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初ソロアルバム「HIROFUMI CALENDAR」リリース記念:宮城県女川町在住のテクノポップアーティスト・遠藤裕文(HIROFUMI ENDO)インタビュー(後編)
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前編から間髪入れずの後編となります。前編ではこの度めでたくリリースされましたHIROFUMI ENDOこと遠藤裕文さんのソロアルバム「HIROFUMI CALENDAR」について全体的な部分を遠藤さんにお聞きして、さらに遠藤さんのこれまでの音楽遍歴を、スノーモービルズ時代も含めて辿っていきました。
そして後編ではいよいよ「HIROFUMI CALENDAR」収録の各楽曲について、掘り上げていきたいと思います。とは言いましてもやはりここはTECHNOLOGY POPSの別邸ですから、どうしても聴き方がサウンドに特化しがちになりますので、その辺りはご容赦願います。サンレコとかが好きな方にはそれっぽい感じになっているかもしれません(笑)
では早速後編を進めてまいりましょう!(前編よりは短くなっていると・・・と思ったら思いのほか長くなってしまいました・・笑)
■「HIROFUMI CALENDAR」(2019.9.10)
ーーテクノポップというか、音楽って使用機材で決まるものではなく、あくまでもアイデアや精神で作られるものであるという一種の自分の信条なのです(遠藤)
1月.「コモエスタ・ミ・アモール」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
ぶっといシンセベースですね!
歌の合間に遠くからすっと入り込んでくるシンセフレーズと、キラキラなアルペジオ(他の曲でも登場頻度高いですね!)が美しいです。
また、1周目が英語、2周目が日本語が違和感なくてさすがだと思いました。
ラストのサビ前のフェイザーバリバリのギミック?アレもスゴイですね。
ボイス変調したあの部分は何て言っているのでしょうか?(笑)
1曲目としてはゆったりしていますし、比較的地味な印象なのですが、名盤の1曲目としてはよくあるんですよね。
じんわり滲むような味わい深い楽曲です。
@遠藤
このぶっといシンセベースはPolysix(KORG Legacy Collection)のシンセベースです。「針ノ浜ストラット」の16分シンベもそうですが、このPolysixのシンベの音がなかったら今回のソロアルバムの音作りは非常に難航したのではないかと思えるくらいキーになった音です。それまではReason付属のシンセでシンベの音作りしていたのですが、ニュアンスが全然出ずに困っていたらPolysixが簡単に解決してくれました。Polysix様さまです。
このキラキラアルペジオはMono/Poly(KORG Legacy Collection)のアルペジオです。これもまた素晴らしい存在感のある音でこのいかにもアルペジエイターですという音を随所で用いることで昔のアナログシンセ風の音を使っているという刻印にしたかったのです。
歌の合間に入ってくるシンセフレーズはLogic Systemの「東方快車」の「哀愁のオリエント急行」の影響が大ですね。
英語の歌詞と日本語の歌詞はほとんど意味が一緒で、ある意味過去との決別と未来への強い意志を意味しています。そこに多少皮肉もプラスされていると(笑) コモエスタコラソン(ご機嫌いかが?親愛なる人)と言っておきながら言いなりにはならないよさよなら!と同時に言ってしまうというアンビバレントな心持ちです。ボイス変調した部分は歌詞にもある通りフェリス・アニョ・ヌエボ(あけましておめでとう)です。1月の歌なので(笑) コモエスタもこれもスペイン語です。
フェイザーのギミックもそうですが、今回このミックスはスギン(杉本健)の手腕が相当発揮されていて、全体的に8分裏のEDM的ゲートがかかっており、ブワブワと裏のリズムが出てきたり引っ込んだりといった音像になっています。力強い、アルバム1曲目にふさわしいミックスになり非常に満足しています。いい意味でえげつないミックスであり、きっと自分ではこういったミックスはできないのでこれこそミキサーとの最良の化学変化であると思います。
@tpopsreryo
そうなんです!このブワブワなEDM風ミックスが単なる80’sリバイバルではなくて、現在進行形の時代の音になっているからこそ、現代の若者にも刺さると思うのです。オープニング曲というのはアルバムの顔とも言える存在ですから、つかみはOKというところですね。若者もアラフィフもこういうタイプのサウンドが好きなリスナーは心を持っていかれると思います。
PolysixやMono/PolyはKORGらしいコシのあるサウンドですので、シンセベースの太さの正体にはすこぶる納得いたしました。Mono/Poly、アルペジオのこの分散和音は繊細な音になるんですよね。4VCOを4音ポリモードにすると1VCOずつに分かれる仕組みだったと思います。で、モノモードにすると4VCOが合体するのでぶっとい音が出るという。良いシンセでしたよね。実機はものすごく重たかった・・・実は所有していた時期があったのです(笑)
あの隙間に遠くから入ってくるフレーズは「哀愁のオリエント急行」ですか・・・Logic Systemの。そういえば松武(秀樹)さんっぽい音色ですね。あれは何の音源を使用されているのでしょうか?この楽曲のポイントの1つと考えておりますので気になります・・・。
ボイス変調部分のセリフは、「あけましておめでとう」!
そうですよね。1月の歌ですもんね。やられました!(笑)
「最近、どうなの?」も1月ですからね、年賀状っぽいですよね。
@遠藤
あの隙間に入ってくるPluck系の音は全てReasonのEUROPAです。本当にこのプラグインはいい仕事します。Polysixなどとは違って、ディレイやフランジャーなどのエフェクターがついているので音作りが最終形まで一気に作りやすいのです。
2月.「新浪漫主義」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
これは!どうにも浪漫!ニューロマンティック!
コーンというソナー音、ジュクジュクしたザップ音。THE 80'sですね!
乾いたギターフレーズが良い味を醸し出していますが、そうでした。ニューロマってああいうギターもポイントの1つでしたね。
あの部分は遠藤さんの手弾きなのでしょうか?
スネアは当然ながらSIMMONSですね。しかも低い方のズシンッとくるヤツで。
めちゃくちゃ好きな音です。嬉しいですね~。
間奏の幻想的なダブ処理みたいな部分も当時の空気感をしっかり表現しきっていますね。
そしてもちろん、歌詞ですよね。突っ込んで欲しい部分ですよね(笑)
あまり自信がないのですが、
Visage、Landscape、Ultra Vox、Bow Wow Wow、
Spandau Ballet、OMD、Talk Talk、A Flock Of Seagulls、
Depeche Mode、Soft Cell、Dead or Alive、Simple Minds、Human League...
