2023年のフォーミュラ3を語ってみる
あいさつ
こんにちは。ポルチェーと申します。
今日はFIA FORMULA3の2023年シーズンをチームごとに振り返っていきたいと思います。
※ミドルフォーミュラ観戦歴数年の一般ファンが書いた文章なのでご了承下さい。日本語表記はなるべく一般的なものにしているつもりです。
用語
・FRECA
→フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権。各国F4とFIA F3の間のカテゴリーです。フォーミュラ・ルノー・ユーロカップはこのカテゴリーに統合され、語尾にアルピーヌのAが付いています。
・EFO
→ユーロ・フォーミュラ・オープン。旧スペインF3の後継シリーズ。佐藤万璃音がタイトルを獲得したカテゴリーです。スーパーフォーミュラ・ライツと同じく、旧F3規格のマシンを使用しています。
・GB3
→旧イギリスF3選手権。一時消滅していた英F3を復活させたカテゴリーですが、FIAの決定によりF3の名称が使用不可となりこの名前になりました。荒尾選手が今年参戦したカテゴリーでもあります。
・SR
→スプリントレース。予選12位までがリバースグリッドで行われます。
・FR
→フィーチャーレース。日曜日に行われるメインレース。
PREMA RACING (プレマレーシング)
#1 Paul ARON (ポール・アーロン)🇪🇪
#2 Dino BEGANOVIC (ディーノ・ベガノビッチ)🇸🇪
#3 Zak O'SULLIVAN (ザック・オサリバン)🇬🇧
前年チームタイトルを獲得したF3きっての強豪チーム、プレマ。今年もFRECA1位のベガノビッチ(フェラーリ育成)、同3位のアーロン(メルセデス育成)、前年カーリンで好走したオサリバン(ウィリアムズ育成)という強力なラインナップでシーズンを戦いました。
昇格組の2人の中で安定してポイントを重ねたのはアーロン。特筆した速さはあまり見せられなかったものの、開幕戦から上位入賞を重ね、オーストリアSRでF3初優勝。4度の表彰台を獲得し最終的にランキング3位となりました。アブダビではトライデントからF2にスポット参戦した他、デフリースと融合しF1デビューも果たしました()
ベガノビッチも似たような印象ですが、予選でのマシントラブルやレース中の接触がアーロンより多くランキングは6位に終わりました。来年もプレマに残留しチャンピオンを狙うシーズンとなります。FRECAでは1年目に大苦戦、2年目に大きく躍進しタイトルを獲得しています。F3でもダイナマイトディノの大活躍が見られるか注目です。
昨年は戦闘力で劣るカーリンをドライブ、PPや表彰台を獲得しインパクトを残したオサリバン。最強プレマに移籍しタイトル最有力と囁かれていましたが、開幕バーレーンラウンドではまさかのノーポイント。その後は勝利を重ねるものの、予選で中団に沈み決勝で接触しポイントを逃すシーンが目立ちました。最終的には2位に滑り込みましたが、1位とは45点もの差がありました。もう少し安定感があれば、ボルトレートの独走を許すことはなかったでしょう。翌年はARTグランプリからF2に参戦します。
ドライバーズタイトルはトライデントのボルトレートに奪われましたが、唯一3人がランキングトップ10入りする安定感を見せチームタイトル防衛に成功しました。ここ2年はドライバーズタイトルに届いていないので、久しぶりのダブルタイトル獲得が来年の最大の目標でしょう。
【ソーシーと接触しペナルティを受けたオサリバン】
【雨のレッドブルリンクで初優勝を果たしたアーロン】
TRIDENT (トライデント)
#4 Leonardo FORNAROLI (レオナルド・フォルナローリ)🇮🇹
#5 Gabriel BORTOLETO (ガブリエル・ボルトレート)🇧🇷
#6 Oliver GOETHE (オリバー・ゲーテ)🇩🇪
F2は駄目でもF3は毎年強いトライデント。今年はFRECAから昇格のフォルナロリとボルトレート、前年スポット参戦したEFOチャンピオンのゲーテという育成チーム未所属の3人を起用。筆者は前年スポット参戦で入賞したゲーテが優勢と予想していました。
