音楽にまつわる忘れられないことば
来る5月18日のShinoさんが運営する「#ことばの日」の企画のひとつである「#忘れられないことば」に今回は参加しようと思います。
忘れられないことばをふりかえったときに、まっさきに思いついたのはだいたい音楽にまつわることでした。
というわけで、音楽にまつわる忘れられないことばを3つほど紹介したいと思います。
● 天才じゃなくて凡才なんだから練習しろよ
中学2〜3年で吹奏楽部でドラムを担当していた。
もともとピアノを習っていたことや「太鼓の達人」のゲームなどでリズム感を養っていたこともあり、ドラムに慣れるまでもそこまで時間がかからなかった。
地味な基礎練習もサボりつつやっていたのだが、やがて自分のなかに
「もっとかっこいいフレーズやりてえ」
という中学生らしい欲求がむくむくと湧き上がってきた。
そのときハマっていたアーティストのプレイを見よう見まねでやってみたりすることで、
「自分、けっこううまいんじゃないか…? 才能あるかも」
とまで思うようになった。
もう完全に天狗だ。
そんな鼻がのびきった状態で、ある日、演奏を合わせていた時に吹奏楽部の顧問の先生に言われたことばがある。
鼻がへし折られた。
ぼ、ぼ、凡才かあ〜と思った。
才能を否定されることはつらいものだ。
でも、顧問の先生は自分が
「コイツ調子にのってんな」
ということを演奏から察していたのだと思う。
このことばを聞いた日の帰り道は
「くそ〜 おれは凡才なのか〜泣」
と人生で一番しょんぼりしたが、いま思えば調子に乗りすぎないための愛のあることばだったと思っている。
中学生の自分に「凡才だからできることもあるのよ」と伝えたい。
● おまえ音楽辞めた方がいいよ
芸術系の学生があつまるサマーワークショップでアメリカ〜メキシコに3週間ほど行っていたときのことだ。
このワークショップでは、音楽・建築・絵画・哲学などを学ぶ学生たちが10人ほど集まって、アメリカのLAのウォルト・ディズニー・コンサートホールやメキシコのテオティワカン遺跡などをめぐりつつ、
「なにを感じたか」
「なにを自分は考えたか」
といった対話を繰り返していた。
ワークショップの主催者である画家の先生は、時に厳しく時にユーモアにあふれたなかなかおもしろい人だった。
ワークショップの終盤、
「自分たちは日本の文化をいかに後世に継承できるのか?」
のようなテーマで議論していた時のことだった。
テーマが壮大なこともあり、音楽の側面で文化をいかに後世に継承していくかについて生半可ながら自分なりの考えを話した。
そのときに画家の先生はこういうことばを発した。
最初いわれたとき「は?」と思った。
ただ、少し時間がたった後、たぶん生半可のことを言ったことを叱っていたのだと思うことにした。
たしかに、相当な覚悟がないと日本の文化を後世に継承することはできないと思う。そのような覚悟が持ちきれていない状態での自分の意見に対して「そんなんじゃだめだ」と言ってくれたと解釈している。
ただ、このことばで自分のなかに気づきが1つ生まれた。
それは「自分は音楽を辞めない」ということ。
熱中していることを「文化が衰退するから辞めろよ」と言われることってあまりないと思う。
こんなこと友達とかに言ったら一瞬で絶交だろうし、殴られてもおかしくない。
だけど、自分は逆にこのことばを言われたことでなぜか燃えてしまった。
こんなことばを言われて本当に辞めてたらダサい。音楽はつづけようと。
このことばのおかげで、いまも音楽を続けられているといっても過言ではない。
ひどい言われようなことばのように思えるけれど、自分を生かし続けていることばでもあるので、いまも忘れられないことばの1つだ。
● あんたは絶対に音楽をやると思ってた
上の2つがなかなかメンタルにくることばだったので、最後はポジティブなことばを紹介しようと思う。
自分は小学生のとき、一時期ピアノを辞めてしまったことがある。
理由は、先生がこわいから。
先生がこわいと、怒られないような所作をしてしまってピアノがたのしくなくなるのよね。
しばらくピアノも弾かなくなって、テレビゲームばかりしていた。
家にCASIOの電子ピアノがあったけど、たびたび母に
「もうピアノ弾かないから捨てていいよ」
と言っていた記憶がある。なんて自分勝手な子だ。
でも母はピアノを決して捨てなかった。
結局、小学6年生のときに
「そうか、ゲーム音楽をピアノで弾いたらおもしろいかも」
と気づき、ふたたびピアノの椅子に座ることになった。
そこから、クラシック音楽にもハマり、パンクやメタルにもハマっていく音楽キッズになっていった。
そこで、ある日母に「なぜピアノを捨てなかったのか?」と聞いてみたら、こんなことばが返ってきた。
先見の明がすごすぎるぜ、母ちゃん。
ちゃんとバンドもやってるし、いまでは作曲もしている。
この「信じていた」ということばが、非常にうれしかったおぼえがある。
もしあの時ピアノを捨てていたら、いまの自分はどういう人生を歩んでいたのだろう。
いろんな人生のパラレルワールドがあるから、きっとそれなりに幸せに過ごしているかもしれないけど、それでも音楽に携わっているいまの人生で本当によかったと思っている。
「あなたは絶対に音楽をやるとおもっていた」
ということばがあったから、よけいに音楽を辞められない。
忘れられないことばだし、忘れちゃいけないことばだ。
以上、忘れられないことばを3つ紹介しました。
ここまで読んでくれてありがとう〜
Toyosea
写真提供:だいすけ