Visageの「Fade to Grey」やJAPANの「孤独の影」も忍ばせていて、
まさにニューロマ博覧会という感じです。
ラストの爽やかなコード感覚とスネア2拍で終わるところもお約束ですよね。
@遠藤
このギターはAメロのカッティングとBメロのチャラーンというコード弾き全て僕が実際に弾いています。実はこのアレンジ以前のもっとロックっぽいアレンジの段階で弾いていたギターなのですが、ニューロマアレンジにしていく段階でも最後まで残しました。ああいったカッティングも確かにあったなと(デュランデュランとかに)。
ソナー音はどうしても入れたくて、テクノポップ好きとしては(笑)
そしてSH-101で作ったピュンピュンリズムを刻むザップ音。これはベースのフレーズもそうなのですがYMOの「サーヴィス」の「Chinese Whispers」を踏襲したものです。(あるいは幸宏さんの「Wild & Moody」の「Bounds of Reason Bonds of Love」です)
あの細かい動きの細野ベースです。あれをどうしても再現したかったのです。ニューロマといいつつYMOからの影響も惜しげも無く出したいという。
バスドラとスネアはあえてSIMMONSにしました。それも延々8ビートを刻むシンプルなパターンで。スギンにお願いしてゲートかけてもらったりしてこれもまたいい意味でえげつなくなり最高のドラム音になりました。
間奏のダブ処理もスギンに遊んでもらいました。ラストの転調する爽やかなコードはスノモーの「雨」でもやっていますね(笑) 好きでよくやるのですが、実はこれ、GRASS VALLEYの3rdアルバム「Style」収録の「Staying Heaven」の間奏に入る部分の影響が非常に大きいのです。初めて言いましたが。あの部分の開放感が大好きで。同じ伸ばす1音のメロディーでコードがガラッと変わるというのが衝撃的で。
歌詞はツッコミの通りです。さすがです。完璧にその通りです。歌詞に洋楽のバンドの日本語訳が載るというのは聞いたことないなあと思ってチャレンジしてみました。やってみたら、ニューロマバンド名の日本語訳を並べるとそれだけで結構退廃的なムードが出るもんだなと思いました(笑)
@tpopsreryo
これは遠藤さんの解説をお聞きして、全てに得心しまして大笑いしてしまいました(笑) そうですよね、「Chinese Whispers」であり「Bounds of Reason Bonds of Love」ですよ! あのザップ音、当時は好きでたまりませんでした。もし自分で曲を作るとしたら必ず入れようと思っていた音だったので、そこに固執されているのには共感以外の何物でもありません。
そして細野さんのベースですよね。独特の軽妙なスラップ。確かにこの曲でもフレーズとして再現されていますね(笑)
ソナー音は当然トニマン(Tony Mansfield)ですね。これはもう鉄板です。これがあればテクノポッパーのお墨付きってもんですから。そしてギターはやはり全て遠藤さんだったんですね。ニューロマらしさ、よく出ていると思いますよ!
SIMMONSはどうしても電子音なので軽くなりがちなんですけど、ゲートをかましたりピッチを落としたりするとズシッとしたボトムのあるスネアになりますよね。さすがスギンマジック!
この音だけでも満足なんですが、間奏のダブ処理なんかは教授(坂本龍一)の「B-2 UNIT」を彷彿とさせる部分もあったりして、なんだ、がっつりYMOじゃないですか!ってツッコミたくなりました(笑)
そしてラストのあのメジャー7th系コード、確かに!「雨」もそうでした(笑)
確か「雨」もドラムは幸宏さんスネアを模倣したものだったと記憶していますが、あれも雨上がりの情景にあのコードがマッチしていてお気に入りの感覚だったのですが、そうだったんですね。
GRASS VALLEY「Staying Heaven」!それだ!気づけばよかったです。当然大好きな曲ですし大好きな部分ですよ、あの間奏の浮遊感のあるコードのシンセパッドは。YMO+GRASS VALLEY、最強じゃないですか・・・。
それとスタートから散りばめられている奥行きのあるメタリックなシーケンス、あれは何の音源でしょうか? 遠藤さんのセンスが凝縮された音のような印象なのですが・・・また、ソナー音の音源も知りたいです!
@遠藤
メタリックなシーケンス音はこれもEUROPAにあった音をエディットして使っています。そのままだとあの雰囲気は出ないので、ディチューンをずらしたりして不安定な音、中期YMOが好んで使っていたあの音をシミュレートしました。ここではぜひあの当時の音を使いたかったのです。
3月.「針ノ浜ストラット」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
この曲はデモの頃から一番好きな曲でした。より爽やかなScritti Polittiみたいな(笑)
今度のスネアは爆音ですね。ゲートリバーブの効いたスネア&タムの心地よさときたら・・。
バキバキのシンセベースと共にこの楽曲のアクセントとなっている、ダダダ、ダダダのフィルインは流石の幸宏ドラムリスペクトでしょうか?
白玉のシンセのキレも良いですね。スゴく「Neu Romantic」の音がします。
Bメロの下降音とか「Grand Espoir(大いなる希望)」ですし、2周目のAメロのファニーなビロビロ音とか「Extra-Ordinary(非・凡)」っぽいですよね。
そして何と言っても英語のサビの爽快感!私は運転はしないのですが、スゴくドライブ感があります。
あれ、針ノ浜をランニングする曲想でしたでしょうか?
ただ結構長くリフレインされる部分は、ランナーズハイといった印象ですね。
PINKの「Isolated Runner」に通じる部分があります。
それにしてもこのキレの良さ、ミックスを経て抜群に増しましたね!