イタリア人のフォルナローリは、開幕からコンスタントにポイントを積み重ねましたが、優勝は無く常にボルトレートの影に隠れていた印象です。イギリスでのPP獲得と2位表彰台がハイライトとなり、ランキング11位でシーズンを終えました。
ゲーテ優勢と予想した筆者ですが、結果はボルトレートの圧勝。バーレーンのFRを優勝すると、続くメルボルンも優勝。その後は優勝こそ無かったものの、ベルギーラウンド以外の全てのレースで上位入賞を重ねました。ライバルが浮き沈みの激しいレースを続ける中、安定したリザルトを残し圧倒的な強さでタイトルを獲得。翌年はマクラーレン育成としてヴィルトゥオーシからF2に参戦します。
ドイツの著名な詩人の末裔であるゲーテ。ただ本人はあまりドイツ語は話せないとか。バーレーンのFRで2位に入り、トライデント同士のトップ争いを予感させました。しかしその後は、イギリスのFRで優勝するまでノーポイントが続きました。最終戦モンツァではポールを獲得したものの、トラブルでスタートできず。波に乗りきれないシーズンとなりました。ただ速さは評価されていたのか、レッドブル育成入りが発表されました。
チームランキングはプレマに競り負け2位となりました。ゲーテとフォルナローリがボルトレートの半分以下のポイントだったのが敗因でしょう。21年のドゥーハン、ノヴァラクのように、複数のドライバーがランキング上位に入れるかが鍵となりそうです。
【モンツァの予選でタイトルを決めたボルトレート】
【モンツァでポールからスタートできなかったゲーテ】
ART GRAND PRIX (ARTグランプリ)
#7 Kaylen FREDERICK (ケイレン・フレデリック)🇺🇸
#8 Grégoire SAUCY (グレゴワール・ソーシ
ー)🇨🇭
#9 Nikola TSOLOV (ニコラ・ツォロフ)🇧🇬
昨年マルタンスをチャンピオンに導いたARTグランプリ。今年は残留のソーシー、ハイテックから移籍のフレデリック、スペインF4チャンピオンのツォロフを起用しました。
3年目の今年こそ結果を残したいフレデリック。開幕戦では7位入賞しますがこれがシーズン最高成績に。メルボルンではSC中にツォロフと同士討ちするなど、目立つ活躍は果たせずランキング21位に終わりました。11月にはスーパーフォーミュラ・ライツのテストに参加。「ケイレン」読みが正しいそうなので覚えてあげましょう。
ソーシーはプレシーズンテストから好タイムを連発し、開幕戦から連続で上位入賞。シリーズを争う存在になるかと思われました。しかしスペインあたりから様子がおかしくなります。リヤを当てられパンク。続くオーストリアでもパンク。モンツァは2レースともパンク。何という不運でしょうか。他のレースでも前半戦の勢いを無くし、ランキング14位と今年もトップ10入りは叶いませんでした。来年はWECのLM GT3クラスでマクラーレンをドライブするようです。
F4から飛び級でやって来たツォロフですが、F3では大苦戦。予選で二桁グリッドに沈む事が多く、リバース圏内に入り上位スタートしてもズルズル落ちてポイント圏外というパターンが目立ちました。「スペインF4はハンコック、FIA F3はピレリであるため1年目は苦戦するのではないか」という意見を耳にしましたが、これはスペインF4からF3に上がったマルティと同じパターンです。もしかしたら来年急にグンと伸びてくるかもしれません。
チームとしても、昨年の3位から8位とまさかの大低迷のシーズンとなってしまいました。確かに渋いラインナップだなあという印象はありましたが、ここまで転落するのか…といった感じです。チーム力が急に低下したとも考えづらいので、来年の巻き返しに期待しましょう。
【SC中にツォロフに追突するフレデリック】
【またしてもパンクするGソーシーさん(23)】
MP MOTORSPORT (MPモータースポーツ)
#10 Franco COLAPINTO (フランコ・コラピント)🇦🇷
#11 Mari BOYA (マリ・ボヤ)🇪🇸
#12 Jonny EDGAR (ジョニー・エドガー)🇬🇧
ここ数年チーム力を向上させ、トップグループに加わってきたMPモータースポーツ。今年は前年VARで鮮烈なデビューを果たしたコラピント、FRECA10位のボヤ、レッドブル育成を離脱したエドガーのトリオとなりました。
