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土屋昌巳リマスターBOX「Masami Tsuchiya SOLO VOX EPIC YEARS」全曲クロスレビュー(1):1stアルバム「RICE MUSIC」

 久しぶりのnote更新ですが、皆様如何お過ごしでしょうか? 本来ならばこの別邸も頻繁に更新したいところですが、公私ともにいろいろございましてなかなか手をつけることができず、ご無沙汰することになってしまいました。いろいろ企画は構想していて水面下で進行しつつものもありますが、まずは今年2月にTwitter上でひっそりとやりました土屋昌巳リマスターBOX「SOLO VOX EPIC YEARS」の全曲クロスレビューがようやくまとめられましたので、それを公開していきたいと思います。このBOXがリリースされたのは1年半前でその年にできればよかったのですが、リリース当時ワタクシは大病して入院中でして、夜中に消灯時間に隠れて聴いた思い出もあるものの、やはりクロスレビューの実現には1年以上の月日が必要だったのでした。そんな思い入れの深いこのBOX、待望の土屋昌巳EPIC在籍時のソロアルバム待望のリマスターということで、ワタクシ@tpopsreryoも相方の@junnoviも、(特に後半の3枚あたりは)非常に力の入った、クドさ満点のレビューとなっております。それではまず今回は1stアルバム「RICE MUSIC」です。お楽しみ下さい。

◆1st「RICE MUSIC」(1982)

〜オープニング〜

@tpopsreryo:
それではリマスター記念全曲レビューシリーズ企画、2年半ぶりの新シリーズを始めたいと思います。テーマは一昨年末にリリースされた土屋昌巳のリマスターBOX「Masami Tsuchiya SOLO VOX EPIC YEARS」です。ということで、@junnoviさんと有る事無い事雑談レビューを行ってまいります。

@junnovi:
こんばんはセンセ(注:言わずと知れたワタクシtpopsreryoの呼ばれ名です)、今日はヨロシク~。久しぶりやね、この企画。どれくらいぶりだろ。

@tpopsreryo:
2年半ぶりです。大江千里以来。あの魔の「♮(ナチュラル)」シンドローム以来w 時間が経ってしまってどういう風にやったらいいのか忘れてしまっているのでお手柔らかに。

@junnovi:
あ、最初に2年半って書いてる!w ゴメン。そんなに経ってるんやねぇ。大江千里の「♮」はあれから1回も聴いてませんから! 今回は土屋昌巳。ずっとずっとEPIC三部作を聴いてきた身としては、嬉しい限り。

@tpopsreryo:
そう、必ずやりたいよねと長い間話していたのが今回の土屋昌巳とGrass Valley。この2つはずーっとリマスター再発を待っていたんですよね。それがここ最近で2つとも奇跡のリマスターとなったわけで、やっとこの企画ができるという。

@junnovi:
ホントに驚いたよね。土屋昌巳もGrass Valleyも。BOX仕様でリマスター。ありがたいことと言ったらホントにもぅ。特にGrass Valleyは諦めてたもの。

@tpopsreryo:
土屋は1度バラ売りでオーダーメイドファクトリーでボツになってしまったけど、BOXにしたらあっけなかった。Grass Valleyは余りにもみんながっつき過ぎw なぜこれまで企画に上がらなかったのか不思議なくらい。yukihiroに言われて渋々企画しているようでは・・・すごく温度差があるというかね。

@junnovi:
何かさ結果オーライやし嬉しい限りではあるんやけど、あんだけ折に触れてリクエストを言い続けてきたのに、周年記念もスルーされてきたのに、業界仲間のコールでサクサクと話がまとまるのっていうのが、何とも言えないのです・・・。ありがたいんですよ、大変ありがたいし感謝の気持ちもあるねん。けど寂しいなと。

@tpopsreryo:
まあ、その辺りは言いたいことが山ほどありますが、GVでの企画にとっておきますw
すっかり進め方を忘れてしまっている感がありますが、このシリーズはテーマであるCDの全曲をアレヤコレヤと寄ってたかって2人が掛け合いでレビューするという自己満大会なわけですので、流し読みでお願いできればと思います。

@junnovi:
そやったね。言いたいことをお互いに何の事前調整もなく書き込むんやった。大江千里の2年半前からずっとずっと土屋昌巳とGrass Valleyは全曲しなあかんよね、といっていたのでそのうち1つが今回やることになったわけで、過緊張してたりする。よく分からんわw

@tpopsreryo:
まだ進め方がわからないw 言いたいことが被りまくってどうすればいいの状態ですが、まずは進めていきますよ。

@junnovi:
ま~何とかなるでしょ。松岡英明の時だって、大江千里の時だって、ちっとも予定調和じゃなかったしw 錯綜してたもんね、やり取りが、確か。じゃ、始めましょセンセ、頭出しというのか、見出しはセンセ、やってくれるよね?