@遠藤
この曲の音像はもちろんScritti Politti的な80年代打ち込みソウルも参考にしましたが、気分的には81年の音の雰囲気を引きずったままYMOが「浮気なぼくら」を作っていたらどうなるか?と言ったシミュレーションでもあります。YMO「Chaos Panic」や細野さんの「Sports Man」からの影響が大きいです。
スネアとキックはそのため、浮気なぼくらで使われていたLinnDrumのあのリムの効いた独特な幸宏スネアと重くて硬いキックを意識して音作りしました。スギンにゲートリバーブかけてもらったら本当にあの当時の音になったのですごく狂喜したものです。タムももちろん83年マナーに従ってSIMMONSにしたのです。ダダダの3連符フィルはもちろん幸宏さんリスペクトです。「Lotus Love」とかの雰囲気ですね。
その83年の音像に81年当時の名残として幸宏さんの「Neu Romantic」で使われているMono/Polyで作ったBメロの下降音やJUNO60(TAL V2 U-NO-LX)で作ったLFO速めにしたピロピロ音をプラスしたと。「Neu Romantic」って楽曲や構成の完成度が高くてすごく好きなアルバムなのですが、随所で効果音的にいろんな音が使われているじゃないですか。それこそProphet5を使い倒したという。その音を再現したかったというのもあります。
もちろんこの曲は針ノ浜をジョギングしている時に着想を得たものです。それこそ女川の針ノ浜に至るルートで目に入ってくる風景をそのまま歌詞にしました。走っている時というのは無心に近くなるのですが、青い空と海という絶景をずっと見ながら走っていることでこういった爽快感のある曲ができたのです。ただ、走っているとしんどくなることももちろんあるので英語の歌詞にはそれを人生になぞらえて「走り続けろ、何があっても大丈夫、自分の(君の)人生をもがき続けろ」となりました。結構長く生きていると人生いろいろありますから(笑) でも、走り続けなければならないし、もがき続けなければ次のステップには進めないということもあるので。
@tpopsreryo
ああ、確かに音は「Neu Romantic」の要素が強いのですが、全体的な音像は「浮気なぼくら」・・・と言いますか、改めて「Chaos Panic」聴いてみたら、これは影響力強いですね(笑)
サビの部分、英語の歌詞の語感というかリズム感も含めてリスペクト度が高いです。ダダダの3連符フィルの本家にもしっかりありますしね(笑)
針ノ浜でのジョギングに着想を得て「Sports Man」というのも出来過ぎな感じなんですが、本当に朝の海沿いを感じさせるような爽快感がグッと襲ってきますし、あのバキバキのベースラインも相まって「ああ、1983年ってこんな季節感だったなあ」と思いました。私、1983年って小学6年生の子供だったんですけど、開通したばかりの東北新幹線に乗って、盛岡から大阪の親戚の家まで1人で夏休みに旅行したのです。その時に新幹線で聴いていたのが「浮気なぼくら」のカセットテープでして、「浮気なぼくら」といえばその時の朝の夏休み感のイメージが強かったのです。この曲は3月のテーマですが、爽快感という意味ではイメージの共有がバッチリハマっていて嬉しいですね。
1点素朴な疑問なのですが、あの「Neu Romantic」風の音色はMono/PolyやJUNO60のエミュレートソフトを使用していて、そのシミュレーションぶりには感嘆するほかないといった感じなのですが、本家のProphet5のエミュレートソフトもいくつか出回っているのにそれらを使用することは考えなかったのでしょうか?
@遠藤
これはスノーモービルズ時代から言えることなのですが、確かに以前のミュージシャンがProphet5で出していた音を今Prophet5のエミュレーションソフトを使えば簡単に出せると思うのです。しかし、それが何になるとずっと思っていて、それこそ当時Prophetに手の出ないアマチュアのミュージシャンが、それこそPolysixやJUNOなどで必死になってあの音に近づけるように音作りしていたはずです。その音作りを一生懸命やると言う精神を忘れられないのです。だからスノモーでも極力Prophetは実機があるのにそんなに使用せず、自分たちが持ってきたRoland JV1080やKORG 01/wなどであの音に近づけるように音作りしていたのです。今回のこのソロアルバムでもこの精神が遺憾なく発揮されていると。
テクノポップというか、音楽って使用機材で決まるものではなく、あくまでもアイデアや精神で作られるものであるという一種の自分の信条なのです。
ーーユカちゃんのおかげでこの曲が何倍にもいい曲になりました。密かにこの曲は自分としては最高傑作であると自負しています(遠藤)
4月.「冷たい桜」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
程よいリバーブ感が全体を包み込みますね。幻想的です。
このように非常に味わいのあるメロディを書けるのが、遠藤さんの非凡なセンスであると認識していますが、この曲はその部分が如実にアピールされていると思います。
Aメロ、Bメロ、サビは少し地味ですが隙は全くないです。
キラキラしたシンセの繊細なフレーズが随所で効いていますし、特にイントロの下降するフレーズなんかは桜の散りざまを表現しているかのようです。
もっとシンプルになっても良い楽曲なのに、サウンド自体はゴージャス。
何よりファンタジックなシンセサウンド自体が好みの音過ぎます。
でもそれこそがテクノポップ、いやTECHNOLOGY POPSなのだと思っています。
@遠藤
これはコードとメロディだけ取り出すと(山下)達郎さんの作風に非常に影響されている曲で、達郎さんはもともと大好きなのですが震災直後に出た「A Ray Of Hope」はじめその前のアルバムに非常に元気付けられたというか、ずっと何十年も自分のスタイルを崩すことなく現役で音楽活動を続けているということに感銘を受けたことが今回のソロアルバムの制作の動機につながった部分もあります。
ただ、アレンジの参考にしたのは幸宏さんの「What Me Worry?」の「Sayonara」などの音像なので、全く違ったものになりましたが(笑)
鐘系の音やシンベの感じが、それに何よりもこの曲はもともとLinnのLM-1のあの重いスネアの音が大好きでそれをどうしても使いたくて再現するという試みでもあります。結果結構よいLinn Drum Musicになったなあと自負しています。
バッキングのシンセ類はほとんどがPolysixです。これにしか出せないあの当時の音になりました。
減衰系や鐘系の音はほとんどEUROPAですね。これは本当に使えるシンセです。最新のシンセながら80年代のシミュレートもできるという。
歌詞については春の別れという身も蓋もない情景で。この歌詞に関しても「Sayonara」の影響が大きいのです。しかし「冷たい」桜ってなんだろう?と自分でも思います(笑)
@tpopsreryo
いやあ、山下達郎由来とはいえども本当に良いメロディラインですよね。何度も聴き返すことで味わい深いものになってまいりました。達郎さんも全くブレがない作風ですし、80年代にデジタル化してもそれを感じさせないメロディ構築力の強さで陳腐化しなかったからこそ、第一線であり続けているのだと思います。
確かにこの程よくチープなPCMが出だしの頃の独特のスネアサウンドはLM-1ですね。これも再現方法が気になります。
シンベやパッドの柔らかさはアナログシンセ特有のものと思っていましたので、Polysixは頷けますね。
そしてキラキラはやはりウェーブテーブル!鉄板ですね。最新のソフトシンセですが、ウェーブテーブルは80年代の空気感を演出できるのです。もう少し病的な音になるとなお80’sなのですが、このキラキラがこの楽曲のポイントでもあるので、正しいと思います!