前年の活躍でウィリアムズ育成に入ったコラピント。ノーポイントレースが3回(メルボルンでレース後に失格となっているので実際は4回)という安定感でランキング4位を獲得。惜しかったのはメルボルン戦。SRは優勝後に車両規定違反で失格。FRでは接触でパンクしクラッシュ。これさえ無ければ…という印象です。資金不足でF2参戦が危ぶまれていましたが、ファンのSNS上の呼び掛けによりスポンサーを確保、無事F2昇格が決定しました。
ボヤは前半戦は連続リタイア。波に乗れないシーズンスタートとなりましたが、中盤戦に入り初ポイントを獲得、最終戦モンツァのSRでは初表彰台を記録するなど成長が伺える1年となり、ランキング17位で終えました。来年は更なる活躍が求められるシーズンとなります。
昨年はクローン病で2ラウンド欠場したエドガー。今シーズンもコラピントが安定して活躍する中、その影に隠れるレースが続きました。しかし、大荒れとなった最終戦モンツァのFRで悲願のF3初優勝。最高の形でシーズンを締めくくりました。F3のシーズン終了後はF2のシート情報をバラしまくり、クロフォードと共にSNSで話題となりました。
チームランキングは3位。最終戦でカンポスとハイテックを逆転。FRECAの事故で亡くなったファント・ホフに捧げるチーム史上最高の成績で1年を終えました。
【モナコの1周目、エドガーとボヤがダブルリタイヤ】
【最終戦でF3初優勝を果たしたエドガー】
HITECH PULSE-EIGHT (ハイテック パルスエイト)
#14 Sebastián MONTOYA (セバスチャン・モントーヤ)🇨🇴
#15 Gabriele MINI (ガブリエル・ミニ)🇮🇹
#16 Luke BROWNING (ルーク・ブラウニング)🇬🇧
ハードウェア会社のパルスエイトと提携、チーム名が変わった英国チームのハイテック。今年のラインナップは、コロンビアの暴れん坊ファン=パブロ・モントーヤの息子セバスチャン、FRECA2位のミニ、GB3王者のブラウニングの3人。
今年は唯一のレッドブルjrドライバーとしてF3に挑んだモントーヤ。一言でまとめると、「モントーヤだなあ」という走りでした。随所で速さを見せ上位争いに加わったものの、肝心な所で接触リタイヤを連発。結果、チーム内最下位のランキング16位という残念な結果でシーズンを終えました。
ミニは今年からアルピーヌ育成に加入。開幕戦でいきなりポールを獲得しトップチェッカーを受けたものの、スタート手順違反とSC連発で8位降格という不運な滑り出しとなりました。その後もモナコでポールtoウィンを決めるなど才能を見せつけましたが、荒削りな走りでポイントを逃す事も多くランキングは7位に留まりました。来年はプレマに移籍しチャンピオンを狙うシーズンとなります。
ブラウニングはシーズン途中からウィリアムズ育成に加入。前半戦は荒さがありながらもポイントを重ねましたが、中盤戦から失速。地元イギリスでの1周リタイヤを始め、ほとんど得点できずに15位でシーズンを終えました。しかし、マカオGPでは完全優勝を達成。来年に期待が持てる終わり方となりました。
チームランキングは5位。マシンパフォーマンスはまずまず高く、ドライバーも速い3人を揃えていました。しかし、いかんせんアクシデントによる取りこぼしが多くMPやカンポスに負ける要因となりました。
【モナコでコレに追突したモントーヤ】
【スパでスタート前にクラッシュしたミニ】
VAN AMERSFOORT RACING (ファン アメルスフォールト レーシング)
#17 Caio COLLET (カイオ・コレ)🇧🇷
#18 Rafael VILLAGÓMEZ (ラファエル・ヴィリャゴメス)🇲🇽
#19 Tommy SMITH (トミー・スミス)🇦🇺
2021年末に撤退したHWAを引き継いだオランダのファン・アメルスフォールト・レーシング(VAR)。今シーズンは、2年間アルピーヌ育成としてMPで走ったコレ、HWA時代からチームに所属するヴィリャゴメス、GB3を走っていたスミスのラインナップで挑みました。