@tpopsreryo:
そうですね、そういう感じで。もう既に錯綜してますがw では頭出ししていきます。


〜イントロダクション〜

@tpopsreryo:
さて、今回の土屋昌巳BOX「SOLO VOX」はEPIC YEARSと冠しているように、EPIC SONY在籍時にリリースされた5枚のソロアルバムをBOXセットにしたものです。それを1枚ずつレビューしていくというものです。今日は1stアルバム「RICE MUSIC」です。

@junnovi:
こういう企画で発売されるとは思わなかったよね。センセがさっき言ってたようにかつて「TOKYO BALLET」が単品でソニーのOMF(オーダーメイドファクトリー)で予約受付が始まったのに、再発未実現になってしまってお蔵入りになった時は、ああもう三部作も日の目を見ることはないんだって絶望的な気持ちになったもんね。

@tpopsreryo:
2ndアルバムの「TOKYO BALLET」は1985年の作品なので、CD製作もまだまだ初期の時代だから、音が悪かったんですよ。後に90年代に再発するんですけど、これが悪名高い「CD選書」なので音質が悪くて・・・。リマスターを待ってたのですがあんなことになって。祈るような気持ちでした。

@junnovi:
詩人の血も然り、往年のファンは、もう解散して閉じられたバンドとか、ピンでも一区切りつけた人とか、そんな場合はBOXで一式規格を揃えないと納得できないよね。そういう意味ではQujilaは1枚1枚の復刻だったから、企画が立ち上がるたびに本当にたまらない気持ちに何度もなったものでした。

@tpopsreryo:
QujilaはEPIC期の活動期間が比較的長くてたくさんアルバムを出していたので・・・BOX化はしにくかったのかも。その点GVはちょうど枚数も6枚だし、土屋もEPIC期に限れば5枚。これぐらいがちょうど良いよね。詩人の血も5枚なのでちょうど良いのだけど、配信始めちゃったから。

@junnovi:
「ドイツクremix」「タキティナ」リマスターで聴きたかったなぁ。Qujilaは確かに作品数がそれなりになったものねぇ。あれだけの期間かけても最後の「Cobalt Boy」までコンプリートして感動したっけ。あとどの作品も杉林恭雄が丁寧な小冊子をオリジナルで作ってくれて本当に大切な宝物になった。

@tpopsreryo:
さて、「RICE MUSIC」に入る前にまず@junnoviさんにとっての土屋昌巳というのはどういう存在なのか。出会いはどんな感じだったのか、簡単にコメントいただけますでしょうか?

@junnovi:
研ナオコなのは知ってたw 火星人であるということも知ってたw すみれな人なのも知ってたw その後、センセと知り合って「Life in mirrors」(1986年の3rdアルバム)を聴くようになって、大変重要なアーティストになったのでした。

@tpopsreryo:
そうでしたね。ワタシも最初は一風堂の「すみれ September Love」だったんだけど、やはりルックスが独特だったので上手くハマりきれてなかったというか・・ただ当然音は好きな部類だったのでちょこちょこ気にはしていたのです。でもやはり本格的だったのは「Life in Mirrors」でしたよね。

@junnovi:
それがさ、今回のBOXで知ったんだけど、写真集も出してたんやね。ニューウェーブの流れ? (デヴィッド)ボウイの流れ? ビジュアルの話はこれくらいにして、音楽については「この人、ギタリストとちゃうん?」という驚きが、今以ってしても覚えずにいられないのです。

@tpopsreryo:
当時はニューウェーブやニューロマンティクスな流れで語られてたから、簡単に言えばヴィジュアル系の範疇だったんですよね。しかし彼が評価されてたのはやはりギターパフォーマンスですよね。一風堂の曲は正直パクりが多くて有名でした。しかしサウンド面では先進性を随所に見せていたのです。

@junnovi:
ソロの作品を今回聴いて、土屋昌巳のギタープレイの多彩さは他のギタリストの作品では中々聴けないんじゃないかと思います。どこかシンセやコンピュータがキライだったりする人が散見されるところなのに、自ら積極的に先進のテクノロジーを導入して自らの作品に織り込むことってすごいことだと思う。

@tpopsreryo:
それではまず「RICE MUSIC」に至るまでの経緯を簡単におさらいしてみましょう。「RM」リリースは1982年。まだ一風堂の活動期間中で、大ヒット曲「すみれSeptember Love」も同年リリース。ということは大ブレイクを果たした時期にリリースされた注目のアルバムとも言えるんですね。

なお、一風堂は土屋昌巳、見岳章、藤井章司、赤尾敬文の4名で結成、1979年にデビュー。80年に「NORMAL」、81年に「REAL」の2枚のアルバムを出しますけど、この頃はニューウェーブな曲調ですが、土屋のヴォーカルキャラクターが全く違うんですよね。どちらかというとコミカルな金切り声というかw


それが81年の3rdアルバム「RADIO FANTASY」で徐々にUKニューウェーブの影響からか低音ヴォイスを徐々に生かすようになっていきますよね。「ふたりのシーズン」とか「MAGIC VOX」とかで。このアルバムが1つの分水嶺となってその後の土屋昌巳のアーティスト性の開花に繋がっていったような印象です。
そしてこの82年というのが土屋大活躍の年でして、高橋幸宏の初のライブツアーのサポートギタリストを皮切りに、大きかったのはやはりあのJAPANのラストワールドツアーのギタリストに抜擢されたことですね。これがキャリアとしてもこれからの音楽性としても大きな転換点であったと思われます。

そしてこの初のソロアルバムとしての「RICE MUSIC」のリリース。やはり日本の当時YMOを筆頭に先進的とも言えたエレクトリックミュージック、テクノポップやニューウェーブが欧米と同時代性というかタメで張り合っていた時代でしたので、彼は国内外のいろんな先進的なミュージシャンと共演したい、そんな気持ちがJAPANのメンバーやBill Nelson、Percy Jones、坂本龍一といった個性的な面々を集めたのではないかと思います。もちろん「すみれ」の成功があってのご褒美でもあったかもしれないでしょうけど。

@junnovi:
そう。それも今回の振り返りで認識したんだけど、中々忙しかったんちゃうんかなと思う。八面六臂の活躍というくらいに。
やっぱり才能があったんだろうね。いま一風堂の「ふたりのシーズン」を聴いてるけど、やっぱり若い! アゴもよぅ動いてるわw

