何故TouchDesignerを推すのか

 人に『TouchDesignerを推してる理由はなんですか?』と聞かれることが多いのだが、noteにはまだその理由を書いてなかったので書く。

 TouchDesignerはderivative社が開発・販売しているVisual Thinking Toolだ。アプリケーションやコンテンツの総合開発環境である。業界用語ではオーサリングツールという。

 自分がTouchDesignerをおススメしているのは最も多くの人を巻き込むことができる環境を持ってるから、である。

 この手のオーサリングツールはこの業界の中でもいくつもある。

 多くの人はまずはUnityを挙げるだろう。ゲーム業界でもインスタレーション業界でもシェアをバリバリ伸ばしている。アセットストアの熱狂ぶりは素晴らしい。

 Unreal Engineは逆にゲーム業界から映画業界などにシェアを伸ばしている。フォトリアルな表現はダントツだ。

 本格的なノードベースのビジュアルプログラミングといえばvvvvも選択肢に入るだろう。

 音もやりたい、となったら矢張りMaxは強い。一番古いツールということでコミュニティもデカい。Runtimeがあってアプリ書き出しがあるのも実は便利だ。

 Maxの開発者が立ち上げたフリーソフトのPureDataは大学での利用例をよく聞く。無料なのも心強い。

 パワフルなC++でバリバリ記述できるopenFrameworksも良い。アドオンの増加は一時期ほどではなくなったが、OpenCVとの相性は素晴らしい。

他にもCinderとかNotchとかSmodeとか良さげなツールは沢山ある。

何故TouchDesignerなのか。多くの人を巻き込む環境として、3つのポイントがある。

1. まずは見た目

 まずは開発画面の見た目で言うとTouchDesignerはダントツでイケている(タイムラインと3Dビューはイケてないが・・・)。

 ここでいう見た目とはプログラミングをする画面のことだ。これがテキストベースだと一気にエンジニアしか付いて来れなくなる。なのでノードタイプが望ましい。なのでUnityとopenFrameworksはここで脱落する。窓付きのノードを扱うのはTouchDesignerだけなのでここで単独トップに躍り出ている。次点はUnreal、次がvvvv,、Max、PureDataが団子状態、という認識だ。

 非エンジニアが見てもプログラミング内で何をしているのかが見える化してるのは非常に頼もしい。

2. 環境構築の容易さ・保持のしやすさ

 これもTouchDesignerはかなり上位だ。勿論どの開発環境もインストール自体はインストーラがあってかなり簡単になっている。が、実はどこでもいつでも、というわけではなかったりする。つまり評価版に評価期限がついてたりするとしんどくなってしまう。これでいうとMaxがそれに相当する。

 また、理想としてはMac/Win両方で動いて欲しい(差があるのはしょうがないが・・・)。となるとvvvvとかは厳しくなる。PureDataやopenFrameworksはRaspberri Piでも動いたりするのである種TouchDesignerよりも上かもしれない。が、openFrameworksはMacOSのアップデートの度にSDKを消されてビルドできなくなったりするので環境の維持にコストがかかりがちだ。

3. 勿論機能も

 機能も勿論重要である。2Dグラフィック、3Dグラフィック、沢山のセンサの取り扱い、そして最悪の手段としてプログラムが書けること。このあたりでもTouchDesignerは優等生だ。ただ、この分野についていうとなかなか難しい。デザイナーの求めるコンポーネントの粒度とエンジニアの求めるコンポーネントの粒度が全然違うからだ。正直、TouchDesignerはもう少しデザイナーフレンドリーになっても良い気がする。Unreal Engineとかはそのあたりがうまい。

 といってもUnityもUnreal Engineも基本はオーサリングツールであり、3Dも2Dも基本別のソフトで作って、それをUnityやUnreal Engine上インポートしてレイアウトや演出をつける、というのが基本のワークフローだ。CGを1からUnity上で作るのはレアだろう。

上記について総合でランク付けするとTouchDesignerは1位になった。なので推している。

そもそもなんで人が多く関われる環境が良いのか

 今居る会社では基本絵はデザイナやアーティストが作り、システムはエンジニアが作る、というのが基本だった。つまり複数人、エンジニアと非エンジニアで制作をしていたわけだ。

 ただこのチームの問題は負荷がどちらかに偏りがちなことだった。例えばすごく凝った演出をしたくて、エンジニアにそれ用の演出システムを組んでもらうとする。しかしこの時にエンジニアはデザイナの動画から演出を読み取る必要がある。また、読み取った後もその演出の調整用パラメータをGUIに出して、デザイナに調整してもらうためのプログラミングを結構しなければならない。結構無駄なコストがかかっているのだ。

 また、この逆もある。アニメーションを途中で分岐させることに急になったりすると、アニメーションの書き出し直しはCGアーティストの仕事になる。エンジニアは逆にデザイナからファイルが上がってくるまで待つことしかできない。CG系のDCCツールは高いので、エンジニアの手元にないことも多いだろう(最近Blenderの勢いが凄いので、このあたりは変わってくるかもしれない)。

 これがTouchDesignerだとお互いが編集可能な状態で見ることができる。お互いがお互いのためにインターフェースを作る必要もないし、特定のファイルフォーマットに書き出す必要もない場合も結構出てくる。お互いの擦り合わせのコストが下がるのだ。

 また、これが発展していくとお互いがお互いの領域を侵犯していくことが可能になる。実際今居る会社のパターンではCGアーティストがJSONファイルをいじったり、エンジニアが積極的にグラフィックをいじったりするようになっていったプロジェクトがあった。そう、TouchDesignerのユーザはエンジニアともデザイナとも言えない、両方のスキルを持った人が海外には非常に多い。こういうダブルスキルというか越境というか、特殊な人材を育てやすいツールだと思う。

最後に

 というわけでしばらくまだTouchDesignerを推していきます。興味がある方は是非ダウンロードしてみてください。無料のノンコマーシャル版でかなりの部分が触れます。

一度春休みとかの暇なときにチュートリアルをいくつかやって、半年後ぐらいに「あ、仕事で使えそう」というシーンが来てもちゃんとノンコマーシャル版は使えます。で、使えることが判ったらライセンスを買ってあげましょう。

 初心者はこのリストから好みのやつを開いてやってみるのが良いかと。

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