ただ余り「Sayonara」の雰囲気は感じなかったですね。シンセは確かに「What Me Worry?」の音はするんですが。
この曲は本当にロマンティックです。「冷たい桜」は、東北ならではの4月の気温のイメージもありますし、開花はGWあたりだったと記憶していますので、関東の方から見ると少し早いというか、まだ春になりきれていない季節というか、ならなんで桜が咲いているんだという話もありますが、そこはしっかり「春の訪れ 遅すぎるのは」と歌われていますしね・・。
「冷たい」のは、「会える、会えない」の心情に基づいているのではないでしょうか? 作詞されている遠藤さんにお聞きするのも変な話ですが(笑)
@遠藤
そうですね。「Sayonara」と言うよりもNew MusikのTony Mansfieldの音作りやアレンジに近いというか多大な影響を受けていると思います。以前YouTubeにデモを上げた時にアメリカのトニマンファンから「Good job!」的なコメントもらったこともあるので(笑)
歌詞の内容についてはご指摘の通りですね。遅い春の訪れを待ちわびると同時に再会も待ちわびていると。そしてこの曲はABCとあってサビという構造でこれまでこんな感じでCまである構造の曲は作ったことなかったなと今になって思います。
5月.「シーパルちゃん」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文 コーラス編曲:村上ユカ
@tpopsreryo
正直な話、このノベルティっぽい楽曲がアルバムに収録されて、どのように作用するか興味深い部分でした。
しかしながら全く違和感なく溶け込んでいるのが地味に素晴らしいです。
ラテン風味といいますかマンボ風味というかコミカルテイストなメインフレーズですが、村上ユカさんのコーラスで、何やらサーフミュージックみたいになっていて、5月の初夏には確かにぴったり来ました。
しかしこの楽曲はBメロ?サビ?に尽きますね。
あのリフレインから、あの高音メロディに繋がるとは思いませんでしたので・・。
そしてあのメロディこそが遠藤さんの特徴的な声質を生かしたセンスの塊だと思います。
ガラッと雰囲気を変えると共に遠藤楽曲としての刻印を残し、アルバム収録曲としての違和感を見事に排除した名フレーズだと感じました。
@遠藤
アルバムの中に1曲はこういったノベルティというかユーモアのある曲がないと自分としても非常に窮屈で。これはスノモー時代からの自分の性というところでしょうか(笑) もともとこういったノベルティソングは大好きなのでこのような形で入れてみました。
それから、この曲は例えば教授の「コンピューターおばあちゃん」とか大貫妙子さんの「ピーターラビットと私」とかいわゆるみんなのうたとか童謡のような曲調に非常に影響を受けていまして。その気分で作ったものです。
なんとなく最初からシーパルちゃんを紹介するような言葉をラップ調で語るという感じで制作がスタートし、ラップ調ならばバッキングは3コードのブルースコードで行こうと。ただ、サビだけはちゃんとしたメロディーがあって、シーパルちゃんが子供達に歌ってあげているというか元気付けてあげているような感じにしたかったのでああいったメロディーになりました。この展開は実はシュガーベイブの「Sugar」が大好きでその曲調に非常に影響を受けているのですが、マンボやサンバにしたのはそういったことからです。
それからこの曲だけ唯一ゲストに参加していただいていて。シンクシンクの盟友である村上ユカちゃんですが、実は以前この曲のデモテープを発表した時からユカちゃんに「コーラス入れたい」と言われていてそれが実現の運びとなったわけです。このユカちゃんのコーラスが非常に好きで。最後のサビの白玉コーラスなんかちょっと感動的で。ユカちゃんコーラスだけできっと何十トラックも使ったのだろうなと思われるほどの重層的な素晴らしいコーラスを披露してくれました。スノモー時代にも密かにコーラスしてくれている曲もあるのですが、ここまで全面的にユカちゃんの声が出てくるコーラスというのもなかなか貴重かと。ユカちゃんのおかげでこの曲が何倍にもいい曲になりました。密かにこの曲は自分としては最高傑作であると自負しています。
@tpopsreryo
そう、村上ユカさんのコーラス本当に効いていますよね。デモテープにはなかったこの要素、全面的に出てくるといっても出過ぎていませんし、何より楽曲のボトムがグッと上がった感じがいたします。マンボやサンバにBeach Boysなテイストも加わっていると同時に、ラストのサビに加わるコーラスも美しい。サビが急展開の高音なんですけどそれに上手くハマっています。
シュガーベイブの「Sugar」ですか! 確かに構成は似通っていますが、やはり何度も申し上げますがあのサビの入り方は良い意味で意表を突かれます。あのサビの裏でなっているキラキラはEUROPAでしょうか?
マンボ風の掛け声やサビ後からAメロに移るブリッジのシーパルちゃんの声は、遠藤さんのボイス変調ですか? マンボの方はサンプルっぽいですけど・・。またシーパルちゃんボイスの裏ではシタールっぽいフレーズでインド風味まで醸し出しているのも、ごった煮感があって面白いです。
先に申し上げた通り、ノベルティソングというかみんなのうたというか、少し異質な感じでボーナストラックっぽい扱いになるかと心配していたのですが、サビの素晴らしさとユカさんコーラスでアルバムの構成にもバッチリハマったなあと思いました。広く親しまれる曲になると良いですね!
@遠藤
そうです。サビのキラキラ系の音はEUROPAです。大活躍ですねEUROPA。シーパルちゃんの声は僕の声の変調です。だから、DAWかなんかでこの曲のピッチ下げると僕の声に戻ります(笑)
この曲はもともと展開のコンセプトがあってマンボやルンバなどの南アメリカ→王道のメロディーで北アメリカ→アフリカ通り越してインドで魔法という流れを意識したものです。自分でもよくわかりませんが(笑)
6月.「シエスタの丘」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
前半ラストの楽曲、骨休み的に機能している楽曲と言っては失礼ですが、意図的にゆったりとまどろむような歌い方で曲調であると思います。
シエスタだから当然ですよね(笑)
このギターも遠藤さんの演奏ですか?