@tpopsreryo:
なんだよ、アゴがよう動いてるってw まあなんていうかニューロマ特有の低くしゃくり上げる唱法と言うんですかね。ああいうのをいち早く確立したのが一風堂・土屋昌巳と言えるのかもしれませんね。そういう意味では後に泣きの入ったしゃくり上げに進化していくヴィジュアル系の元祖とも言えるのかも。

@junnovi:
なんかさ、土屋昌巳ってさ、その後の深みのある歌い方をするようになってからでも思うんだけど、口とか口蓋とかかなり大きな人のような歌い方をするなぁって。そこに、若さが加わって、キビキビと、パカパカと動くのが音と通じても伝わってくる感じがしてw いや~よう動くわ、アゴw
あと、この人だけ邦楽において当時からとても国際的という特殊な人脈形成をしているという印象が昔からあるんだけど、センセはどう思う? 私が知らんだけかもしれない・・・。

@tpopsreryo:
やはり世界的にスターダムにのし上がっていたJAPANのギタリストに抜擢されたことが大きかったんだろうね。それとやはり当時特有の欧米に対等に渡り合えていた日本のテクノポップ界隈の人的交流の賜物なのかもしれない。そういう意味では高橋幸宏のツアー参加は大きかったと思いますね。
結局幸宏ツアーでJAPANもBill Nelsonも捕まえたと思うんですよ。YMO人脈ってやっぱりすごいんですよね。特に高橋幸宏。彼はサディスティックミカバンド時代からUKに熱狂的なファンを抱えていたから、UK界隈の人脈がすごいんですよ。彼に近づいたことで土屋の人生が変わったといっても過言ではない。

@junnovi:
なるほど。良く分かった。ありがとセンセ。ドラマーとギタリストという関係で始まったんだろうけど、そこから派生してどんどんと展開していったんやね。

@tpopsreryo:
そのようなわけでこの82年リリースの土屋昌巳1stアルバム「RICE MUSIC」について、そろそろ各曲レビューに入っていきたいと思います。彼は自分が共演したいと思ったアーティストをとにかく呼びまくったそうですが、そんな豪華なメンバーは各曲で確認していきましょう。

@junnovi:
あ、その前に、私なりのこのアルバム全体の感想を書いておくわ。
この「RICE MUSIC」と「TOKYO BALLET」は、センセと知り合う前に発売された作品だったこと、聴いている音楽がクラシックがメインだった状態から本格的にニューミュージックも聴き始めるようなる前の作品だったこと、発売されたCDの音が軒並み悪かったことで、センセが薦めてくれてレンタルCD屋で何度か借りたものの、結局テープにダビングすることなく返却したこともあって、正直余り聞き込んでいない。だから今回こうやってリマスターされて音が改善して三部作と言われる「Life in mirrors」「HORIZON」「TIME PASSENGER」と並べて聴くことができるようなことになって本当に嬉しい。
だからどうしても後半の3作と比べると浅薄な印象中心のコメントになるけれど、許してね。
それにしてもこうやって「RICE MUSIC」を聴くと、その後のアルバムと比べると一聴して直ぐに分かるのが、音楽そのものの若さと軽快な疾走感が随所にみられるところ。それが貴重で新鮮に感じるね。
間違いなく私自身もそんな年頃を通り過ぎてしまって、振り返るように見る感じが、愛おしいというか微笑ましく見てしまうところがあって、どうしても評価が割り増しする気がする。当時、こんな尖った攻撃的な音楽をしていたんだと改めて思うのだけれど、一風堂の楽曲と聴き比べたらナルホドと納得する塩梅やね。
このアルバムについては色んな音楽的要素が盛り込まれていて、それ故に良く言えばバラエティに富んだ、悪く言うと雑多で落ち着きのなさが故に、寝床で聴くとチョット気分が悪くなったこともあるんだけど、それもこのアルバムの重要な個性やと思う。「HORIZON」や「TIME PASSENGER」といったアルバム全体を貫くテーマがあるというより、土屋昌巳自身が良いと思う音楽的フラグメントが余りに多くあってそれをどうしても世に問うて内的浄化を図るカタルシスだったんじゃないかと思うのです。

@tpopsreryo:
実はコメントしていることはその通りで、この1stアルバムはコンセプトアルバムと呼ばれる場合もあるのですが、本人は全くバラバラで行き当たりばったりの寄せ集め的な作品と呼んでいるのね。当時影響を受けた音楽性をまさに散りばめたアルバムという意味では、ほんと大正解なんですよ。この解釈はw

1.「ライス・ミュージック」

 作詞・作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
1曲目から「ライス・ミュージック」。このアルバムはオリエンタル風味が非常に強いのですが、のっけから意識していますよね。ドラムはSteve Jansen、ベースがMick KarnというJAPAN勢という贅沢さ。ほどよいブワブワフレットレスです。そして欠かせないのはBill NelsonのフライングE-Bowギター。


Billの代名詞とも言えるE-Bowギターは電磁力で弦を振動を持続させるアタッチメントなんですが、E-Bowはこの時代特有の空気を表現していますよね。心地よい浮遊感。そして仙波清彦の参加とEVEのコーラス。この1人と1組の参加が非常に重要なのです。

まず仙波清彦はこの後89年までに渡る彼の作品群、特に後半のEPIC3部作と言われる「Life in Mirrors」からのサポート人脈、近藤達郎や清水一登といったキリングタイム勢を繋げる媒介となっただろうと思われます。そういう意味で土屋のそれからの音楽性を語る上での重要な参加です。
そしてEVE。彼女らのコーラス参加はアルバムのカラーをガラッと変えてしまうのです。良い意味での下世話さというか仕事に徹するトリオコーラスは、むさ苦しい男たちのニューロマ世界に異物を混入してくるので、それからの土屋作品の中でも本作が異質に感じられる要素として重要なパーツの1つなのです。

