金鯱賞 2021【予想】
急坂からスタートして向正面半ばまで緩やかな上り坂に、そこからの下り坂。中京2000mのコースレイアウト通り後傾ラップになりやすいレースではあるが、下り坂に入っても直線まで抑えて直線勝負に持ち込まれるケースも少なくなく、格下馬が直線の瞬発力だけで浮上することも。
前開催から約1か月のインターバルで芝の状態がどこまで回復しているか気になるところだったが、昨日は雨の影響で終日不良馬場。一応は先行有利の傾向と想定しておくが、回復していく過程での変化に注意。
①デアリングタクト(○)
加速ラップのエルフィンステークスを4馬身差で圧勝した時から大きな可能性を示していたが、重馬場の桜花賞を後方から最速上がりで差し切って一冠目を手にすると、続くオークスではノーザンファーム生産馬に次々と前に入られてポジションを下げ、勝負処でも外から蓋をされる厳しい展開の中、レース上がりが34秒2という瞬発力戦をメンバー最速の33秒1の上がりで差し切って二冠達成。
史上初となる無敗の三冠が懸かった前走の秋華賞は、勝ちを意識して後方から向正面で徐々にポジションを上げて3角では8番手、4角ではほぼ先頭に並びかける5番手まで。前に行く馬に厳しい流れでありながら、ペースが上がった時にポジションを上げ、そのまま最後まで押し切った内容は強い。
三冠馬が3頭共演する世紀の一戦となった昨年のジャパンカップは勝負処でモタつき、コントレイルにも前に出られて万事休すかと思われながらも渋太く最後まで踏ん張る根性を見せて3着を死守。
この馬の強みはどんなに厳しい条件でも底力を発揮するその勝負根性にあるように思っており、今回も香港遠征への叩き台ではあるが、勝ち切ってしまう可能性は高いように思う。
②サンレイポケット(⋯)
昨秋の復帰初戦こそ6着に敗れたが、以降は出走取消を挟んで【3.3.1.0】と好走を続けオープン入りを果たすと、重賞初挑戦となった新潟記念はレース上がりが33秒1という中、メンバー3位の上がり32秒4で3着。
距離不足の懸念もあった昨秋の毎日王冠でもサリオスの直後となる5番手の位置を積極的に取りに行きながらも上がり3位の脚で3着と連続好走。
右回り【1.2.1.3】に対して、左回りは【3.2.2.2】と得意にしており、オープン入り後は直線の長い左回りに絞ってレースを使われている。
昨秋のアルゼンチン共和国杯は道中ぶつけられる場面に直線では馬場の悪い内側に押し込められながら6着に踏ん張っており、年明けの日経新春杯も0秒3差の4着に渋太く粘っている。
確勝を期した前走の白富士ステークスでも、出遅れて後方からの競馬になりながらメンバー最速33秒7の上がりで追い込んで0秒1差の2着に好走しており、得意の条件に絞って使われていることで、毎回しっかりと自身の末脚を発揮している。
ただ、どこかもうひと押しが足りずに勝ち切れない競馬が続いており、今回は過去一番のメンバーが揃ったともいえる一戦である。
他馬とのアドバンテージにしたかった道悪も徐々に乾いてきており、テンに速いわけではないため中団から脚を伸ばす競馬で追い比べに勝つ必要があるだけに、今回は掲示板までと見る。
③ブラヴァス(⋯)
5歳でジャパンカップを勝った叔父のシュヴァルグランがそうであったように、奥手の血統とみて大事に育てられてきた友道厩舎の期待馬。
新潟記念を勝った後も、騎乗した福永騎手から「前脚と後ろ脚の走りがバラバラで、まだ伸びシロがある」と厳しい言葉で期待を表していたが、そんな福永騎手から「走りのバランスが良くなってきた。今ならGⅠの舞台でも」と成長に手応えを感じている様子。
ペースや展開を問わずに堅実に走っており、これまで【5.4.1.3】と着外は僅かに3度。
大阪杯を前にGⅠ級のメンバーが揃ったここは試金石となる一戦にはなるが、休み明けでも【3.1.0.0】と力を出せる馬。馬場に関しても、道悪が得意な訳ではないにしても七夕賞での重馬場を走っており、あとは本当に力関係だろう。