これは「Each Time」の「ガラス壜の中の船」を思い出しました。
大滝詠一のミディアムナンバーにはこうした楽曲も多かったと記憶しています。
しかしながらこの箸休め、アルバムとしては必要な休符なんですよね。
起承転結といいますが緩急といいますか、そういうストーリー性を楽曲のバラエティで勝負していくのもアルバムの面白いところ。
本作も「アルバム」という形態で勝負していることが窺えるので、その辺りも実に嬉しいのです。
@遠藤
そうですね。前半ラスト。レコードならA面最後。カセットテープでもA面ラストです。このアルバムは明確にレコードのA面とB面という曲の流れを意識しています。
昔からA面ラストの曲ってこう、引っかかる曲が多いじゃないですか。YMOなら「1000 knives」「Light In The Darkness」「Opened My Eyes」。大滝さんなら「我が心のピンボール」などなど。
実はこの曲は女川エフエムのラジオ番組で月一でお題を決めてその月の雰囲気に合う曲を書くという企画から生まれたもので。お題は「フォーク」でした。なのでアコギが鳴っているという単純な発想です。
これはダイレクトに大滝詠一さんの「Water Color」という曲に影響を受けています。そして、いかにして転調しまくる曲の中で普遍的なメロディーを書けるかという実験的な面もあります。
アコギはこんな風に全然弾けないのでコードごとのオーディオ素材です。ストロークとかアルペジオとか最初からこういった素材が準備されているのでいい時代になったものです(笑)
歌詞は実は「冬の花火」と同系列の詩です。ある種の諦念がこのアルバムの歌詞には散りばめられているのですが、それと同時にこの曲は魂との邂逅もテーマになっています。眠れと誰に言っているのか、忘れるまでとは何を、君が好きな~とはなぜ思い出している風なのか、目が覚めたら二人きりなのはなぜ?など想像力を膨らませていただくとこの曲をもっと楽しめると思います。
@tpopsreryo
やはり大滝詠一さんのミディアムチューンの影響だったのですね。「Water Color」も彼のそんな得意技の楽曲でしたが、見事に引き継いでいますね! この転調ぐるぐるの中で微睡んでいく平衡感覚を失うような曲調、フォーキーで地味なのですがやはり繰り返し聴いてみると引っかかりが気になってくる、スルメ形式の楽曲ですね。
12曲。カレンダー形式という時点で、アルバムスタイルを意識しているのは明白でしたし、我々の世代ですからA面、B面の構成も意識されていると思っていましたので、A面最後にこの曲を意識的に置いているというのもスゴく納得しています。アルバム特有の愉しみ方ですよね。
あのアコギはオーディオ素材でしたか。違和感全くないですね。また、浮遊感のあるペダルスティール系の音色はあれも素材ですか?それともシンセでしょうか?
@遠藤
あのペダルスティールもオーディオ素材です。いい感じのフレーズになったと自負しております。
ーーしかし自分の作る曲の中には必ずと言っていいほどYMO関連のモチーフが出てきますね(笑) 我ながら呆れちゃいますがこれからもこれはずっと続くと思います(遠藤)
7月.「蒼と青の向こうへ」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
そしてこの名曲ですよ。コバルトーレ女川応援歌。
私、実は結構なサッカーフリークでもあるのです。コバルトーレ女川のJFL昇格は本当に驚きでした。正直あの選手層で昇格争いを抜け出したのは奇跡とも言えました。しかしあの震災からここまで立て直したご褒美があの昇格だったのかもしれませんね。今はまた地域リーグに落ちてしまったようですが、是非頑張って欲しいです!
しかしこの楽曲は応援歌という側面もあるでしょうが、シンプルに名曲ですよ。
海の青のようなみずみずしさを備えたAメロ、Wow~ Wow~♪の天に突き抜けたメロディラインもさることながら、Bメロからサビへの転換部分が実に素晴らしい!
そしてサビはしっかり哀愁要素も盛り込んでいるのが遠藤さんらしいです。
何より全体として高音で、メジャー調で、どこまでも明るく爽やかな感じが楽曲全体から感じられる幸福感、これがこの楽曲の最大の魅力であると感じています。
@遠藤
名曲!ありがとうございます。この曲は言われているとおり女川のサッカークラブのコバルトーレ女川がJFLに昇格したことが単純に嬉しかったのでその嬉しさの勢いで応援ソングを作ってしまったという経緯です。震災の中そして震災後も女川をいろいろな面から支えてきてくれたチームに対しての感謝の意味も込めた応援歌です。そして、僕のもう一つの職業である家庭教師の立場から生徒たちに対しての応援歌でもあります。
AメロBメロから転調を経てのサビまで本当にツルっと短時間でできてしまったのです。もともと曲の中でいかにかっこいい転調をするかと言ったことに曲作りをする際に重きを置いている面もあるので、この展開ができたときには思わず「やった」とつぶやいてしまったほどです。曲を作る時はやはり構えてしまってはあまりよいものができないのだなあと。素直に何かに感動したときに、それに感化されて自分の中にまたある別の感覚が生まれて、それが曲につながっていくものだなあと再認識した次第です。
これはギターについては全てmidiデータでみずみずしい海のイメージ、そして大好きなドリームポップのイメージをエフェクトで作り上げました。また、スギンのミックスは「コモエスタ」に通ずるもので特にシンベがコシのあるテクノ仕様に生まれ変わり、全体的にも大変力強く爽やかなミックスになったと思います。素晴らしいミックスです。
@tpopsreryo
どこまでも続く透き通った海と空の青、エレクトロという人口甘味的な部分も含めるとプールの青、そんなイメージですね。
遠藤さんのメロディは特に高音に突き抜けた部分が効果的ですよね。どうしてもシニカルで斜に構えた世の中にあって、ここまでストレートに表現できるメロディはなかなかないのではないかと思います。そのあたりは80’sシティポップにはなかった部分かもしれません。
その突き抜けた高音もあってどこか楠瀬誠志郎を思い出すこともあったりして・・・。
正直Aメロの始まり方だけでもガッツポーズだったのですが、やはりあの場面転換的転調部分で酸いも甘いも嚙み分けたからこそたどり着ける汗と涙の青春ストーリーが展開される、色々な意味を含めてまさに「応援歌」にふさわしい名曲であると思います。
そして確かにデモ、YouTube完全版に比べてもテクノ仕様になっていますね。音色も直線的になっていますし、疾走感が増しているように感じました。
@遠藤
サビでの転調。酸いも甘いも噛み分けた。そのとおりです。サビはもっとメジャー展開もできたはずなのですが、夢を掴むには大変な、血もにじむような努力が伴うはずですし、例え夢が叶ったとしてもそれを持続していくことは並大抵の努力ではできないはずです。それをちょっとマイナーで切ないサビのメロディーで表現したつもりです。ただなんとなく馬鹿騒ぎする感じだけは避けたかったのです。でも、夢を追い求める姿勢だけはずっと続けていきたいなと思っています。
8月.「夏浜開き」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
スカっぽいリズムにキュイキュイとした鳥の声っぽい音色やカワイイシンドラが乗るサマーチューン。サマーソングの美味しい部分を詰め込まれたような眩しいメロディ構築が良いですね。
そして中盤の左右にパンするギミカルな演出からの波の音の挿入というベタな感じも楽しいです(笑)
しかしそこからのシンセフレーズの追加が地味ながらも情景描写を豊かにしてくれているのです。この後半の追加だけでかなり楽曲の印象が違ってくるので、大成功ですね!