@junnovi:
東洋の陽気な響きの中に、ベースのプギューという絡み。同じフレーズの繰り返しだけれど、前口上というかオープニングとして楽しい。楽器それぞれが主張しており、即興性をもっていて単なるリピートとは異なる。それにしてもこの曲のオープニングの音のか細さは、往年のファンを苦しめただろうと思う。余りに不安定だから。レコードの音も針を落として間なしの不安定さ、カセットもリーディングテープ部分を終えて間なしの不安定さ、CDは音が細かっただろうし、そこからダビングしようものならブレブレになっちゃって聞くに堪えなかったり。

@tpopsreryo:
楽曲全体としては明るいオリエンタルミュージックなんだけど、スタートはスゴく妖しい雰囲気で始まっているんだよねw そして遠くから聴こえてくる琴の音色。御簾の向こうから聴こえてくるそのミステリアスさが、あのイントロで表現されていると思うね。好きなんですよ、あの始まり方。

@junnovi:
最初の5秒くらいは思わず「HORIZON」を間違って再生はじめたかなと思うけど、センセの言う通り琴が入ってくるから「アレちゃうんや」と。ギターが最盛期の来ない蝉の鳴き声みたいで、まだ暑くなくてエエわw

@tpopsreryo:
そうそう、「HORIZON」と同じような始まり方。今思えばあれは1stのオーマジュだったのかなあ。ギターのペラペラ具合は土屋の技巧が光っていると思うけどね。

@junnovi:
あとEVE! この人らについては、後で触れるわ。特に「Rice Dog Jam」!w

@tpopsreryo:
OK! それにしてもコーラスの歌詞、This is rice music、The rice is niceって何てストレートな歌詞なんだw それでは次の曲いきます。次も語れるよね、彼女らについてw

@junnovi:
キャラが出すぎやねん、この子らw ってお姉さま方ですけど!


2.「せっせっせっ」

 作詞・作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
2曲目「せっせっせっ」。これは聴いた当時衝撃を受けましたね。何にってそりゃあPercy Jonesのベースプレイですよ。他のプレイヤーには絶対思いつかないフレーズ。鼻から抜けていくようなハーモニクス。土屋のギターも相当テクニカルで暴れまわっているんだけど、あのフレットレスは正直反則です。
ノイジーに暴れ回る土屋ギターとPercy Jonesの魅惑のフレットレスベース。このケミストリーがスゴイのです。日本にも多くの素晴らしいベーシストがいますが、ことフレットレスに関しては彼と後述するMick Karnのようなアイデアに満ちたフレーズを繰り出すプレイヤーはまだ現れていないですよね。
楽曲自体は子供の遊び「せっせっせのヨイヨイヨイ」の超解釈なのですが、まさかこんな激しいサウンドに展開されるとは。土屋とEVEの掛け合いも下世話この上ないし、「ヨイヨイヨイヨイ!」の力の入り方に至っては、結構坂本龍一の影響を受けていると思う。「生きてるぞっ!」(YMOのラストアルバム「サーヴィス」7曲目(コント)「S.E.T+YMO」参照)の言い方との類似性がw

@junnovi:
ホンマに・・・。ギターのフレーズも一筋縄で行かないものだよねぇ。EVEのコーラスも狂気乱舞してるけど、そんなことよりもベースであり、ギターであり、そしてそこに鋭く切り込むドラムスも看過できない。中々のスピード感で圧倒されて曲が進んでいく牽引力になってるよね!名曲!!

@tpopsreryo:
そう、怒濤に流れ込んでくるのねフレーズの渦が! 土屋とPercyの狂気のプレイが! 冷静なSteve Jansenのドラムも非常にタイトに切り込んでくるし。そして派手なメイクをしたEVEが容赦なく襲いかかってくるという・・・w 思えば狂乱の名曲ですよね〜。

@junnovi:
これは良いねぇ~。ホントに。センセは高校生の時に取ったアンケートでこの曲挙げてたのを今でも覚えてる。だから結構長い間知っていたけど、やっとまっとうに聴けて満足。なるほどセンセがその頃こだわっていたのがが良く分かった。
三三七拍子をモチーフにした曲なんだけど、そんなことよりも触れないといけないのが、センセもすでに述べているけど、のっけからのベースの音。どうしてこういうヘンな音を出すのだろ? 堂々とギターの音域まで攻撃的に攻め込んでくるんよね。こういうの、アリなん?

@tpopsreryo:
そういう、「アリでない」フレーズを繰り出すセンスというか能力というか、そういうのがPercyにはあるんですよね。しかもあれだけやりたい放題やって楽曲を壊さない。しっかり型にはめてくる。そこが素晴らしいんですよね。こういうのは日本人には真似できないかも。

@junnovi:
ホントに。当時の土屋昌巳が、自身の楽曲で演って欲しいと願ったであろうことは、想像に難くないね。こんな演奏する人、日本人のベーシストで聴いたことないもん。指先とか指関節の作りが違うのかも知れないw

@tpopsreryo:
UKのフュージョンバンド、Brand Xのフレットレスベーシストとして名の知られていた彼なんだけど、ピッキングハーモニクスやグリッサンドの使い方がスゴイよね。でもスタイリッシュなんですよ。あれだけ素っ頓狂なフレーズなのに、涼やかで軽やかなプレイなんですよね。そういう部分も好きなんですよ。(動画は貴重なPercy Jones日本のテレビ出演:一風堂「African Nights」in 1984)

