ようこそ! ちょっと風変わりで、とても短い掌編小説はいかがでしょう。
第16話 散歩(その一)
https://note.com/tozoshort/n/n3ac93159b119
第17話 散歩(その二)
https://note.com/tozoshort/n/n858dc57f8f93
第18話 散歩(その三)
それから暫くして、「あっ!」ゲンさんの方も気づいた。自分が勘違いしてることを……
そして、隣から注がれる冷ややかな眼差しを感じつつも、
「ははは……。なーんだ、白鳥かよォー」と右手で顎を擦りながら呟いた。
しかし、全く呆れた見間違いをしたもんだ。続いてゲンさんは反省した。UMAなんてこの世にいる訳ないんだよ、と改めて思った。
その後、ばつが悪いこともあって、ゲンさんは少し早足で歩き始めた。一先ず、ケンちゃんとの距離を取る。
だが、そんなゲンさんの前に……「えっ!」またも異質な光景が展開されたよう?――この公園は色々あるみたいだねえ――ただし、今までとは明らかに違う気配だ。何か等閑[なおざり]にできない生き物が、目の前を闊歩[かっぽ]していた。
まさしく、優に一メートルは超える、野生動物の後ろ姿だった。しかも、どう見ても荒々しい気質が窺い知れた。たぶんこれは……凶暴なイノシシに違いない! 山が近いせいか、時々姿を見せるのだ。
となると、言うまでもなくゲンさんは危険を感じて焦った。なんせ野生のイノシシときたら、人間様を一目見ただけで、猪突猛進、物凄い剣幕で襲ってくるのだから。
彼はゆっくりと歩みを止めた。一方、ケンちゃんは、幸運なことに十メートルほど後方にいた。その位置だと避難し易い。
ゲンさんは小声で言った。
「来ちゃダメだ! イノシシだよ。すぐに逃げて!?」と。
この警告で、ケンちゃんは顔を強張らせたものの、すぐに状況を把握したみたいだ。頷いてから、近くにあった丈夫な木に素早く登った。これで友人の安全は確保できたような。後は、自分の身を護るだけだ。
ゲンさんは、静かに後退りした。そろりそろりと、野獣を目にしながら下がった。
……が、何てことだ! ここでハプニングが発生。太い枝が足元に落ちていたではないか! しかし、そんなことなど知る由もないゲンさん。
「うっ!?」と呻いた途端、足がすくわれ、豪快に倒れてしまった!
――ドタターン!!――
大きな音が鳴った。
仕舞った! これでとうとう、野獣に気づかれたぞ。
獣は、忽ち全身を震わせた。そして――ゲンさんには一瞬そう見えた――怒りに満ちた恐ろしい顔で振り向く!
と、思ったら……
「へっ?」まるっきりのマヌケ面だった?
――いやはや、全くの予想外。凶悪なイノシシではなく、ただのげっ歯類、温和なカピバラだったのだァー!――〔何故、外来生物がいるのか分からないが、巣くっていたようだ〕
「へへへへっ、ビックリしたなあ……でも、良かったよォー」とゲンさんは言った。枯草の上に仰向けに倒れたままホッと胸を撫で下ろす。結局は、またまたゲンさんの勘違いで最初から危険はなかったという訳だ。
とはいえ……その直後、「あっ!」彼は、はたと思い出す――ケンちゃんが言った、あの話を!――
そう、この場所は、ウンコだらけの公園、あちらこちらに危険物が落ちていたのだ!
「ゲゲッ!?」