『テクノロジー』と『技術』の違い
『テクノロジー』と『技術』という2つの言葉は(当たり前だけども)訳語の関係だ。和英辞典で技術を引くとテクノロジー(Technology)が出てくるし、テクノロジーを英和辞典で引くと技術と出てくる。
しかし私はテクノロジーと技術という2つの言葉を両方とも仕事の中で利用しており、その2つを明確に使い分けている(ということに最近気が付いた)。他の技術者も同様の感覚をお持ちの方は多いのではないかと思う。この2つの差異を少し言語化してみたい。
魚をうまく捌く
例えば技術という言葉をよく使うシチュエーションを考えてみる。私の場合、ぱっと思いついたのが寿司やの板前さんだった(何故かは知らない、寿司が食いたいのかもしれない)。
彼らは魚をうまく捌く技術を持っている。
これは非常に一般的な言い回しだろう。翻訳文みたいな言い回しだがニュアンスとしては日常会話でも使うものだろう。ここで技術をテクノロジーという言葉で置換してみる。
彼らは魚をうまく捌くテクノロジーを持っている。
どうだろう。技術の場合と同じモノを想像するだろうか。
私の場合は、ロボットアームのようなものが次々と良い感じに魚を裁いており、それを彼(板前)が見守っているような図を想像してしまう。他の方も似たり寄ったりではないだろうか。
上の想像は非常にチープで恐縮だが、この例で判ることがある。技術だと『魚をうまく捌く方法』は彼(人)に付随しているが、テクノロジーだと『魚をうまく捌く方法』は彼(人)に付随していない、というメージしてしまう、ということだ。
テクノロジーという言葉で語ると『目的(この場合は魚をうまく捌く)』を実行する外部のシステムを想像し、ヒトはそのマネジメントをしているようなイメージを持つのである。
では、外部にシステムがある場合は全てテクノロジーであって技術ではないのか。例外もある。それは外部のシステム自体を人が作っている、という視点で語る場合は技術という言葉を使う。例えばこんな場合だ。
彼はロボットアームを使って魚をうまく捌くテクノロジーを開発した。
彼はロボットアームを使って魚をうまく捌く技術を開発した。
この場合はどちらも許容できる(個人的には後者を使うが)。技術とテクノロジーの指し示すイメージが一致している。
そしてこの一連の流れで判ることがある。技術という言葉はそれについて判る人(実行できる人)が明確だ、ということだ。少なくとも明確には誰か判らなくとも判る人が居る、ということが明確である。一方、テクノロジーという言葉は所有者、というか判っている人が不明確だ。曖昧である。もっというとテクノロジーはそもそも何を指示しているのか曖昧である。
テクノロジーという単位は対象も利用者も曖昧なぼやっとしたもので、具体的な、テクノロジーを構成する技術として分割して明確化し、製作可能にするのが技術者の仕事の大きな部分を占めているように思う。
技術は何と訳すべきか?
テクノロジー=Technologyだとすると、技術はTechnologyというよりかはTechnicとかSkillのような『手に職』のような言葉のほうが近い気がする。
みなさんはどう思われるだろうか。