見て、次のフェーズに移った感があるのよね。
もう電子音で表現せずとも彼なりの世界観をオーケストレーションで構築できるという。
@junnovi:
私はセンセとは違ってオーケストラについては、『momoism』の時と違って、すごく自然に聞こえるねん。打ち込み的なものは益々感じられなくなっていて、ストリングスの在り方として、ひとつの答えなのかも知れない。
何か述べると褒め言葉しか出てこないのだけど、Aメロでベースラインが同じ音程を保っているところは、何かの前進や解放を暗示しているようで、力を得られる気がする。
同じ音程のベースということで言えば、今思い付くのは角松敏生の「I CAN GIVE YOU MY LOVE」なんだけど、他にもいくらでもそういう曲があるよね。
そういう曲を聴くと決まって私は頑張るぞ~とかワクワクとかそんな気持ちになるねん。条件反射的にw
『momoism』にも共通する最良の何か。それがこの「ピクルス」でも感じ取ってしまう。
歌詞には説明臭い部分がなくなり描写に徹していて、成長を感じてしまう。
メロディも3拍子の良さを存分に活かし、詰め込み過ぎず出てくる思いに任せるような余裕もあって、素晴らしい。
詞、曲、アレンジ、どこを取っても素晴らしく、遊佐未森楽曲のすべてを知っている訳ではないですけれど、この上ない1曲になっていると私は思うばかりです。『momoism』の楽曲とともに、この曲も知ることができて良かったと思います。
@tpopsreryo:
同じ音程の8分ベースに1つ16分を入れてみると途端にテクノになるんだけど、個人的にはその方が嬉しくて、ただの8分は…という感じだけど、このオーガニックサウンドなら正解だからそれで良いと思います。
ただ『アカシア』はやはり野見アレンジであるこの曲が突出してるとは言い難くて、全体としてクオリティが高いと思う。
外間がプロデュースで絡んでいる作品の中では『空耳の丘』を凌ぐかもしれないな、とさえ思うので、是非聴いてほしいなとw
@junnovi:
ということで「ピクルス」についてはこれでいい感じ?
@tpopsreryo:
ピクルスについてはよろしいかと。『アカシア』聴きましょうw
@junnovi:
『アカシア』ね。了解!
あ、あとセンセ、この曲クレジット見て驚いたんだけど、アコースティックギターが吉川忠英なんや!
@tpopsreryo:
アコギの大御所。80'sのアコギはほぼこの人だったよね。
@junnovi:
GONTITIが出るまではといっても、きれいに棲み分けできてたね。吉川忠英ってホントにあちこちで名前を見かけたよ!みなさん何かとお世話になってるよね吉川忠英に。ただ驚いたのはEPICの秘蔵っ子のような遊佐未森のバックにも出てくるんだと思って。
@tpopsreryo:
GONTITIはデュオであり客演はほとんどなかったので別ジャンルって感じで…。吉川忠英は坂本龍一や高橋幸宏のアルバムにも参加するくらいで、本当にどこでも見かけたギタリスト。しかもエレキを弾かないという頑固一徹のイメージですね。
まぁここで吉川忠英を起用してくるところからも、野見アレンジのエレクトリカルからの脱却が見えるような気がするよね。
@junnovi:
そやねGONTITIはデュオや。二個一。全然ちゃう。
確かにどこにでも登場してた吉川忠英だけれど、クレジット見て意外って思ってしまった。EPICってどこかおかかえで囲い込んでる印象があったから、こういうどこでも登場する名プレーヤーは却って敬遠してるのかなって勝手に思ってた。
@tpopsreryo:
佐橋佳幸とかねw
@junnovi:
あー!佐橋佳幸!EPICの超お気に入りのギタリストやん。
@tpopsreryo:
もともとUGUISS時代からEPICだからね。
野見祐二はギターには一貫して今堀恒雄を起用してたから、そこはEPICうんぬんは関係ないね。ましてはディレクターは福岡智彦なんで、そんな忖度はありませんw
@junnovi:
そっか!失礼しました!w
〜エンディング(総括)〜
@junnovi:
ということで、総括です。
今回、私からのお願いでセンセが応じてくれた遊佐未森『momoism』+2レビュー、センセはどうでした?