@junnovi:
言ってる意味わかる気がする。巧いのは分かったから、いい加減饒舌になるの止めろよと思うのってあるもんね、出しゃばり過ぎな奴w って言ったらほぼ誰のことか特定できそうな気がする。人の曲をプロデュースしておきながら、曲後半には我慢ができなくなってコーラスワークで不法占拠するあのお方w

@tpopsreryo:
ああ、T.KADOMATSUのことねw

@junnovi:
ゲラゲラw だって、あんなに不遜で自意識過剰で「オレ!オレだよオレ!」な人、他に知らないw イライラするけど、大好きw ある特定の時期だけだけど。
このリマスターを聴いて思うんだけど、ここまでのことを82年あたりでやられちゃうと、その後のチョッパー乱れ打ち時代をどう表現したらいいんだろうと思う。大好物ですけど、ここまで動物のようなプレイをするベースでここまでの楽曲を作ったら、あとは何をすれば「越えられる」のかと。

@tpopsreryo:
そこはアレですよ、フレットレスはどうあがいても無理なんだから、チョッパーを極めるしかない。そこで頑張っていたのが後藤次利とかだったりするんですよね。歌謡曲に堂々と無茶苦茶なチョッパーを持ち込んでいきましたよね。彼のチョッパーは何だか使い方が面白かったんですよw
(動画は後藤次利アレンジの変態ベース歌謡の金字塔:吉川晃司「PSYCHEDELIC HIP」in 1986)


3.「HAINA-HAILA」

 作詞・作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
3曲目「HAINA-HAILA」。前曲の喧騒から沖縄に飛んでまいりました。沖縄ソングってあざとさが鼻についてきたりするんですけど、ここではどこかしらコミカルに料理しているなあという印象なのです。そういう雰囲気にさせているのは、当然Mick Karnのベースですよね。彼のベースも反則この上ないw
この楽曲は仙波清彦大活躍であり見せ場なんですよ。ものすごくパーカッシブな曲でイントロからガンガン叩いているので普通なら主役なんですが、Mickのフレットレスは卑怯ですよね。あの音色とフレーズで一気に主役を奪っていく。何だよあの間奏の酔っ払いのような腑抜けたフレーズは! お茶吹いちゃうw

@junnovi:
沖縄音階を用いてるけど、試しに行ってみた沖縄が楽しかったのかな。自分で表現してみたかったんだろうかと。ノイジーな沖縄エッセンス。ためにし作ってみたら思いのほかうまく作れたので、もっと仕上げてみました、という感じに思う私は意地悪?
まぁ、こういう類いの音楽は、ステレオとかヘッドフォンとかからではなく、実際に音のなる現場でじかに聞く方が迫力とか波動とかがあって、きっと良いんだろうと思う。あとセンセとは場所が違うんだろうけど、エンディングの長いフェードアウトの間、ずっと鳴る高いベースプレイ、笑える!w

@tpopsreryo:
ああ、アレね! でもあのフレーズ、あの和笛のフレーズと絶妙にマッチしているんだよね。日本古来の楽器と思わせるくらいのハマりようで。フレットレスに感じさせないもん。ああいうのはPercyは似合わないのよ。遊びというか酔っ払いというか、独特のセンスですよね。彼のベースも当然日本人では無理。

@junnovi:
Mick Karnは後半の3部作では本当にお世話になりました。


4.「タオ・タオ」

 作詞:Giles Duke 作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
4曲目「タオ・タオ」。沖縄から中国に飛びました。これはまあ大好きなスピード感のニューウェーブなエレポップですね。ここでは細かなシーケンスを繰り出す松武秀樹のプログラミングが生きている・・・と言いたいところですが、JAPANリズム隊とBill Nelsonギターの自由度が凄すぎて・・・w
相変わらずのMickフレットレスは当然としてリズムマシンのようなタイトで正確なSteveのドラミングも、バシッと決まったエンディングも含めて素晴らしい。BillのE-bowはもはや名人芸でずーっと飛び回ってる。ドローンが旋回してる。あんなにメインフレーズはせわしないのに自由気ままに飛び回ってるw

@junnovi:
キチキチと右へ左へ小刻みに触れるハイハットのような音は終始鳴り続けてるんだけど、今回のリマスターの恩恵と言うべきか、大変耳にこそばゆくて「あーもぅ!痒いんじゃ!」って突っ込みを入れました。そんなことよりもまたしてもベース! この曲でも何してるのだろう!
もう別の楽器に化けてしまってる。プゥーンお化け。プゥーンという音を発しながら白い風船玉が膨らむようなそんなイメージ。「せっ!せっ!せっ!」の演奏でPercy Jonesにそのプゥーンお化けの親玉は決まりと思っていたら、ここでMick Karnがそれを真っ向から挑んでくるような演奏が展開されている。ベースをこういう風に演奏するのは彼ら二人以外に他にはないよね。どういう解釈をしているのでしょう。

@tpopsreryo:
このスピード感でプゥ〜ンとやられると笑っちゃうよね。でも少年期にあんなベースフレーズを聴いてしまうとダメなんですよ。もう普通のフレーズだと満足できなくなっちゃうんで、普通の曲が聴けなくなってしまうw


5.「NEO-RICE MUSIC」

 作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
5曲目「NEO-RICE MUSIC」。これはインタールード的な1曲目のダブバージョンですね。当時ダブミックスって流行りましたよね。深いリバーブとディレイをかけて麻薬効果を生み出して幻覚を見せるようなアレです。リズムがより強調され、ハワイアンのような土屋ギターがフィーチャーされたバージョンです。
短いインターミッションなので特に多くのコメントはしない方向ですが、あえて言うならば途中の物凄くローファイな「ヤア!」という合いの手。ここまでローファイで潰れた「ヤア!」は聴いたことないですw

