書評 『みんな蛍を殺したかった』 木爾チレン 著

ジャケ買いしたくなる表紙とタイトル。ときどきTwitterのTLに流れてくるのでずっと気になっていました。もうバッチリです。装丁の世界観どおり、暗いけれどとても美しくて、最後は蛍みたいな小さな光が見えました。

ミステリー小説と聞くと探偵もののイメージしかなく、まともに読んだのは江戸川乱歩の少年探偵団シリーズくらいだった私。本作には時計型麻酔銃を使う少年探偵は出てきませんし、犯罪事件の謎解きがメインテーマでもありません。でも、結末に向けてバチバチといろんなピースがはまっていくところはまさにミステリー小説。点と線が繋がる快感に、本作の重要要素でもある『キモオタ』っぽく、「むほぉ」と声が出てしまいました。

全体を通じて印象的だったのは、若さゆえの残酷さ、スクールカースト、コンプレックスの描写です。最近はTwitter文学と言われるものを通じて、社会人になってから直面する格差や妬み、僻みみたいなものを意識する機会が多かったのですが、むしろ、青春時代の悩みのタネだった格差やコンプレックスの中身って、自分で選択出来る余地のない、もっと人間の本質に近いところにあるものばかりで、まだ十代なのにずいぶん深刻な問題に向き合っていたんだな、なんてセンチメンタルな気分になってしまいました。

冒頭にも述べたように暗い雰囲気が漂う作品ですが、その中でも女の子同士の友情だったり、憧れの人と仲良くなっていくときの高揚感だったり、青春の甘酸っぱさも散りばめられていて、ラストも決して絶望では終わらない、そんなところに蛍の優しい光のようなものを感じます。みんながみんな幸せになるわけではないけれど、これも一つのハッピーエンドの形なんじゃないか、そう思える作品でした。

木爾先生の描く少女たちの残酷で美しい青春の世界、みんなで見に行きましょう。


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