これまでとは相手がまるで違うだけに真っ向勝負では分が悪そうなだけに、この内枠を活かして立ち回りの巧さを活かすことが出来れば好走の可能性も高まると思うが、恐らくポジションを取りに行くより出たなりの位置でどこまで通用するか測る競馬と見ており、中団からの競馬になるリスクと3番人気を考えて思い切って消すことにする。
④グローリーヴェイズ(▲)
一昨年の京都大賞典は春の天皇賞以来となる長期休養明けに加えて、外枠で壁が作れなかったこともあって前半折り合いを欠いて6着に敗れたが、この敗戦を教訓にクロス鼻革を使用しハミも変更して対応。
暮れの香港ヴァーズでのGⅠ初制覇に繋げてみせた。
昨年はドバイ遠征が中止になったことで初戦がGⅠ宝塚記念。出遅れた上に道悪馬場も合わずキャリア初となる二桁着順の惨敗を喫したが、リフレッシュさせてしっかり立て直した上での始動戦となった前走の京都大賞典は58kgを背負いながらも、好位5番手から運ぶ横綱相撲で⑦キセキらの追撃を抑えて勝ち切った。
理想的な間隔も確保した上で得意にしている2400m戦を狙い澄ましたローテーションだった前走のジャパンカップは⑦キセキが引っ張る猛ペースを好位4番手から自ら動いて勝ちに行く競馬。
さすがに最後は脚が上がって5着に敗れたが、0秒3差と僅かな差であり、①デアリングタクトとはハナ+クビ差に過ぎず、本馬も三冠馬3頭に劣らない現役屈指の実力がある走りであった。
今回はその①デアリングタクトと当時あった4kgの斤量差が2kgまで縮まるだけに逆転も可能なはずで、懸念される約2年半ぶりとなる2000mの距離も、当時は出遅れながら好位4番手につけて最速上がりで抜け出す快勝だった。勝ち時計も新潟とはいえ1分56秒6とベストではないにしても守備範囲内のはず。
あとは今の馬場状態に対応できるかどうか。馬場さえ乾いていれば単勝勝負だったが、この馬場状態に休み明けでは取りこぼす可能性は低くないように思う。
⑤ギベオン(⋯)
3歳時は毎日杯で後に有馬記念を勝つブラストワンピースと翌年の春秋マイル王インディチャンプに挟まれる2着好走から、続くNHKマイルカップでも2着に好走し、冬には中日新聞杯で重賞初制覇を飾ったが、以降はもう11戦着外が続いている。
昨年の本レースで前が壁になりながらも0秒4差の4着に健闘したり惜しい競馬もあったが、昨夏のエプソムカップでは直線で耳を絞っていたようで近走の不振は精神的な面も危惧される。
昨年のような積極策であれば好走するチャンスも出てくるかも知れないが、メンバーレベルは昨年より断然上がっており、今回は様子見とする。
⑥ジナンボー(⋯)
持続力戦となった小倉大賞典でも、1000m通過60秒4のスローペースで流れたGⅠ大阪杯でもカデナに敗れており、昨夏の新潟記念では③ブラヴァスにもアタマ差遅れての2着で一線級とは力の差がある現状。
前走の京都記念は中団から勝負処で自ら動く積極的な競馬を見せて0秒5差の4着に健闘。
先日のクイーンカップを勝った全妹アカイトリノムスメに続きたいところだが、さすがにここは相手が強く真っ向勝負では厳しいはずで、GⅠ大阪杯よりここが勝負なら代打騎乗の菱田騎手も積極策だろう。
各馬が試走に徹するなら先行策から上手く出し抜ける可能性はゼロではない。8番人気なら。
⑦キセキ(☆)
昨春の天皇賞は1周目でゴールと勘違いして折り合いを欠いたことに加えて蹄鉄が外れるアクシデントもあった中で0秒8差の6着。
宝塚記念も序盤は後方で我慢させて、中盤から一気に動いて脚を長く使わせるスタイルで2着に好走。
今年の始動戦となった阪神大賞典での大暴走から父ルーラーシップの気の悪さの発現を心配されたが、高い持久力を発揮させるスタイルでクリアしてみせた。
