Machine Vision入門

Machine Visionとは

Machine VisionはComputer Visionよりも少し広い概念です。
ヒトがモノを見るのに必要な要素を挙げると大きく4つに分類できます。

1. 光
2. 物体
3. 眼
4. 脳

Computer Visionではほとんどの場合、この4つのうちソフト側、つまり脳を代替する機械処理を検討します。勿論眼も代替するのですが、基本的には『人と同じようにモノを見るカメラ』を利用します。

Machine Visionでは『検出したいモノとその他のモノの差が最大になるように光と眼(光学系)を設計』します。要するに「目当てのものが検出しやすければ人と全然違う見え方をしててもかまわない」ということです。

実際に具体例を見ていきましょう。

アウトラインを検出する『透過照明』

 バックライトとも言います。透過照明で撮影すると透過しないものはなんでも「黒」、照明は「白」で写るので、物体の色に関わらずアウトラインを検出しやすくなります。

画像1


株式会社イノテックのHPより)


光沢を消す『同軸落射照明』

光沢がある物体の色検出や傷の検出は通常、非常に厄介ですがライトを同軸落射照明を利用することで

画像2


株式会社イノテックのHPより)

励起光を検出する『紫外線』

 光の波長自体を制御する場合もあります。例えば紫外線(ブラックライトとも呼ばれます)。人間の目の感度は380nm-780nmですが、ブラックライトは380nm以下の波長の光を強く出します。蛍光塗料とか蛍光増白剤と呼ばれるものは人間の見えないところの光を吸収し、倍の波長、つまり人間が目で感じられる波長にして返す機能があるため、照射している光以上の明るさ、鮮やかさに感じます。マシンビジョンのセンサも人間とほぼ同等の分光感度を持つため、同等の絵が撮れます。

画像3

株式会社テールナビのHPより)

『赤外線』

 赤外線もよく使われます。先ほど『人間の目とマシンビジョンのセンサの分光感度はほぼ同じ』と書きましたが、実は赤外線(可視光に近い近赤外分野)部分では微妙に異なっており、赤外線部分ではセンサは若干感度を持ちます(なのでリモコンの赤外線LEDのライトが映ったりする)。

 エンタメ業界だと透明の赤外線吸収インクが有名ですが、印刷業界だと黒で隠すタイプのデータ埋め込み技術がよく使われています。何故かというと通常のインクジェットプリンタでできるから。CMYを混ぜて作る黒は赤外線反射するんですが、黒のインクは赤外線を吸収します。なので『赤外線を反射する黒(CMYのベタ塗り)』と『赤外線を反射しない黒』を使ってデータ埋め込みができるんですね。

画像4

(http://www.ziljak.hrより)

歪みの発生しない『テレセントリックレンズ』

 凹凸のある物体の正確な検査、計測に利用されるのがテレセントリックレンズです。普通のレンズは全てPerspectiveですが、テレセントリックレンズはOrthgraphicです。なので画像から実寸が測れます。実際に出土した土器とかの記録用写真はテレセントリックレンズが使われるとかなんとか。

 テレセントリックレンズのもうひとつの特徴は凹凸が像を隠さないということ。ネジや針山を撮影した場合に影が発生しません。

画像5

株式会社モリテックスのHPより)

 欠点としてはレンズ径=撮影可能範囲になるため、ワーク(被写体によっては)画像合成が必要になるところでしょうか・・・でもまぁ画像合成自体もテレセントリックだと結構楽につながります。

偏光フィルタ

 偏光フィルタももちろん使います。詳細は『ググってくれ』ですがまぁ要するに人間には感じられない光の特性として偏光というものがある、ということです(海老とかは感じられるらしい)。液晶ディスプレイに入っているのでメディアアート系では液晶ディスプレイとセットで使われている事例をよくみますね。

 マシンビジョン業界では透明なプラスチック整形物の歪み検査によく使われます。

画像6

新東科学株式会社のHPより)

 あと、リアルタイムの歪み検査も可能だったり。

画像7

画像8

新東科学株式会社のHPより)

 また、美しい顕微鏡写真も偏光顕微鏡などで撮影されている場合が多いですね。

画像9

日本自然科学写真協会のHPより)

ダイクロイックミラー

 ダイクロイックミラーは特定波長を反射する鏡です。業務用のビデオカメラとかで使われてます。あまり使わないですが、センサのノイズが気になってセンサを3つ使ってでもSN比をあげたい場合などに使います。

画像10

光伸光学工業株式会社のHPより)

分光イメージ

 人間は380nm-780nmの範囲の光を3つに分けて感じる仕組みを持ってますが、実際はもっと細かい波長で成り立っています。そこを3chとか赤外紫外とかだけじゃなくもっと細かくみていこうよ、というのが分光イメージングです。ハイパースペクトラルイメージングとかすごい格好良い名前でも呼ばれてます。自動検査というより分析的な用途が強い感じ。

 フィルタをくるくる回転させる方式のやつもありますが、液晶チューナブルフィルタという液晶を使って選択的に波長を透過できる仕組みを使ってデータを取り込むか、光源側で波長コントロールを可能にして撮影する2パターンが有力です。

 特定の化学物質が混ざってると微弱な特定波長を発する、とかそういうのの検出ですね。あと美術絵画の材料特定とか。内視鏡検査にも使われています。

画像11

SPIEのHPより)

画像12

画像13

画像14

BLIPORTBLIPORTALのHPより)

いいなと思ったら応援しよう!