@遠藤
この曲はもう大好きな幸宏さんの「スイミングスクールの美人教師」や大村憲司氏の「The Prince Of Shaba」、音像的には大滝詠一氏の「A Long Vacation」にモロに影響を受けている曲です。
あの夏の感じ、チープな打ち込みの感じをどうしても出したくて。リズムはいかにもシンセで作りましたという音で。シンベもシンベシンベしているもので。
ギターも自分で弾いていますが、Bメロのチャラーンについてもなるべくあのトレモロの効いたギターに近づけました。
サビのメロディーは実は斉藤由貴嬢の「予感」にインスパイアされていますね。この曲が大好きで。
この曲もそうですが、今回のこのアルバムは自分の好きな、影響を受けた曲については惜しげも無くその影響をダイレクトに曲に出しています。せっかくなので(笑)
歌詞に関しては「夏浜」と言う浜が実際に女川にあって。「塚浜」とも言うのですが、震災以降もしかしたらまだ海開きしていないかもしれないのですが、とてもきれいな浜で昔からよく海水浴に行っていて、その震災を経てもなお変わらないものと思春期の淡い恋と記憶にあるものを断ち切ってまた新たに歩み出す決意とがこの曲に描き出されています。だからどうしてもこの曲調にしたかったのです。
@tpopsreryo
「スイミングスクールの美人教師」、「The Prince Of Shaba」〜80年から81年にかけてのテクノサマーチューンのオマージュということですね。ピュイピュイという合いの手に「Absolute Ego Dance」の影も見えるようで微笑ましいです(笑)
リズムは全部シンセですか。確かにこれまでのリズム音色とは異なる雰囲気ですよね。後半に入ってくるシンセはPolysixですか?
サビのメロディは「予感」ですか〜。「チャイム」は名盤ですよね。その中でも亀井登志夫さんの絶品バラード「予感」のあの切ないメロディ、インスパイアされているとはわかりませんでした(汗) ここはなかなかわからない方多いんじゃないですか? 言われてみればああそうか!と納得できるのですが・・・(笑)
@遠藤
後半に入ってくるストリングス系の音はPolysixのストリングスです。この音は非常によくて他の曲でも使っています。あの不安定なディチューンをずらしたようなふくよかな音です。
リズムはシンセではなくてサンプルです。スネアは2つの音色を重ねています。ただ、一つはシンセノイズですね。「ビシャッ」という。
確かに「予感」は出てこないですよね(笑)
この曲は本当に大好きな曲でこれも大名曲「アクリル色の微笑み」とともに聴くたびウルッときちゃうんですけど、あの雰囲気を歌いたかったのです。気持ちはそんな感じです。喪失感とそれを乗り越えて希望を見出すという気持ち。それを歌いたかったのです。
9月.「はなさない」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
デモが弾き語りだったので、最も変化した楽曲ではないでしょうか。
繊細なシンセパッドで始まるイントロだけでも印象が激変しました。
高速ディレイっぽいLFOをいじったようなシンセフレーズ、レゾナンスを効かせたシンセベースなど、弾き語りで成立する美メロのミディアムチューンなのに、大胆にエレクトロニクスに仕上げて来ますね(笑)
ギターソロ後の後半にはビリビリくる白玉シンセも活躍しますし、最初期とは比較にならないほどシンセ中心のサウンドに変身した印象です。
アルバムが12曲もあると下手にシンプルな楽曲も入れたがる方もいるのですが、この楽曲ではそれとは裏腹のポリシーが感じられて好感が持てました。
@遠藤
気まぐれで作った相当ギターオリエンテッドなこの曲のデモバージョンも気に入っているのですが、このアルバムに入れるにあたりリアレンジを施しました。どうせなら対極に位置するテクノポップアレンジにしようと。
ドラムパターンは矢野顕子嬢の「東風」ですね(笑)
裏打ちのシンセは幸宏さんの「Flash Back」ですね。
レゾナンスベースはエレキベースとシンベのユニゾンでSH-101で作りました。白玉シンセはSolinaのストリングスをイメージして。ギターソロだけはこれも自分で弾いているのですが記念に残しました。1/2に速度を落として弾いたものです(笑) LFO早めにしたビーンと言うフレーズもバッチリはまったと思います。
これはこれで大変好きなアレンジになりました。歌詞はもう直球ですね。そのままです。
@tpopsreryo
このコシのあるレゾナンスベース、ユニゾンなんですね。エレキベースが入ることで芯が生まれていて良い音に仕上がっています。LFO早めのフレーズはEUROPAですか? これもこの曲のポイントでSolina風の白玉ストリングスと共に淡い味わいがクセになります。
「東風」のリズムに「Flash Back」の裏打ち・・・もうここまでYMO愛を見せつけられるとその潔さに乾杯したくなりますね(笑)
そして遠藤さんのギターソロ、速度落として弾いてたんですね! そうか、そういうことも可能なんですよね。でもあのギターソロなしにはこの曲は語れないと思いますので、残すのは大正解です。
結果的にB面2曲目のほっとひと休みなポイントとしては、バッチリ機能しているのではないでしょうか。
@遠藤
LFO早めの音はEUROPAですね。
しかし自分の作る曲の中には必ずと言っていいほどYMO関連のモチーフが出てきますね(笑) 我ながら呆れちゃいますがこれからもこれはずっと続くと思います。
ーー最後の最後で鐘の音だけになるのは、未来の希望を願い高らかにそれを祝福するように鐘が鳴り響いているイメージです(遠藤)
10月.「貴女はスポイラー」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
デモの時の90年代っぽいという楽曲ですよね。
これはディレイの効いたギターパートが幾つにも重ね合わされたハードボイルドナンバー。歌い方も比較的ロック寄りですが、どうしてもメロディが良いのでハードな感じはしません(笑)
ツボなのは、Bメロの「涙を見せたら 思惑通りさ」の「さ」の裏声ですね。あのメロディラインから「さ」の音階はなかなか出てこないと思うのです。その辺りが遠藤さん特有のセンスですよね。
その素っ頓狂な音階も全くメロディを邪魔しないというのもスゴイなあと。
あとは「ぐるぐる廻っている」の最初の「ぐ」が鼻に抜けている部分。
気持ちが入っているというか、その鼻の抜け具合があるとないとでは大違いです。
スポイルされたどうしようもない気持ちがここで表現されているのですね!