@junnovi:
ヤァ!w あとやっぱり繊細なギターの音が心地良いね。それと1:20くらいの急に狂暴になるベースが気になるw
アンビエントながらも刻まれるリズムがクリアで印象深いよね。下敷きはやっぱり1曲目なのが分かる。それくらいかなぁ。


6.「KAFKA」

 作詞・作曲・編曲:坂本龍一

@tpopsreryo:
6曲目「KAFKA」。本作の中では異質な坂本龍一とのコラボ楽曲。ここでは土屋は完全にギタリストに徹していて、その他のパートは(ベースやドラムも含めて)坂本がこなしているし、そもそも坂本作曲なので彼のソロという解釈です。故に別物ですね。
トランシーバーでの語尾だけのポエトリーリーディングに、何だか前のめりなドラミングのこの荒さっぷりが実に坂本ドラミングらしいアレです。無駄にパワフルなんですよね彼のドラムw この楽曲は本作の中ではリマスターの恩恵を強く受けたと思います。格段に音のパワーが生まれたと感じます。

@junnovi:
そうなんや~。こういう攻撃的でシビアなトーンなのも彼の作風なんやね。人気出るはずやね。でも私はやっぱり繰り返しの苦手さの方が勝るから、アカンわ。リマスターの恩恵、ここで出てくるんやね。確かに曲の骨組みっていうのかな、体幹が太いとも言いたい音の太さは、すごくしっかりしてるもんね。

@tpopsreryo:
82年の作品なんだよね。ドラムがどんどんエフェクティブにタイトになっていくのって、日本では83年ぐらいからという認識があるんですよ。82年当時はやはりYMO周辺というか、そのあたりしかこうしたパワフルなドラム処理ってなかったと思うのです。

@junnovi:
やっぱりそういう意味ではこのあたりの人たちが時代を牽引していたんやね。それを受けてどんどんと枝分かれして、そこからまた育ってっていう展開が80年代後半に待っている訳やね。
歌詞が謎解きパズルのような語群になっているけれど、これはもしかしたら日本語訳されたカフカの著作からの語句から抜粋なんじゃないかと想像する。
私はなぜか坂本龍一の音楽の恩恵をほぼ受けなかった人間なんで、彼の音楽面の変遷についてもほぼ無知なんだけど、こういう1つのモチーフを徐々に展開していく手法を得意としているのでしょうか。あぁホントに繰り返しが多くて…。音楽的要素から見たら多分30秒にも満たないものをひたすら繰り返しているだけに思う。そう思うとアレンジも凝っているしカッコいいと思うんだけど、繰り返しが嫌いな身としては、うんざりの方が勝って結構しんどい。
土屋昌巳とはまた違う個性でこういう楽曲が入ることの面白さも理解できるんだけど…。ようやく1分30秒あたりから動きが出てくる。それでもやっぱり繰り返し。どうも落ち着かない。そんな精神的不安定な不条理も意図して作られているのかも知れないけれど。

@tpopsreryo:
当時の坂本ソロ作品も繰り返しは多かったですよね。ミニマルミュージックの影響もしっかり受けていると思うから、そういうスタイルのものをやりたかったはずなんですよね。ちゃんとPOPSも当然書ける人なので、当時「やりたかった」ことの1つと思えば良いのかと。


7.「ライス・ドッグ・ジャム」

 作詞:中西俊夫 作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
7曲目「ライス・ドッグ・ジャム」。MELONの中西俊夫とのコラボ曲。同時期リリースのMELONの1stアルバムは確か土屋プロデュースだったのでその縁でしょうか。これはPercy参加曲なんですが、ここでは比較的細かいフレーズを刻みながら控えめにプレイしていると思います。それ以上に負けずに土屋が挽回!
おそらくギターもシンセサイズされた音色を使用しているのではないかな。ノイジーギター全開でギュルギュルいってるし。シモンズを乱れ打ってるのも良いですね。そのスピード感とごった煮感に圧倒されるのですが、Percy vs 土屋のフレージングバトルが頭上で展開される構図が楽しすぎますね。

@junnovi:
「せっせっせっ」と似てる。各器楽の音が小刻みでシャープで速い。この曲はおそらくリマスターで、闇夜をうごめく怪しい虫のように小刻みに弾かれるベースが鮮明に聞こえるようになって、センセの評価は変わってるんちゃうかなぁ。何ていう演奏やろ…。それにしてもこの曲のEVEのコーラスは!

@tpopsreryo:
そうこのベースはリマスターの恩恵の1つですね。飛び道具だけでなくてしっかりフレーズを刻み込んでいっているんですよ。そこが何ともスタイリッシュ。英国紳士なんですよね。彼にとっては「仕事」の1つなんですよ。

@junnovi:
そやんね~。ちゃんとストレートに刻み込みながら、しっかり随所にアクセントをつけてくるのがすごいよね。ここでもリマスターの恩恵が感じられてよかったね!


