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Shojinmeatの日常メモ 号外 メンバー執筆の小説を一部公開!

Shojinmeat Projectのメンバーが、「人肉食」をテーマにした小説を執筆しています。

人が人を食べる「人肉食」(カニバリズム)は、倫理的な課題のほかに

  • 生産する際のエネルギー効率が悪い

  • 摂取する時にクールー病などの病気にかかる恐れがある

などの理由から、人類のタブーとされています。


しかし、人肉を細胞培養で育てるとどうなるでしょうか。

人を殺さずとも、細胞さえ得られれば肉を作ることができるため、犠牲なしに肉を生産できるようになるでしょう。

生産時のエネルギー効率も、肉の部分を培養するためだけにエネルギーを入れれば良いので「ヒト1人」を殺すより効率が上がることが期待されます。

培養では菌が混入するのを避けますし、クールー病は主に神経細胞(=脳)を摂取する際に感染するので病気のリスクも防げます。



……といった感じでぼくなりの勝手な感想を書いてみましたが、小説ではどんな答えが出るのでしょうか。


そしてここからが本題なのですが、作者さんからの許可を頂き、本文の一部をこのnoteに載せられることになりました!

以下、公開部分を載せますので、ぜひ、世界観に浸ってみてください!





培養人肉が乗ったディッシュを目の前に置き、目を瞑り、手を合わせる。


「イノチはイノチを食べて生きています。イノチを食べた私はいつかイノチに食べられる。私が美味しいといいのだけれど。」


いただきます、の代わりに谷川俊太郎の「恐竜人間」を唱える。まあキリスト教徒が食事前に神に祈りを捧げるようなものだ。これも大事な儀式の一環。欠かすことはできない。そして俺はついに一口大に成長した培養人肉、冨江肉を摘み上げて口の中に入れる。しばらく舌の上で愛撫するように転がしてから顎に力を入れて奥歯でゆっくり時間をかけて噛み潰してみる。弾力のあるコラーゲン質に淡白な肉質と培養液の若干の臭み。ぐちゃぐちゃと咀嚼するたびに唾液と混ざってジューシーにほどけて口の中でトロトロに溶けていく冨江をようやく嚥下した頃には視界がぼやけていた。


目を擦ると濡れている。自然と涙が出ていた。一つ、さらに一つと次々に冨江を平らげていく。そしてディッシュを舌で満遍なく舐め回した。ふう。俺はまた再度両手を合わせて
「かぶとむしやたくさんの羽虫が毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにもつらいのだ。」


ごちそうさま、の代わりに宮沢賢治の「よだかの星」の一節を唱える。ただ、正確には
「豚や牛やたくさんの家畜が毎晩僕に食べられる。そしてそのただ一人の彼女がこんどは僕に食べられる。それがこんなにうれしいのだ。」


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