ここではシンセベースの音も白玉シンセの音色もグリグリっとした感じで、80’sとは少し味わいが違うような感じがしました。その辺りは意識されたのでしょうか?
是非聞いてみたいです。
@遠藤
この曲は大学時代に軽音楽部で組んだバンドのために作った曲です。バンドでのお披露目は残念ながらなかったのですが、もったいなくて今回やっと日の目を見たという次第です。約30年前に作った曲。その頃から転調には凝っていたみたいですね(笑)
ディレイギターはやはりmidiです。「さ」の裏声についてはでも当時からそのように歌っていて確かにその音階は不思議ですね。自然に出てきたものだと思うのですが。
「ぐるぐる」については鼻の抜け具合はしっかりと意識しましたよ、マツボーを!大好きな松岡英明氏に敬意を表して。
だからこの曲は80年代末期から90年代初期のハウスムーブメントに乗っかかったばかりの雰囲気を出しました。なのでいつもは禁じ手としているブレイクビーツやビチビチいうシンベ、ノイズ混じりの白玉シンセなどここぞとばかりに大活躍させました。いかにもという感じを出したかったので。
あと全体的な雰囲気としてアーバンダンスの影響も強いですね。もう少しアレンジを過激にしてもよかったかなと思っています。
@tpopsreryo
これは、種明かしで笑ってしまいました、松BOW!
このコメントを聞いてからもう松岡英明のボーカルに変換されてしまって笑いながら繰り返し聴いています(笑)
やはりBメロは秀逸ですね。「さ」の裏声、本当に素晴らしいです。
曲の引っかかりのポイントとして、めちゃくちゃ重要ですよ。ヒット曲ってみんなが真似したくなるようなキラーフレーズってあるじゃないですか。中森明菜の「DESIRE」のゲタップゲタップゲタップバリハーの部分とか、YMOでいうと「君に胸キュン」のキュン!の部分とか。
そういう可能性をあの「さ」は持っていると思います。絶対コロッケだったらあの「さ」で誇張した顔で笑わせてくれますよ!(失礼)
しかしアレがあるのとないのとでは大違いなのです。しかも松BOW。こんな面白い曲になるとは、デモ段階では思いませんでした。
そしてアーバンダンス! 確かに乾いたギターであるとかサビの疾走感とか彷彿とさせますが、さすがに90年代初頭のハウスムーブメントのリズムなので、UD-ZERO時代という感じですね。アーバンダンス感を出すのであればやはり爆音スネアでないと!
でもこの曲のコンセプトからするとハウスのリズムで正解だと思います。全体的な雰囲気では、売れ線を意識し始めた頃(2ndアルバム「TRUE」の頃)の有近真澄といった感じですね。声の質感的にもそう思えます。
@遠藤
松BOWはご存知の通りずっと大好きなので、今回このような形で結実しました。自分の通ってきた音楽遍歴というのは全て正々堂々とさらけ出していけるくらい素晴らしい愛すべき音楽たちです。
爆音スネアは次のやつでぜひやりたいです。もう少し80年代中期よりで、スカスカなアレンジと金属音で(笑)
11月.「僕はほでなす」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
これはある種ハイライト的な冒険楽曲ですが、デモでも驚いたというか、遠藤さんはどうしても我慢できない方なんだなあと思ったのです(失礼!)。
ピアノの弾き語りでも印象的な部分を、途中からあんなグルグルかき回すようなエレクトロニクスを入れてくるなんて(笑)
タイトルが方言でほっこりした言葉じゃないですか。
それが蓋を開けたら最もチャレンジングでアヴァンギャルドなサウンドで攻めてくる。まるで時間旅行に出発するかのような。
このギャップは他の方が聴き進めたら大変驚くんじゃないでしょうか?
しかもデモの時より(最高の褒め言葉で)ヒドくなっているじゃないですか(笑)
ギュルギュルと吸い込まれて、共振してブインブイン言わせて、ディレイはグワングワン、非現実感がたまりません。
そしてタイムマシンから戻って来て、最後にタイトルコール。完璧です!
