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Vol.5 ガメラ2 レギオン襲来

 この映画が封切られる少し前、1996年の5月か6月、私はキネマ旬報を買い求め、同誌の巻頭特集『ガメラ2』に目を通している。すでに撮影が終わり、主演の永島敏行と水野美紀がグラビア頁で取り上げられていた。

 これより前、スポーツ紙のインタビューに応じた永島は、自衛隊員の役は「二度目」だと記者に話していた。「一度目」は、『皇帝のいない八月』(1978年)での脇役で、クーデター部隊の一員となる自衛隊員の役だったのだが、記者が筆を控えたのだろう。

 さて、キネマ旬報に戻る。金子修介監督、樋口真嗣特技監督がそれぞれ抱負を語っているのだが、『戦争と人間』シリーズ(日活、1970年~1973年、山本薩夫監督)から一篇を参考試写したのが金子組なら、樋口組は『日本沈没』(東宝、1973年、森谷司郎監督)を参考試写したという。

 ヘンな感じがした。もちろん、危機的状況に巻き込まれた複数の主人公を描くのに、『戦争と人間』や『日本沈没』を参考にするのは妥当であろう。ただ、『ガメラ2』の参考にするのは、何かがおかしかった。

 永島敏行が、『皇帝のいない八月』ののち、1980年の公開となる『動乱』にも出演していたな、と私は思い出した。

『皇帝のいない八月』1978年・松竹 
原作/小林久三 脚本/山田信夫 渋谷正行 山本薩夫 監督/山本薩夫     陸上自衛隊警務部長の江見為一郎(三国連太郎)は、自衛隊内外の不穏分子を列記したリストに昔の部下で、今は一人娘、杏子(吉永小百合)の夫である藤崎顕正(渡瀬恒彦)の名を発見して愕然とする。帰京の途中、杏子の往む博多に立ち寄るが、杏子は、藤崎が正業に就いていると告げる。だが、江見が去った後、夫から東京に行くという手紙を矢島一曹(永島敏行)が届けに来た。

『動乱』1980年・東映=シナノ企画 
脚本/山田信夫 監督/森谷司郎                   昭和七年四月、仙台連隊において宮城啓介大尉(高倉健)の中隊の初年兵・溝口英雄(永島敏行)が脱走した。姉の薫(吉永小百合)が芸者に売られることを知っての脱走であったが、溝口は捜索隊の上司を殺してしまい銃殺刑に処せられた。一方、東京では五・一五事件が起きていたが、このクーデターは失敗に終り、陸軍内部の皇道派と統制派の対立を激化させた。

『ガメラ2 レギオン襲来』1996年・大映=日本テレビ放送網ほか
脚本/伊藤和典 監督/金子修介 特技監督/樋口真嗣         冬のある日、北海道・支笏湖近辺に巨大な隕石が落下した。渡良瀬佑介二佐
(永島敏行)を中心とした自衛隊が現場に急行したが、巨大なクレーターが発見されただけで、隕石自体は影も形もなかった。隕石の落下を目撃した札幌青少年科学館の職員・穂波碧(水野美紀)は、それ以来、巨大なオーロラの発生や光ファイバー・ケーブルの消失といった謎の現象が起きていることに興味を持った。(中略)しばらくして、仙台に小レギオンの群れと草体が出現した。ガメラも仙台に飛来し、種子の放出を阻止しようとするが、巨大レギオンに苦しめられて、わずかに及ばずに仙台の街は潰滅してしまった。

 なるほど繋がりがあったわけだ。仙台入りした渡良瀬(永島敏行)の顔には、さすがに懐かしさはなかったが……いや、あったかな? 結婚指輪をはめている既婚の渡良瀬の妻の名が「サユリ」であっても誰も驚くまい。

(ただし、『皇帝のいない八月』も『動乱』も、山本薩夫や森谷司郎の代表作ないし傑作とは言いづらい。『ガメラ2』とは別次元での話である。これについては稿を改めたい)

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