今年はアルピーヌ育成を離脱したとされているコレ。しかしスーツにはアルピーヌのロゴが残っていました。どういう立場なんでしょう?それは置いておくとして、レースの方は開幕戦のSRからいきなり表彰台獲得。モナコではモントーヤに追突されてポイントを落とす不運もありましたが、優勝を含む計4回の表彰台でランキング9位を記録。3年連続でF3をトップ10で終えました。
HWA時代から数えてF3参戦3年目のヴィリャゴメス。今年こそは好成績を、というシーズンでしたが、またしても厳しい1年となりました。後方集団に埋もれる上に接触でペナルティを喰らうケースも多く、最終戦モンツァで2レースとも10位入賞したのがベストリザルトとなりました。来シーズンはVARからF2昇格が有力視されています。(VARのチームマネージャーはヴィリャゴメスの個人マネージャーでもある)
チームメイト2人が3年目なのに対して、こちらはルーキーのスミス。地元メルボルン戦では最終コーナーでクラッシュ。ヴィリャゴメス以上に苦しいシーズンとなり、最高位12位のノーポイントで1年を終えました。目立ったシーンといえば、ハーフウェットのシルバーストーンで入賞目前まで迫った時でしょうか。SC中にレインに替えてごぼう抜き、11位フィニッシュするもペナルティで降格。タイムラインを大いに沸かせました。
チームランキングは昨年から1つダウンして7位。実質コレの1台体制という状態でしたが、最終戦モンツァで得点しARTグランプリを逆転しシーズン終えました。
【スパのSRでバーナードをかわして優勝したコレ】
【モントーヤと接触し宙を舞うスミス】
RODIN CARLIN (ローディン カーリン)
#20 Oliver GRAY (オリバー・グレイ)🇬🇧
#21 Hunter YEANY (ハンター・イェーニー)🇺🇸
→Max ESTERSON (マックス・エスターソン)🇺🇸
→Francesco SIMONAZZI (フランチェスコ・シモナッツィ)🇮🇹
#22 Ido COHEN (イド・コーエン)🇮🇱
こちらはトライデントと真逆、F2は速いのにF3はめっきりダメなカーリン。今年はニュージーランドのハイパーカーメーカー、ローディン(ロダン)カーズが大株主となりチーム名も変更されました。当初のラインナップは、英F4で2位のグレイ、カンポスから移籍のイェーニー、2年ぶりチーム復帰のコーエン。
ウィリアムズ育成のグレイ。昨年のオサリバンのような上位チームを喰う活躍が期待されましたが、実際は想像以上に苦戦。シーズンを通して上位争いに絡めず、雨のスパでは混乱に乗じて浮上するも最後は接触リタイヤ。ノーポイントでランキング28位と、期待外れの1年となってしまいました。
イェーニーは今年こそ結果を残したいシーズンでしたが、スペインの16位が最高位とほぼ見せ場を作ることなくオーストリア戦をもって離脱。後任はiracing出身のエスターソン。2ラウンドのみの出場となりました。デビュー戦のイギリスで24位ながらカーリン勢最上位グリッドを獲得したのがハイライトでしょうか。ラスト2ラウンドはEFO出場中のシモナッツィがドライブ。予選決勝ともほぼ最下位グループでしたが、モンツァのFRは終盤の大混乱に乗じてしれっと11位を記録しました。
3年目にカーリンに復帰したコーエン。チームメイトと同様に下位集団でもがくレースが続きましたが、イギリスのSRでタイヤ選択がハマり9位入賞。今シーズン唯一となる貴重なポイントを獲得しました。個人的には、スパでコースに復帰しようとしたマルティとぶつかったシーンが一番記憶に残っています。
チームランキングは10位。最下位です。昨年はオサリバンが奮闘し、1人で大量ポイントを稼いでくれました。しかし今年はそれに相当するドライバーはおらず、最下位となってしまいました。来年はポイントを取れるドライバーが乗ってくれるのでしょうか。
【雨のスパでウィリアムズ育成のライバルと争うグレイ】
【マルティとクラッシュしたコーエン】
CAMPOS RACING (カンポス レーシング)
#23 Pepe MARTÍ (ペペ・マルティ)🇪🇸
#24 Christian MANSELL (クリスチャン・マンセル)🇬🇧→🇦🇺
#25 Hugh BARTER (飛雲バーター)🇦🇺
→Joshua DUFEK (ジョシュア・デュフェック)🇨🇭