8.「SECRET PARTY」

 作詞:Giles Duke 作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
8曲目「SECRET PARTY」。本作の中ではこの楽曲が最もJAPANに近いなあと思っているのですが、実はほとんどのパートを土屋本人が演奏しているんですよね。プログラミングの松武秀樹と写真を撮りまくっている鋤田正義と、やっぱり出てくるEVE以外はw
JAPANに近いというのは、歌詞にもしっかり「Gentlemen take polaroids」っていうフレーズが出てくるからあながち間違いではないと思うのですが、ドラムやベースのスタイルもまあ影響受けていますよね。そしてこの曲に限らず本作ではTape Loopを多用してますね。サンプリング、やりたかったんだなあと。

@junnovi:
そうなんや! 全然分からなかったけど、すごいなぁ。佐藤博「awakening」とは偉い違いやね。でも「awakening」、あれはあれで私は好きなのです。たまに無性に聴きたくなることがあるねん。それにしてもこのアルバムの曲はどれもこれも始まり方が本当に個性的やね。
「曲のとっかかり」と言った方がしっくりくるかな。でも始まったら夢遊病者みたいな曲展開でやっぱり予測しづらい。その意外性というかハチャメチャ感がこのアルバムのごった煮感を高めてるし、のちの「Life in mirrors」の「KHAOS TOWN(日射しの罪人)」の原型が見える気がするけどどうなんやろ。
1:45あたりから鼓膜を軽く傷を残すようなしつこく鳴るカメラのシャッター音みたいなの、アレ、センセの言う鋤田っていうカメラマンの仕業?w 曲の最初にもあるよね? やっぱりポラロイドとか歌詞で言ってるけど、木立の陰から隠れて撮ってるようなそんな文春的なトーンがする、イジワルな音w

@tpopsreryo:
鋤田正義はYMOのジャケとかDavid Bowieとか撮影しているその界隈以外でも有名なカメラマンですよ。ちなみに後述する「ALONE」の撮影も鋤田氏、そして何を隠そう本作のジャケも鋤田氏。

@junnovi:
そうなんや!全く知らなかったです~。カメラマンと言って思いつくのが浅井慎平とか藤原新也くらい。恥ずかしい・・・。そういえば藤原新也の文章、受験生の頃に読んだけれど、難しかったなぁ~。


9.「サイレント・オブジェクト」

 作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
9曲目「サイレント・オブジェクト」。本作の中で最も印象が薄かった楽曲なのですが、リマスターによってリズムボックスの音が際立ったおかげでようやくイメージをつかむことができました。E-bowっぽいロングトーンのギターで全体を包み込む妖しいインストでラストへの橋渡しになっています。

@junnovi:
松武秀樹と2人で作った曲なんやね。もーさー、何べん言わすん、繰り返しキライやって。けどねPeter Gabrielの「Passion」っていうサントラの繰り返しはOKなんです。繰り返しにも受け入れられる型があるみたいです。でもほぼ大半の繰り返しは、「もうええって!」って思ってしまうのです。
この曲もその部類やね。音楽的内容については、いつもにも増してありません…。発言の内容が繰り言ばかりで余りになさ過ぎてゴメン。謝るわ。


10.「ナイト・イン・ザ・パーク」

 作詞:Giles Duke 作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
10曲目「ナイト・イン・ザ・パーク」。ラストを飾る開放感あふれるミディアムナンバー。なんとPercyとMickの共演が実現?と思いきやMick Karnはアルトサックスでの参加。Percy Jonesもここでは控えめ。といっても相変わらず妙なフレーズなのですが、もはやこの程度では満足できないw
それとミディアムナンバーながらリズムが強く感じるのはSteve Jansenのドラムに仙波清彦が和太鼓等で補強しているからです。でも定期的に「コー!」といってるノイズはクレジットされてないけど松武仕事でしょうね。またこの曲は後半のサックスソロから入ってくるベースソロが何とも味わい深いです。
飛び道具的な派手さはないのですが、この曲にはこのフレーズというくらい、長年思い出すし、思い出させられる不思議なフレーズなんですよ。物凄くノスタルジーを感じさせられるんですよね。子供の頃に戻ったような気分にさせられる。こういうのを名曲と言うのかもしれませんね。

@junnovi:
そのキーワード出てこんかった。ノスタルジーやね。そうやな。ちょっと大局的な雰囲気もあるやんか、この曲。呼吸が深いというか。そこがまたいいね。
あとノスタルジーといえば、私はなぜか周期的に浜田麻里の「Nostalsia」を聴きたくなる人間ですw パリダカには特に共鳴しないんですが。

これまでの曲がどれもじゃじゃ馬ぞろいと言うか、ガチャガチャでワガママばっかりいう連中ばっかだったから、ここにきて聴き慣れたトーンの曲が来るので、つい聴き入ってしまう。実際それに応えうるだけの曲やと思う。曲全体のたたずまい、向いている方向みたいなのが分かりやすくて好きやなぁ。
とは言いつつもやっぱりこの曲についても「曲のとっかかり」が特異。ベースが既に主張している。ギターソロが始まる前のちょっとしたベースフレーズの特異さ! そしてサックスソロの始まる前のベースフレーズの特異さ!プゥーンおばけ再来。
土屋の「♪パアァ~~~~ク」というまた口蓋を広げてるのが、天然な感じで笑える。

@tpopsreryo:
既にこの楽曲で唱法は確立されたのかもしれないですね。以降ずっとこんな感じですもん、歌い方。次作ではちょっとヤンチャな頃が見え隠れするけどw


ボーナストラック「ALONE」

 (6曲とも)作曲・編曲:土屋昌巳

@tpopsreryo:
それでは最後にボーナストラックを。写真集「ALONE」から6曲です。「Alone」、「Things To Worry About」、「Fear For The Future」、「In Time - Out Of Time」、「Nightgulls」、「Never Mind」。これらは一括りですので、まとめて。
写真集のイメージサントラなので、アンビエント色強いです。静謐なピアノ中心な1〜2曲目、無国籍風味なアプローチがその後の音楽性を彷彿とさせる3〜4曲目、浮遊感のあるシンセアンビエントな5〜6曲目。最後の2曲がやはりシンセ好きとしては好みですね。恐らくProphet5でしょうね。良いパッド音です。

