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【BioClubイベントまとめ1】バイオプリンティングのアーティストのイベントを聴いてみた話

1/22日に、日本屈指のDIYバイオのコミュニティ「BioClub Tokyo」にて、「バイオプリンティング」に関する作品を手がけるアーティストのイベントが開催されていたので参加してきました↓


講演は英語で行われるとホームページに書かれていましたが、現地の方がところどころ日本語で説明されていたのでわかりやすかったです!


アーカイブはこちらから見れます↓


(出典のない限り、記事内の画像は全てアーカイブからとった画像です。また、日本語の画像は、元の画像をGoogle翻訳にかけて翻訳しています)


制作者について

シンガポール出身のアレクシー・ドムケ(以下アレクシーさん)は、アメリカの大学に通いながら、主にインターネット文化や情報科学に関する作品を制作してきました。

コマンドプロンプト風のスライドデザインもカッコイイ

↑海外掲示板「4chan」で出回った陰謀論をモチーフに作ったドリンクの作品や……


↑古代都市「ポンペイ」で化石として発見されたゲイたちに対する当時の恋愛感覚を、「ケモナー」と交えて表現する作品などを発表しています。


「3Dバイオプリンティング」のアートに取り掛かる

そんな中、アレクシーさんは「知能合成生物学」をベースにした作品の制作に取り掛かりました。


従来「人工知能」といえば、コンピュータ上で動かすものだとされてきましたが、近年では神経細胞を使って人工知能を作るという研究が進んでいます。

アレクシーさんは、作品を通じて「細胞は知覚を持ちうるのか?」という問いや、「知能合成生物学」の社会への影響倫理的な課題を投げかけたいと考えているそうです。


作品内では、家庭向けのDIYバイオのツールを提供している架空の企業Genosync」が登場します。


Genosync社が発売しているバイオプリンタでは、神経細胞を特定の位置に配置して人工知能を「印刷」することができます。

湿度調節器やCO2インキュベーターなど、細胞培養に必要な装置も内蔵されており、現実的に存在し得るような設計になっているとのこと。


バイオ人工知能プリンタの自作

MSAの自作

ここから、作品のバイオプリンタの製作の経緯が紹介されました。


神経細胞上で人工知能を動かしたり、その人工知能の結果を「見る」ためには、神経細胞の波長を見る必要があります。

そこでまず、アレクシーさんは神経活細胞の波長を測定する「MSA(マイクロエレクトロアレイ)」を自作しました。


最初のアイデアはよくわからない(冒頭で少し取り上げた説明担当の方も「うまく伝えづらい」とおっしゃってました)のですが、ビニルを使ってガラスの板に銀を付着させて、そこにニューロンを通す?仕組みらしいです(間違ってたらごめんなさい)

ただ、銀がうまく付着したことでうまくいかなかったとのこと(使った試薬が原因と考察されている見たいです)


次に考えたのは、安価に手に入る「インジウムスズ化合物」がコーディングされたガラス板で、感光フィルムと薬品を使ってMSAとして使えるようコーディングを落とす方法です。

最初の手法より良い結果が出たそうですが、コーディングを剥がす解像度が悪かったことや、コーディング剥がしに強酸を使うため危険性があるなどといった課題があります。


最終的には、ガラス板を使うことを諦め、電子基盤上にMSAの回路を焼き入れることにしたそうです。

研究業界でも、MSAの自作にこの手法が使われているそうです。

欠点として、ガラス板ではないため板が透明ではなくなり、細胞が観察しづらいということがあります。


マイクロ流路の作成

次に、バイオプリンティングに必要な細胞の通り道である「マイクロ流路」の自作に移ったそう。


↑ガラス板の上に、レーザーで流路部分に穴を入れたアクリル板を載せ、接着して制作したそうです。

材料にはPDMSとアクリルを試したそう。

アクリルの方が安価に入手できるものの、気泡が入ってしまうなど成功率がかなり低いという欠点があるそうです。


流路上部の3つの穴から培養液、抗生物質、栄養剤を加えることで、下の穴からバイオプリンティングに必要な細胞が入った「バイオインク」が出てくる仕組みです。


↑その後、3Dプリントした土台マイクロ流路の穴を入れたシリコン板を入れ、そこにアクリル板を乗せてマイクロ流路を改良したそうです。

難しかった点は、層同士の隙間を埋めづらく、液が漏れ出てしまったことがあげられます。


↑細胞を培養する容器は、3Dプリントで作成したそう。


右上の小さな丸い穴にバイオインクを入れることにより、バイオインクが培養槽(左上の大きな穴)に上から入ってくる仕組みになっていて、培養中に神経細胞が剥がれにくいというメリットがあるそうです。


将来的には、パソコンのOSキャラクターを擬人化させたキャラクター「OSたん」の体を、バイオプリンティングで作成した人工知能を使ってシュミレートする作品の制作をしたいそうです。

OSたんとは何か、知りたい方は↓


FRESH法バイオプリンタの作成

また、アレクシーさんはアニメキャラの「動き」だけではなく、物理的な「体」を作る作品も考えているそうです。


↑この時のバイオプリンタは先程紹介したバイオプリンタとは別に通常の3Dプリンタの一部のパーツを組み換えて自作し、FRESH法という手法を使って印刷しているとのこと。

見た感じ↓の記事のやつを真似たのかな?



FRESH法では、バッファー内にバイオインクの細胞を配置させます。

細胞が配置されると、バッファーとバイオインクが反応して凝固し、まるで空中に細胞が配置されるかのようになるとのことです。

詳しい仕組みについては↓の記事が参考になります。


また、スライサー(3Dプリンタを動かすためのソフトウェア)も、バイオプリンタ用に適切なものを選んでいるそうです。


↓実際にプリントしてみたところ。




↑アレクシーさんはGenosync社の提供する、神経細胞でアニメキャラの動きの再現(リアルの細胞でデジタルキャラを表現)とアニメキャラの体のバイオプリンタによる印刷(デジタルキャラをリアルで表現)という2つのサービスを通じ、リアルとデジタルを繋ぐ二面性のある作品を作りたいと考えているそうです。


感想

という感じでイベントの概要をざっくりと書いてみました。


DIYバイオを一般的に普及させるためには、生きた細胞を素材にものづくりを行う「なまものづくり」の普及が重要だと考えていて、それがこのイベントに参加した一番の理由です。


(DIYバイオになまものづくりが重要だと考えている詳しい理由はこちら↓)

(なまものづくりって何?という人はこちら↓)


Zoom越しでアレクシーさんのアートを見た時、
「まさに自分が目指そうとしているものだ!」
と感激しました。

特にFRESH法のバイオプリンタを使った作品はとても興味深く、思わず自分もプロジェクトに関わってみたいと思ってしまいました。


アレクシーさんの作品の進捗については、またウォッチしていきたいと思います。


アレクシーさんのinstagramは↓にあるので、気になった方もフォローしてみてはいかがでしょうか。


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