スペインの元F1ドライバー、エイドリアン・カンポスが立ち上げたチーム。F2、F3共に中団に位置しています。今年のラインナップは、残留し2年目のシーズンを迎えるマルティ、前年チャロウズからスポット参戦したマンセル、フランスF4とスペインF4で2位の飛雲バーターを起用しました。
今年のF3を語る上で外せないのはマルティ。バーレーンのSRで優勝すると、地元スペインではポールtoウィンを達成。タイトル争いの一員となりました。終盤戦はアクシデントが続きランキングは5位に留まったものの、下位に低迷した昨年の悔しさを晴らす大躍進の1年となりました。来年は所属チームはカンポスのまま、レッドブル育成ドライバーとしてF2にステップアップします。
前年は戦闘力の低いチャロウズからスポット参戦したマンセル。残念ながら?口ひげがトレードマークのF1チャンピオンと血縁関係はありません。今年は昨年より戦闘力のあるシートを確保。優勝したマルティのインパクトには及びませんが、メルボルンで初ポイントをゲット。イギリスとスパでは雨の混乱を生かし表彰台を獲得。ランキング12位と上々の結果を残しました。
オーストラリアと日本のハーフであり、昨年は2つのF4でランキング2位を獲得した飛雲バーター。マルティに加えマンセルも活躍した為さらに影が薄くなってしまいましたが、オーストリアのFRで初ポイントを記録。その後も2度入賞しランキング19位に。最終戦はデュフェックにシートを譲りました。FRECAに参戦していたデュフェックはバーターのシートを獲得しスポット参戦。2レースとも14位で終えました。
チームランキングは4位。中団や下位のチームが活躍する際はエース1人だけがポイントを稼ぐパターンが多いです。しかし今年のカンポスは違いました。マルティだけでなく、マンセルやバーターもポイントを稼ぎ大躍進を果たした1年となりました。
【地元スペインで優勝したマルティ】
【シルバーストーンで初表彰台を獲得したマンセル】
JENZER MOTORSPORT (イェンツァー モータースポーツ)
#26 Nikita BEDRIN (ニキータ・ベドリン)🇮🇹
#27 Taylor BARNARD (テイラー・バーナード)🇬🇧
#28 Alex GARCÍA (アレックス・ガルシア)🇲🇽
角田裕毅が所属した弱小チームとしておなじみ、イェンツァー。今年はADAC(ドイツ)F4で4位のベドリン、同選手権2位のバーナード、EFOに出場していたガルシアの3人で挑みました。
ニキータ?と思った人は鋭いです。彼の国籍はロシアなのです。ですが、例のウクライナ問題によりイタリアのライセンスで参戦しています。序盤から僚友がポイントを獲得していたのに対し、ベドリンはやや苦戦。しかし、スペインのSRで初ポイントを達成すると波に乗り始めます。ハンガリーではリバースグリッドを生かし2位を走行。最後にボルトレートに抜かれたものの、初表彰台を獲得します。スパでもタイヤ戦略を決め3位獲得。ランキング18位で終えました。
バーナードは今年1番のダークホースと呼んでいいかもしれません。メルボルンのFRでポイントを獲得すると、スペインまで5戦連続で入賞。更にビックリしたのは後半戦。スパのSRではトップに浮上し最終的に2位をゲット。FRでは全員をウェットタイヤで送り出したイェンツァーのタイヤ選択がドハマり。マンセルとのバトルを制し初優勝を達成。モンツァでもFRでトップグループのバトルに割って入り3位表彰台。4年前の角田に匹敵するインパクトで堂々のランキング10位に入りました。
チームメイト2人とは対照的に、ガルシアのシーズンは厳しいものとなりました。序盤、中盤は20番手以降を走行し国際映像の順位表示にもほとんど映らないレースが続きました。スパでは前述のタイヤ選択のお陰で4位を獲得しましたが、ダブル表彰台を決めた僚友の影に隠れる結果となりました。来年はWECのハイパーカーのシートが決まっていますが、今年のLMP3参戦時はチームメイトより秒単位で遅いタイムだったのです。本当に大丈夫でしょうか…
チームランキングは6位。特にバーナードは72ポイントも稼いでおり、1人で8位ARTグランプリ(71ポイント)を越える点数をチームにもたらしました。翌年以降もこの好調を維持する事ができるのでしょうか?