@junnovi:
じゃあ、ワタシからも簡単に1曲ずつ。

「Alone」

村松健のアルバム「夏のぽけっとに」の世界が広がる。でも村松健の場合はCDメディアが定着した80年代後半から環境音楽とかニューエイジ・ミュージックの流れの中に位置付けられるけれど、土屋昌巳のこの曲の場合はどうも何かちゃうな。もっと日本海。

「Things To Worry About」

やはり村松健を連想させるところがあるんだけど、こっちは『夏のぽけっとに』と言うより『子供の時間』。暖炉の前の怖さを帯びたそばから、かなり執拗で無機質な白昼夢に苦しむ、そういう陰のある不安定な家族の一面を表しているような楽曲。やっぱりちゃうな、村松健と。村松はもっとオーガニックやし、もっとナチュラル。むしろさっき登場したけどPeter Gabrielの「Passion」やな。

「Fear For The Future」

何か映画のサントラのような楽曲。映画の一場面、それも何かシビアな状況を表すための音楽的断章。
いよいよPeter Gabrielの映画サントラCD「Passion」になってきた。イニシエーションのような、試練のような、そんな局面を表しているよう。「Passion」はPeter Gabrielの作品の中でも最も好きなアルバムなのだけれど、同じトーンの土屋昌巳の方は聴くのがしんどい。繰り返しが余りにも多いし、信仰や精神性の濃淡もある気がする。マントラや念仏といった呪詛を唱えるにしては、強力な精神的な磁場を感じさせない。だからどうしても退屈で冗長になってるんやないかと。印象派にしては色彩感に欠けており、もっと病的なもの。

「In Time – Out Of Time」

前曲に続いてまたサントラが続きますね。益々その宗教的な精神性は希薄になってく。

「Nightgulls」

これは怖い曲やね。荒々しい息づかいのような音が波打つように何度も何度も繰り返されて、それを病的なシンセの音がその波を増幅させている。気持ち悪くて怖い。特に2:30以降のシンセの音は狂気を感じさせるほど。こんなん写真集に付けてええの?

「Never Mind」

これも暗い。そして延々と繰り返されるフレーズ。けれども1:37や3:00から始まるギターの音色の美しさがあるけれど、やっぱり暗い・・・。

@tpopsreryo:
ありがとうございます。正直ワタシはすっ飛ばしたというか、ボイコットしましたw こういう刺身のつまみたいなインストは特にレビューしても仕方ないのでサラッと流そうとしたのですが、しっかり1曲ずつコメントを残してくれました。感謝です!

@junnovi:
そやね。グレーがチャコールグレーになるような感じの音楽群なんやろね。なんしか村松健とPeter Gabrielという普通ありえない2者間の間を行ったり来たりしました。


〜エンディング〜

@tpopsreryo:
というような感じで「RICE MUSIC」のレビューをしてまいりましたがまとめていきましょう。

豪華ゲスト陣を迎えて、というのはこれからの作品もそうなので驚きでもないのですが、とにかくPercy JonesとMick Karnという稀代のフレットレスベーシストの起用が、本作の存在を異質なものにしてしまいました。
彼ら2人はBill Nelsonのような特異なプレイヤー、そして坂本龍一やMELONといった近しい日本のアーティストとのコラボを積極的にこなしながらも、その脇で存在感を発揮する仙波清彦とEVEというこれも異質のフラグメント。それらのケミストリーが82年という時代感をノスタルジーに想起させました。
82年というのは日本のテクノポップ〜ニューウェーブ界にとって面白い時代。欧米と日本の音楽的潮流が絶妙にマッチした興味深い時代だからこそ生まれた、ワールドワイドに対等に渡り合える当時としては珍しいアルバムだったかも。世界に胸を張って紹介できるジャパニーズニューウェーブ作品ですね。

@junnovi:
このアルバムはギタリストのアルバムではなく、ベーシストのアルバムなのではないか、フレットレスベースの可能性を模索した作品なのではないか、そういう思いを抱くほどに、大活躍やね。ニューミュージックにおいてベースの機能がどれだけ重要であるかが良く理解できる作品やね。

@tpopsreryo:
ベースという楽器が主役になりうるポテンシャルを示したという。日本ではまだまだ縁の下の力持ち的なイメージが強かったですからね。チョッパー、スラップという奏法で派手さは生まれつつあったけれども、フレットレスのあの表現はそもそも発想がなかったもので、そういう意味でも可能性の塊かと。

@junnovi:
80年代後半、フレットレスベースを大々的にフィーチャーした作品って、すぐに思いつかない。それこそ「HORIZON」くらい。

@tpopsreryo:
千年COMETSのアルバムはフレットレスフィーチャーでしたね。そういう意味では川上シゲには可能性を少し見出した時期もありましたw

@junnovi:
そっかいたんやね、ちゃんと。千年COMETSはそれこそ「Nostalsia」を2回借りてダビングしなかった・・・。今となってはもったいないことをしたよ。そういえば千年COMETSってリマスターとか出てるんやろか?
ノスタルジア。。。浜田麻里。。。

@tpopsreryo:
浜田麻里に突っ込んでると時間がないのでスルーですw
千年COMETSもオーダーメイドファクトリーに引っかかっても良さそうなもんだけど・・・。

というわけでまずは土屋昌巳SOLO VOX第1回「RICE MUSIC」のクロスレビューは終了です。次回は2ndアルバム「TOKYO BALLET」です。お疲れ様でした!

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