恐らくスギンさんがワクワクしながらミックスしたんじゃないでしょうか(笑)
@遠藤
これは「僕はほでなす」(ほでなすとはこちらの方言で愚か者の意味)と言うタイトルで曲を作るというのは以前からずっと決まっていて、今回このような形で実現しました。ピアノの弾き語りでももちろんよかったのですが、やはり生粋のテクノ魂が疼いちゃって(笑)
これはダイレクトにその当時聴いていたマイブラ(My Bloody Valentine)などのシューゲイズ系の音楽と教授の「The End Of Europe」に影響を受けました。
フェイジングされたパッドやサンプル&ホールドの波形によるコード、16分の単調なシンベなどそこかしこに影響されています。オリエントなメロディのリードシンセもアクセントになっています。
ミックスについてはスギンに存分に遊んでくれとお願いしたので、このような空間系の飛びまくりのミックスになったわけです。これこそスギンの真骨頂。素晴らしいミックスです。
歌詞も英語でミニマルフレーズに徹しました。なんにしろ、「僕はほでなす」と言う自戒をこめたこのフレーズに尽きると思います。
@tpopsreryo
「ほでなす」という語感からこの曲調が想像できないというか良い意味での裏切り感があったんですよ。シューゲイザーは基本ギターで音の壁を作りますけど、この曲は途中から轟音シンセ&エフェクトでシューゲイズしていて・・・これは杉本さんの好き放題空間ミックスということですが、どういう効果で仕上げたものなんでしょうか・・。
「The End Of Europe」・・・言われてみれば確かに!(このフレーズ何度も使います)
あの曲は真っ暗で不気味なブゥーンでしたけど、この曲はもともとが弾き語りからのタイムトリップですからね。やはり元のメロディが素直なのでこのトリップ感もどこか心地良いんですよ。仕上がった曲は全く「ほでなす」ではないんですよね。その曲名と弾き語りなスタートからのギャップで聴き手は圧倒されると思いますよ。例えばAmazonの45秒試聴だと絶対わからない展開ですから(笑)
@遠藤
このマジカルなミックスは僕も一体どうやったのかわかりません(笑)
今度詳しくミックスについてはスギンにインタビューして僕のブログでもご紹介していきますので。楽しみにしていてください。
12月.「冬の花火~Requiem For The Souls~」
作詞・作曲・編曲:遠藤裕文
@tpopsreryo
7分以上の名曲に仕上がったんですね。これは是非冬に聴きたいですね!
音量を震わせたコードワークの細やかさ、サビの柔らかなシンセパッドの音色、2周目から入ってくる脳内を駆け巡るキラキラな音の粒が実に美しいです。
これはいかにもnice music期の佐藤(清喜)さんが作りそうなシンセポップチューンです。
ジャジーなピアノソロも雰囲気たっぷり、後半からは例のアルペジオも参戦してきて、さらに彩りを加えていきます。
最後の大団円に向かう前のコードワーク、大好きなパターンです。
これは涙が出るヤツですね・・・。
これが挿入されることで、さらに名曲度に拍車がかかりますね。
余り長い曲は好きではないのですが、これは7分超えして正解です!
そして最後の鐘の音ですが・・・これは渾身の音作りなんですよね?
こういった鐘の音ってサンプリングで引っ張ってくることが多いじゃないですか?
でも一から作ったということがわかりますから、ちょっと風変わりな鐘の音だなあと思っても想いが伝わって来ます。(ここまで言っておきながらサンプリングだったらスミマセン・・・笑)
鐘の音で終わるアルバムって島崎路子の「フルーレ」以来なんですが、やはり季節感があって良いですね。
1年を巡ったこのアルバムもこれでエンディング、名残惜しい音楽の旅でした。
@遠藤
この曲も達郎さんの影響がダイレクトにあって、往年の佐藤さんの作る楽曲の影響ももちろん。また、YMOの「シムーン」も非常に昔から好きでコード進行やベースフレーズなどに影響を受けています。
それに加えてこれはLogic Systemの「東方快車」の「シムーン」にも影響されていて、シンセのオブリや音色面でも影響されています。LFOを使ってあとから震えるコードや途中のキラキラした分散和音などは全てPolysixとJUNO60で作りました。これらのシンセは本当によくてサビのブラスの音などはこれにしか出せないいい音をしています。
アウトロの前とそのあとに鐘の音が出てくるのですが、これは女川駅前に昔「きぼうの鐘」というものがありまして、ある時刻ごとに鐘の音が響いていたのですが震災で4つあったうちの3つが流されまして、しかしこの度見事復活して新たに設置されているのですが、その復興の象徴である鐘の音、それも自分のイメージの中にある鐘の音をどうしても使いたくてこのような曲の展開になりました。
この鐘の音はEUROPAの中にあった鐘の音でほとんどエディットせずに使っていますが、ちょっとエスニックな響きもして雰囲気にぴったりだったので使いました。最後の最後で鐘の音だけになるのは、未来の希望を願い高らかにそれを祝福するように鐘が鳴り響いているイメージです。
歌詞の世界はこれもある種の諦念であり、魂との邂逅なのですが、つかの間の邂逅を終え、主人公はその諦念を乗り越えて、希望を胸にまた幸いを求めて前に進んでいきます。それを高らかに祝福する鐘の音。そんなことを思いながら聴いていただければと思います。
@tpopsreryo
ああ、そうですね。「シムーン」です、これ(笑)
恐らく佐藤さんもこういった曲調の際は参考にしていそうです。
この分散和音の響き方が素晴らしくて、あまりにもキラキラしているものですから、勝手にクリスマスソング扱いしている自分がいたんですけど、そうですよね、そんな俗世的な意味合いではなく、震災からの復興の「きぼうの鐘」なんですね。いかにもウェーブテーブルっぽい鐘とは思っていましたが、また勝手に一から作っていたと思い込んでしまいお恥ずかしい限りです・・・EUROPAにはこんな面白い鐘の音が搭載されているのですね。
@遠藤
確かに鐘の音は12月ですしクリスマスの雰囲気ももちろん醸し出していますね。でも、それ以上にこの鐘の音は意味のあるものなのです。それから、言うの忘れていましたが、この曲は元々大好きなTest Patternのオマージュであるということも忘れてはいけません。あのハリウッド映画音楽をシンセの打ち込みで再現しているというあの世界がたまらなく好きで昔から。その彼らの音楽に敬意を表した曲でもあります。
@tpopsreryo
しかしこうして全曲聴いてみると、やはり先人達のオマージュを大胆に取り入れながらもオリジナリティも感じますし、何しろ歌心がありますから耳にも馴染みやすく、ポップスアルバムとして非常に完成度は高いと思います。これはやはりできるだけ広く一般に聴いていただきたい作品です。海外のJ-POPファンにも是非。
Ice Choirのメンバーとか絶対好きだと思いますよ。あと佐藤さんの師匠筋の森達彦さんにも絶対気に入ってもらえるタイプのサウンドですし、彼らに宣伝してあげたい気持ちに駆られながら、また繰り返し聴いています。これは当然のことながら名盤です。「令和の名盤」ですよ!
レコ発ライブも女川町ではもちろん、都内とかでも大々的にやってほしいですね。その時にはもちろん都合をつけて大阪から駆けつけたいです!
@遠藤
令和の名盤!本当に嬉しいお言葉です。是非そうなってほしいと思います。