【イェンツァーに4年ぶりの勝利をもたらしたバーナード】
【ボルトレートに抜かれたものの、初表彰台を獲得したベドリン】
PHM RACING by CHAROUZ (PHMレーシングbyチャロウズ)
#29 Sophia FLÖRSCH (ソフィア・フローシュ)🇩🇪
#30 Roberto FARIA (ロベルト・ファリア)🇧🇷
#31 Piotr WIŚNICKI (ピョートル・ウィスニッキ)🇵🇱
→McKenzy CRESSWELL (マッケンジー・クレスウェル)🇬🇧
→Michael SHIN (マイケル・シン)🇰🇷
ドライバーをコロコロ変える底辺チームのイメージが染み付いてしまったチャロウズ。サージェントとエンツォ・フィッティパルディの奮闘を最後に輝きを完全に失っています。今年はドイツのPHMレーシングがエントリーを引き継いで参戦する事になりました。開幕当初のラインナップは、女性ドライバーのフローシュ、元ザウバー育成のファリア、ポーランド人のウィスニッキ。
アルピーヌ育成に加入したフローシュ。マカオF3の大事故で覚えている人も多いかもしれません。序盤から苦しい戦いが続きますが、ハイライトとなったのはスパ。ウェットタイヤスタートがハマり入賞圏内に浮上。格上チームのハイテック、モントーヤを追い回し7位入賞。貴重過ぎる6ポイントを獲得しました。
前年はザウバーアカデミーの一員としてGB3選手権に参戦、5位を記録したファリア。今年はアカデミーを離脱しF3にステップアップしました。経歴からしてチームを引っ張るエースとしての走りも期待できましたが、結果は残念なものに。シーズンを通して見せ場を作れず、ノーポイントで1年を終えました。
3台目は3人のドライバーがドライブ。開幕は前年FRECA出場のウィスニッキ、オーストリアからはGB3出場中のクレスウェル、ハンガリーからは同じくGB3の韓国人シンが出走しました。このNOTEを書くためにレースハイライトを見直したりして、「そうそう、この選手はあのレースで活躍してたよなー」みたいな感じで思い出すんですが、この3人に関しては正直言ってそれがありませんでした…(カーリンのスポット参戦組もだいぶ怪しかった)
チームランキングは9位。フローシュが獲得した6ポイントが効き、辛うじて最下位を免れることに成功しました。
【スパで初ポイントを獲得したフローシュ】
【シルバーストーンでクラッシュしたファリア】
おまけ
最後の微妙なコメントで締め括るのもアレなので、シーズン終了後のマカオF3で気になったドライバーを2人紹介していきます。
Alex DUNNE (アレックス・ダン)🇮🇪
今年のGB3選手権で2位に輝いたアイルランド人。マカオにはハイテックから参戦しました。資金不足がネックなようで、他のF3初挑戦のドライバーが複数日テストする中、1日しかテストできず。そんな中で迎えた予選では堂々の6位グリッドを獲得。予選レースでも快進撃は続き、スタートで3番手に浮上。SC導入後のリスタートで2位に上がりそのままフィニッシュする活躍を見せました。メインレースでも大活躍してくれそうな予感がしていましたが、若さが出たのかいきなりクラッシュ、レースを終えてしまいました。しかし、来年以降が楽しみなドライバーであることに変わりはありません。何とか資金問題を解決してF3に参戦して欲しいところです。
Charlie WURZ (チャーリー・ヴルツ)🇦🇹
ベネトンやウィリアムズからF1に出走、WECトヨタのドライバーとしても有名なアレクサンダー・ヴルツ。その実の息子です。今年はARTからFRECAに参戦していましたが、獲得ポイント1点と大苦戦し途中で離脱、EFOに参戦していました。マカオにはイェンツァーから出走。前述の成績やチーム力から、筆者はあまり期待していませんでした。ただチャーリーはその予想を裏切る走りを見せてくれました。予選は赤旗もあり16位に留まったものの、予選レースでは1周目のリズボアでジャンプアップ、11位でフィニッシュ。メインレースも混乱を切り抜け7位浮上。上位勢と互角の戦いを繰り広げましたが、アーロンのクラッシュに巻き込まれ惜しくもリタイアとなりました。しかしこの走りで評価はグンと上がったでしょう。
前述の2人以外にも、
・マクラーレン育成のウゴチューク
・元RB育成でEFO王者のレオン
と有力ルーキーが出場したマカオ。これらの選手に加え、来年こそはF3で結果を残したいと意気込む残留組。若手が凌ぎを削るF3が来年も楽しみでなりません。皆さんも2024年のFIAフォーミュラ3選手権に注目してみて下さい。
【ドライバーズランキングトップ10】
【チームランキング】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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