自分からやりたいと言っておきながら、歌が、声がと何やねん、文句かいと。けれども発売から何年も経った今頃になってようやく『momoism』を初めて聴き、深く瑞々しい感動を覚えたことを、そして過去の私が知る遊佐未森の楽曲のどれよりも好きな曲が出て来たことを、どうしても自分の中だけで収めることができず、センセにレビューを求めたのでした。
@tpopsreryo:
ワタシはね、この話をいただいた時、嬉しかったんですよ。
遊佐未森ってやはり外間隆史の世界観ありきという評価のされ方じゃないですか。『空耳の丘』『ハルモニオデオン』『HOPE』の3作にビジュアル面も含めて集約されると思うのです。
でもその中で『momoism』にスポットを当ててくれて感謝しかないのです。
あの作品はコンセプチュアル的にもサウンドデザイン的にも明らかに一線を画したチャレンジングな傑作だし、決して数多くない野見祐二完全プロデュース作という希少性もあるし、件の3作品を凌駕していたと思うからです。
野見繋がりで「海」や「ピクルス」を取り上げてくれたのも良かった。
あの辺りは遊佐人気も下火になりつつあったけど、音楽的に充実期でもあったと思うから、振り返りの意味はあったと思うのです。
ただレビュー自体は予想通り野見祐二に寄りすぎて、遊佐本人に関してはフォローし切れない感は否めないというか、その辺りは思い入れの弱さが隠せなくて、遊佐ファンには見せにくいかなぁとも感じましたね。
歌が…と言ってる時点で怒られるだろうしねw
@junnovi:
デビュー当時から知り、その後も聴き続けて来た中で思うのは、外間との一連の作品の強固なコンセプトは個性的で他では見られない個性だったし、まさにEpicソニーだったからこそ実現したアーティストだっただろうなと思う。
Epicはとても大切にしたし、成功しただろうし、継続してアルバムを作ることができたんだろうね。
今回取り上げて欲しいとお願いした理由が遊佐未森と野見祐二とが作った作品が、私の知る遊佐未森ではなく、一層ピュアでフレッシュで瑞々しい音楽が何とも魅力的だったから。
なのでセンセが指摘する通り、どうしても野見祐二寄りに、野見祐二びいきな書き方になってしまった。
もし遊佐未森をバランス良く語るのであれば、もっと外間隆史のことをガッツリ取り上げないといけないし、毛並みの違う1stの位置づけや、空耳楽団などのバックの演奏陣のことにもちゃんと触れないといけない。
けれどもそれをすることが主な狙いではなかったから、偏りのあるクロスレビューになってしまった。
@tpopsreryo:
そのあたりは今回は遊佐未森というアーティストのレビューではなく単体作品のレビューということなので致し方ないことかと。
外間ワールドのことを言及してしまうと思い入れのなさが露見してしまうのでw
@junnovi:
確かにねw
外間は杉林恭雄とは相性良さそうやったけど、何でかなぁ。
@tpopsreryo:
これは個人的な見解なのですが、遊佐未森デビュー時、『瞳水晶』は成田忍メジャー初プロデュース作品という触れ込みだったので、初聴きの約半数はURBAN DANCEファンだったと推測しています。
しかしURBAN DANCEにはならないのは当たり前としてサウンド面では一癖あるものを求められていたし、実際純朴な楽曲にスパイスを入れたようなクセのある音やフレーズが多かったんです。
だからこそ出過ぎ感もあって成田がクビになって外間ワールドに移るわけだけど、もちろん緻密な音づくりはなされてはいたけど、クセのあるストレンジな音は影を潜めていって…オーガニックな質感やイメージを求められていたから。
そこでこの『momoism』でオーガニックな質感はそのままにクセも戻ってきた感があったんですよ。
稀代のアレンジャーである野見祐二のおかげでね。
そして1stでは実は見過ごされていた電子音との相性の良さも進化する形で再認識することができた。
ここに『momoism』の功績と存在意義があるのではないかと…そう思うわけです。
@junnovi:
センセのその視点、当時からずっと一貫してるよね。
歌があるのにオーガニックな環境音楽的なキャラクターが前面に出たというくだりは共感する。
あとね、これは締め括りの前にどうしても書いておきたいことがあるねん。
今回、かなり遊佐未森の歌い方について書いたのだけど、その中でひとつ今頃になって分かったことがあってね、それは彼女は発声にアタックをできる限り排しているということ。