秋の始動戦、京都大賞典も後方から同様の競馬で2着を確保して本番の天皇賞に臨んだが、何を思ったか武豊騎手の判断は直線まで脚をタメての瞬発力勝負。
かつて干されたノーザンファームへの忖度を疑われても仕方がない持ち味を殺す謎騎乗であり、この敗戦はやむを得ないもの。
巻き返しを図った前走のジャパンカップだったが、ヨシオとの接触により折り合いを欠いた1000m通過は57秒9。世界レコードをアシストした2年前の59秒9より2秒も速い猛ペースなら潰れて当然ではあるが、1秒1差まで踏ん張ったのならばむしろ負けて強し。
前走の有馬記念は秋4戦目でさすがに疲労が心配もあったはずで、12着大敗も無理のない話。
リフレッシュして臨む今回は角居厩舎からの転厩初戦でもあるが、スタッフはほとんど変わらないだけに影響はなさそうで馬場も不良馬場の菊花賞勝ちにジャパンカップの世界レコード2着と不問。
どの位置からになっても、鞍上のデムーロ騎手としてはこの代打騎乗で辻野調教師の心を掴みたいところでスローペースのまま脚を余すことはないはず。
⑧ペルシアンナイト(⋯)
昨夏の札幌記念は上位3頭のGⅠ馬以外のメンバーが弱かった面はあるが、メンバー最速の上がりで2着。
ノームコアやラッキーライラックとの接戦はGⅠ馬としての地力健在を示した格好。
秋初戦の富士ステークスは中団から脚を伸ばして0秒5差の4着だったが、もともと叩いた方がいいタイプだけに上々といえる内容で、本番のマイルチャンピオンシップは高速馬場の阪神が舞台で厳しいレースになるかと思われたが、ほぼ最後方という絶望的な位置からメンバー2位タイの上がりで追い込んで0秒6差まで差を詰める大健闘の7着。
前走の有馬記念もさすがに2500mは厳しいと見られたが、メンバー2位の上がりを使って0秒6差の7着。
1600m〜2500mまで幅広い距離で健闘しており、7歳でもまだ好走の機会はありそう。
叩いた方がいいタイプではあるが、9番人気なら。
⑨サトノフラッグ(⋯)
菊花賞3着好走といっても、後方からの末脚に賭けた競馬がハマった印象。
好位〜中団から最後までマッチレースを演じたコントレイルとアリストテレスの上位2頭との上がり3Fはほぼ互角で3馬身半差の着差は小さくないように思う。
同舞台で行われた秋初戦のセントライト記念にしてもラスト3F 11.9 - 12.4 - 12.7 の減速ラップの中、逃げて失速したバビットと最後は同じ脚色になって捕らえ切れなかった。個人的には世代上位からは少し離れた位置づけにいる馬である印象。
弥生賞では重発表のタフな馬場で強い勝ち方をしているが本質的には良馬場向きと見ており、実際に前走のアメリカジョッキークラブカップは不良馬場の最内枠も災いして11着に大敗。
ルメール騎手なら上手く運んで持ってきてしまいそうな怖さはあるが、点数的に来ないことを祈る。
⑩ポタジェ(◎)
ルージュバックの半弟で、新馬勝ち後は2勝目がなかなか遠く、クラシック出走まで届かなかったが、デビュー5戦目で1勝クラスを卒業すると、そこから4連勝でリステッドレースの白富士ステークス勝ち。
追い出しを待たされながらも重賞常連の②サンレイポケットを抑えての勝利は価値が大きい。
これまで連対を外したことがなく、これまでのキャリア8戦中6戦で最速上がりを使っており、残りの2戦も2位の上がりと一定の決め手も備えている。
メンバーがグッと強化される今回は試金石になることに違いはないが、馬体を増やしながらの4連勝は素直に評価したい。全5勝を挙げる川田騎手からの乗り替わりも北村友騎手からすれば大きなチャンスで、2週連続で追い切りに跨って虎視眈々。
重馬場だった生田特別ではしっかり走れていただけに今の馬場にも対応できそうで、6番人気の低評価ならここでも相手なりに走ってくれることを期待する。
【結論】
本命 ⑩ポタジェ
ワイドBOX ①④⑦⑧⑩
人気入れ替わるならジナンボーにすれば良かった…