パーン!って勢いよく発声するのを極力しないように意識してるってこと。パンチのある歌い方ってよく言うけど、その真逆ね。
昔の和田アキ子の「ハッ!」とかもんたよしのりの「ギャランドゥ」とか西城秀樹の「ブーメラン」とか布施明の「変わったぁ〜!」とかはパンチのある歌い方w
ふわぁ〜としたヴェールのような包み込むような歌い方。ここまで意識的にしている人は中々いないだろうなとようやく気がついてん。そこまで考えが及んで「なるほどな」と思ったのと「悪く言いすぎたな」ということ。
@tpopsreryo:
いわゆる声楽上がりのポップス歌手はそういう傾向にあるね。
クラシカルな素養をポップスの世界に生かそうと思うと意外に難しいらしくて。
(私の)嫁ちゃんが声楽習ってて、ポップスを歌わされると上手く声が出せないらしい。
そういう意味では声楽科ではないにせよ、アカデミックな世界で学んだ唱法をポップスで生かすためのスタイルを彼女は確立したのかもしれない。
無理してポップスに寄らずして、イメージ戦略やコンセプトに沿った楽曲も含めて新境地を開いたと言っても過言ではないかと。
@junnovi:
そこに目をつけたのが外間だったのかな。
そしてあのおとぎ話の世界。空耳楽団。
@tpopsreryo:
まぁ遊佐明子時代はそういう歌い方じゃなかったわけで。ただいささか無理してる感もあったところを彼女のポテンシャルに合わせて作り上げたコンセプトでソロデビューとなったというわけね。
@junnovi:
前にも書いた気がするけど、どうしてもエスパー魔美の「♪好きよと言い出せないうちに~」を思い出してしまうw
それにしても、ホントに歌唱法が違うね。このyoutubeのコメントにあるけど「8の字唱法」!あ~そやそや、何か思い出した!!
@tpopsreryo:
何なんやろね、8の字唱法ってw
@junnovi:
たしか「星屑の停留所」とか「0の丘∞の空」とかで、ゆらゆら揺れてたやん?アレちゃう?あ、あれは踊りかw クラゲみたいなん。(またディスる・・・)
なんか検索したらインタビューがあるね、本人談で、地声から裏声に行くときにこぶしつけるのに腹筋使ってって言ってる。その時の感じが8の字とか。あやしいなw。
でも何か当時言ってたよね、8の字唱法って。いま初めて理解したけど。
でも理解できないけど!w
↑ なんか、私と近いもの感じる~。あやしい、あやしい、って言いまくってる~w この文章書いたの、私なんかな!?w
(注:違いますw)
最後の方で「私は羊」と書いているくだりにハッとする。たしかに遊佐未森のモチーフの中に羊ってあるよね、絶対。ブルッキーじゃなくて。あやしいわw
@tpopsreryo:
もうそのサイトがしっかり総括してくれてるからいいんじゃないの?w
ものすごくテッチー読者な臭いがする文章だけど、古参のファンは大体あんなもん。
だって、なんだかんだで成田忍から入ってきてるヤツらばかりだから。
(極論ですw)
「私は羊」はザバダックのアルバムに引っ掛けてるね。言いたかっただけでしょw
良かったね。言いたいこと全部言ってくれてるやんw
でも8の字唱法の意味はなんとなく理解したよ。奥行きと流れの問題ね。
@junnovi:
ザバダックか〜読めてなかった〜!
そう、総括してるよなこのサイトw 外間があやしいとか、愛情たっぷりで良いね。
ということで、これで終わっても良さそうやね。長かった〜。センセ本当にありがとうございました。楽しかったです。
@tpopsreryo:
何年やってんだよ!っていうねw(注:2年間です)
本当に終わるのか?と不安になりましたがようやく終えられておめでとうございます。
しかし1枚のアルバムのレビューだけでここまで時間が経過するのか…
やはり人間締め切りを決めないとこうなるのかと思い知らされましたw
インディーズに拠点を移したアーティストが途端にリリース間隔が長くなる要因の1つを体感できた気分ですw
@junnovi:
長かったよねぇ~。ホントにお疲れ様でした。
というわけで一貫の終わりでございます。
2021年から休み休み少しずつ積み上げたレビューだったので時流が掴めない感もありますが・・・あとお家芸の脱線が酷すぎて申し訳ありませんでした。
それではまた次の企画でまたお会いしましょう。おそらく近々別の企画がありまして、クロスレビュー企画は次はいよいよGRASS VALLEYの登場です。ただしいつになるかはわかりませんw
それでは、皆さん楽しい音楽ライフを!
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